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【2022年五美大展】東京五美術大学卒業・修了制作展(展示作品39選もご紹介)

五つの大学の美術系学科による卒業・修了制作展を一堂に鑑賞できるとしたら、お得だなと感じませんか?そんなイベントが国立新美術館で毎年催されているんです!

今回は六本木(乃木坂)にある「国立新美術館」にて開催した「令和3年度 第45回 東京五美術大学 連合卒業・修了制作展」の模様をご紹介します。

また、本記事は2ページに分けています。女子美術大学・東京造形大学・日本大学藝術学部の展示模様を見たい方は2ページ目をご覧ください。

2ページ目から見る方はこちらから

要点だけ知りたい人へ

まずは要点をピックアップ。

  • 五美大展(ゴビダイテン)とは、東京の五美術大学(武蔵野美術大学・多摩美術大学・女子美術大学・東京造形大学・日本大学藝術学部)の美術系学科による卒業・修了制作展のこと。
  • 毎年2月下旬〜3月初旬あたりに国立新美術館で開催されている。
  • 五美大展とは別に、各大学で卒業・修了制作展も開催している。
  • 展示数のボリュームがあり、じっくり観るなら約3時間必要(休憩なし)
  • 今回は展示作品の中から39点の作品をご紹介しています!

五美大展とは?

五美大展(ゴビダイテン)とは、「東京五美術大学 連合卒業・修了制作展」のことで、東京の五美術大学(武蔵野美術大学・多摩美術大学・女子美術大学・東京造形大学・日本大学藝術学部)の美術系学科による卒業・修了制作展です。

東京五美術大学は教育効果と学生の制作意欲の向上を目的として始められ、今回が第45回目となる毎年恒例イベントです。

展示学科は日本画・油絵・版画・彫刻

五美大展では「日本画・油絵・版画・彫刻」の学科学生が作品展示をしています。例えば、デザイン系の学科は含まれていないので、特定の学科の作品が観たい場合は注意が必要です。

また、国立新美術館はレギュレーション(展示条件のこと)が厳しく、制作にあたって制約がいくつかあるようです。そのため、「気になった大学や学生の集大成が観たい!」という場合には、各大学で開催されている卒展にも足を運んでみるのがおすすめです。

じっくり観て約3時間のボリューム(休憩なし)

五美大というほどなので、その展示数は相当な量となっています。会場である国立新美術館を2階分大規模に使っているにも関わらず展示作品同士の間隔は狭くなっていて、それほど情報量が多い展示になっています。

特定の大学だけを観るだけならそこまで時間を要しませんが、全て観る予定でいくなら、

・歩みをほぼ止めずにいくなら約30分程度
・全てじっくりと観て巡るなら約半日

は必要となる想定で鑑賞することをおすすめします。

私自身は途中写真撮影もさせていただきながら鑑賞して、約3時間で鑑賞できました。途中休憩はしなかったので、休憩も挟んだとしたら30分〜1時間はプラスで必要になると思います。

五美大別で卒業・修了制作を鑑賞

展示構成はおおよそ大学別となっていますが、展示スペースによっては合同で展示している場所もありました。今回は大学別に作品をピックアップしてご紹介します。

わかる範囲で作者のSNSも掲載しているので、「これ、いいなぁ。気になる作品だな。」というものがあればぜひ、SNSもチェックしてみてくださいね!

武蔵野美術大学

寺野葉《まつ》

《まつ》
寺野葉(大学院造形研究科 美術専攻 日本画コース)、高知麻紙,岩絵具,水干絵具

まずスマホを持った赤い服の女性に視線がいき、その後に松の巨木へ誘導されます。

松の巨木には生活風景、地図アプリ、動物、日本画の岩などが混在していて、それらを支える松の剛健さを感じます。

また、日本画でみられるモチーフ(松、岩)の線は太く、シンプルである一方で、生活風景は細かく、情報量の増加した現代も感じる作品です。

Instagram:@yo.yo.leaf.1997

キン シセイ《今日の歌》

《今日の歌》
JIN SIQI(キン シセイ)(大学院造形研究科 美術専攻 日本画コース)、スクリーンシルク,油絵具

写真だと分かりにくいですが、半透明の素材に描かれた作品で、キャプションを見るとスクリーンシルクに描かれています。

その透明感から噴き出される水のように見えてきます。

萩原正貴《イ之街》

《イ之街》
萩原正貴(大学院造形研究科 美術専攻 日本画コース)、雲肌麻紙,顔料(水干・新岩・天然),銀箔

重力がどちらの方向に働いているのか判然としない作品。かまぼこ状の突起の間には室外機やブラウン管テレビ、アンテナなどが置かれています。

そこを徘徊するようにアメーバのような生命体が浮遊していて、生命体が入ってこないようにベランダを塞いでいるようにも見えました。

柏木花里《まるまるまわる》

《まるまるまわる》
柏木花里(造形学部 日本画学科)、高知麻紙,岩絵具

中央にまんまるとなって寝ている茶トラ猫の周りに、世界の服(?)を着た猫が描かれている作品。とにかく可愛らしかったです。

個人的には小脇に牛乳パックを抱え平和そうな笑顔をしている猫がお気に入りでした。

Instagram:@karin_nekosama

森川琴美《香の調べ》

《香の調べ》
森川琴美(造形学部 日本画学科)、ベニヤ,岩絵具,水干絵具,盛上胡粉,箔,金泥

童話の世界に入り込んだような、賑やかな景色が広がっている作品。所々に妖精が座っています。

ただ、主人公である右手前で寝ている女性は妖精の存在には気づかず、それらが動くことで届けられる香りを感じて曖昧に存在を認識しているのかなと、そんなストーリーを想像していました。

Instagram:@koto__mo

高橋里歩《still》

《still》
高橋里歩(造形学部 日本画学科)、麻紙,岩絵具,水干絵具,墨

パン屋さんの中にカフェも併設された場所の、カウンターからみた景色のようです。全体のトーンが青くなると、サイフォン用のフラスコがどうしてか実験室のようにも見えてしまいます。

たとえ今日が暗い一日だったとしてもこのお店に来れば、フランスパンと一杯のコーヒーを手に窓際の席について心の充電ができる、という導線が暖色を通して観えてきます。

土屋悠《彩雲飛 sai-un hi》

《彩雲飛 sai-un hi》
土屋悠(造形学部 日本画学科)、天然木,天然石,粘土,砂

雲が鳥獣に姿を変えているように見える作品。その種類はさまざまで、ワシやゴリラ、クジラ、タコなどなど多様でした。

部分は精巧な一方で、全体は無限のマーク(∞)のような形で流れるように制作されているのが印象的でした。

久保田理世《八幡坂》

《八幡坂》
久保田理世(造形学部 日本画学科)、雲肌麻紙,水干絵具,墨,岩絵具

ちょうど中心を境に道路と海が描き分けられていて、地の道と海の道が対照的に描かれていて良い景色に感じた作品。

こういう街で春休みを過ごしてみたいなと想像しながら鑑賞していました。

Instagram:@j_lishi

内田万理《日野宿本陣》

《日野宿本陣》
内田万理(造形学部 日本画学科)、高知麻紙,岩絵具,水干絵具,箔

ポップな門だなと思いながら鑑賞していた作品。昔の風景は想像しているよりも豪勢だったかもしれず、固定概念で塗り固められたものなのかもしれないと言っているようでした。

ちなみに描かれている日野宿本陣とは東京都日野市にある史跡で、新撰組が激しい稽古に励んだ場所といわれています。

本岡景太《りんごとガス燈》

《りんごとガス燈》
本岡景太(造形学部 彫刻学科)、紙(歪曲張り子)

堅い造形物や果物を紙という軽い素材でぐにゃぐにゃに制作している作品。軽やかさがあって可愛らしい見た目になっていて印象的でした。

歪曲張り子という特殊な方法で制作していて、新しい彫刻作品の形だなと感じました。
Instagram:@motonini3768

フィリッパロック《A little too square》・《There are days I see everything at once》

(左)《A little too square》
アクリル,キャンバス
(右)《There are days I see everything at once》
アクリル,麻
フィリッパロック(大学院造形研究科 美術専攻 油絵コース)

色合いが良いなと感じた二つの作品です。それぞれタイトルを直訳すると「ちょっと四角すぎ」、「一度にすべてを見ることができる日がある」になります。

特に青い作品のグラデーションが深海と波に見えてきて、そことタイトルがどうリンクしていくかなと想像しながら鑑賞していました。

Instagram:@roque_filipa

ハザマ・シュン《「 」》

《「 」》
ハザマ・シュン(造形学部 油絵学科 油絵専攻)、マーカー

横に長い作品で、歩行者天国のように人が縦横無尽に歩いている風景が広がっています。その中で一部ビニールに包まれている人もいます。

この作品を観て、隔離という二文字が思い浮かびました。

青木和歌那《ノワールの輝き》

《ノワールの輝き》
青木和歌那(造形学部 油絵学科 油絵専攻)、油彩,キャンバス

青緑の色彩が美しいなと感じた作品。雨が降っているのか、路面がライトに照らされて輝いています。

タイトルのノワールとはフランス語で”黒”という意味を持っていて、ちょっとダークな一面を描いているのかもしれません。

福島啓吾《蟹貌》

《蟹貌》
福島啓吾(大学院造形研究科 美術専攻 油絵コース)、油彩,アクリル絵具,パネル,綿布

とにかくリアルなカニ!な作品。暗めのトーンで描かれていて、かつ上に乗ったカニは勝負に敗れてか片腕を失っているところから、野生の厳しさを感じました。

それにしても、毛の一本一本まで描き上げ、目の輝きもキラキラしていて、ここまで描くのは被写体への愛情というか、好きだからこその作品なのかなとも思いました。

それと他の展示作品にもありましたが、少々作品に傷があったのが可哀想でした。通路に対しての人数もあるとはいえ、鑑賞者も作品は我が子のように扱うべきだよなと改めて感じたのでした。

twitter:@fksmk5

飯沼美歩《祝祭_Ⅱ》

《祝祭_Ⅱ》
飯沼美歩(造形学部 油絵学科 油絵専攻)、油彩,キャンバス

遠くから観るとお祝いの席の風景であることがわかる作品。テーブル中央にはホールケーキ(?)も置かれているようです。

油彩の放つ立体感が印象的な作品でした。

twitter:@karin_nekosama

 

武蔵野美術大学の卒業制作展についてはこちらもご覧ください。

多摩美術大学

飯島伶圭《2人でひとつ》

《2人でひとつ》
飯島伶圭(美術学部 彫刻学科)、エポキシ樹脂,FRP、80 × 200 × 50cm

体育座りをした二人の彫刻作品。片方は白と黒の人らしい姿で、もう片方は透明な身体の中に梅干しをこさえていました。

二人でひとつにすると、おにぎりになりそう(そういえば体育座りの脚がおにぎりに見えなくもない)な作品でした。

Instagram:@kome__6

鈴木しなの《必至の間隔》

《必至の間隔》
鈴木しなの(美術学部 彫刻学科)、木,陶、135 × 168 × 20cm

洗濯板のようにギザギザとした木の中に、メロンみたいな球が埋め込まれている作品。

写真で見ると小さく見えますが実物は大きいため、シンプルな配置がむしろ目立っていて自然と視線を向けていました。

sota suzuki《139.72646653207784° 35.665113849127884°》

《139.72646653207784° 35.665113849127884°》
sota suzuki(美術学部 絵画学科 油画専攻 中村一美・千葉正也クラス)

空調で紙がクルクルと回転している作品。作品を観ただけでは理解が進まない作品とは、まさにこういう作品のことではないかなと思います。

作品名は緯度・経度を表していて、実際に検索すると国立新美術館を指します。

この地は昔兵舎があったそうで、戦後は一旦在日米軍に接収され、その後は東京大学の生産技術研究所として修繕を加えて利用され解体された後、現在の美術館が建設されます。回る紙には、兵舎のほぼ現在地に建っていたとみられる部分の壁内を調査した際の資料が印刷されているそうです。

日常を過ごす土地への関心の薄れへの問いを立てているように感じる作品でした。

作品の詳細なステートメントを知りたい方はこちらも参考にしてみてください。

Instagram:@sota.s

永津美菜子《彼らは触れ合った(かもしれない)》

《彼らは触れ合った(かもしれない)》
永津美菜子(美術学部 絵画学科 油画専攻 小泉俊己・日高理恵子クラス)、キャンバス,油彩

一見漠然としたイメージですが、よく見ると机とそこに置かれたグラス、タイルの壁が見えてきます。飲食店でのワンシーンなのかなと想像できます。

その手元で何が起きているのかまでは分かりませんが、その単純な触れ合いもコロナ禍を前提に考えると大切なコミュニケーションだったんだなと再確認できました。

Instagram:@minako_24n

佐野弘明《「キャー、アベノマスクよ!」と逃げ惑う子供たち(ヒッチコックの「鳥」のパロディ)》

《「キャー、アベノマスクよ!」と逃げ惑う子供たち(ヒッチコックの「鳥」のパロディ)》
佐野弘明(美術学部 絵画学科 日本画専攻)、油絵具,キャンバス

アルフレッド・ヒッチコック監督による名作「鳥」という映画のパロディ作品。

映画のように身近なものが脅威に変わるところを描いていて、風刺的な要素が強い作品でした。確かに現在の世界線に突然来たタイムスリッパーがいたとしたら、こんな見え方になるのかもと思ったりしていました。

本城葵《またここで声がする。》

《またここで声がする。》
本城葵(美術研究科 博士前期課程 絵画専攻 日本画研究領域)、岩絵具,水干絵具,和紙

日が昇る景色を描き出しているように感じた作品。

道の木の葉が枯れているところから、冬の澄んだ空気の中日差しを浴びているのかなと思いつつ、そんな場所で声が聞こえるのは、朝を呼ぶ鳥の囀り(奥の木の先に観える影が鳥に見えたため)なのかなと想像していました。

つい最近観たヴィルヘルム・サスナルさんの作品の構図とも重なりつつ、この雰囲気、景色良いなと感じながら鑑賞していました。

Instagram:@aoihonjo

平井奈々子《瞬間と愛》

《瞬間と愛》
平井奈々子(美術学部 絵画学科 日本画専攻)、岩絵具,水干絵具,色鉛筆,雲肌麻紙,透明水彩

静と動の瞬間をコマ撮りしたような作品。右から左に動いているようにも、左から右に動いているようにもみえます。

また、それぞれの瞬間に見せる表情の違いから、愛しいことに取り組む時の表情も切り取っているようでした。

Instagram:@hri_k

 

多摩美術大学の卒業制作展についてはこちらもご覧ください。

次のページでは女子美術大学・東京造形大学・日本大学藝術学部の展示模様をご紹介します。

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ABOUT ME
よしてる
東京でアート巡りををしながら「アートの割り切れない楽しさ」を探究している理系男子です。会社員をしながら、週末アートウォッチをしています。 2021年から無理のない範囲でアート作品の購入も始めました。 好きな動物はうずら。

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