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タグチアートコレクション「SMBC meets Contemporary Art」|コレクターの「観る」を体感する

こんにちは!よしてる(@uzuraism)です。

今回は丸の内にある「三井住友銀行東館」にて開催したミスミグループ創業者の田口弘さんが収集したアートコレクション展「SMBC meets Contemporary Art ~Come take a look!」の模様をご紹介します。

要点だけ知りたい人へ

まずは要点をピックアップ。

  • 「SMBC meets Contemporary Art ~Come take a look!」とはミスミグループ創業者の田口弘さんが収集したアートコレクション展で、今回は18点のコレクションを展示。(作品の紹介は後述)
  • 展覧会はSMBCグループが掲げる「Five Values」のひとつである“PROACTIVE & INNOVATIVE(先進性と独創性)”の精神に繋がるものと考え、アートに触れる場と環境を広く提供することを通じて創造性、先進性を刺激していくことが目的
  • 田口さんのコレクションの契機は1980年代末、街角にかかっていたキース・へリングさんの版画を見て「何だこれは!」と驚き、「会社にかけて皆に見てもらいたい」「そのイノベーションの感覚を感じ取ってもらいたい」という想いから始まった。

端的に展示作品を知りたい方はこちらの動画をご覧ください。

ブログでは動画にまとめた作品を含む、合計6作品をご紹介していきます!

「SMBC meets Contemporary Art ~Come take a look!」とは?

「SMBC meets Contemporary Art ~Come take a look!」とは、ミスミグループ創業者の田口弘さんが収集したアートコレクション展です。

世界各地から収集した現代アート作品およそ550点(2020年12月現在)の中から、18点のコレクションを展示しています。

また、今回の展覧会のキーワードは「国際性」「信頼」「継続性」「チャレンジ精神」の4つとされています。

  • 世界の動向を反映した作品を展示(国際性)
  • 一定の評価を受けた作家を展示(信頼)
  • 収集初期のコレクションの中には巨匠の作品も含まれ、時間をかけたコレクションの価値を示している(継続性)
  • 新進気鋭の若手作家の作品も含まれており、同時代の表現としての現代アートを実感できる(チャレンジ精神)

参考:SMBC meets Contemporary Art

アメリカン・ポップアートを中心とした「タグチアートコレクション」

田口さんはなぜアートコレクションを始めたのでしょうか。

田口さんのコレクションの契機は1980年代末、街角にかかっていたキース・へリングさんの版画を見て「何だこれは!」という驚きから始まったそうです。

その経験から、

「会社にかけて皆に見てもらいたい」
「そのイノベーションの感覚を感じ取ってもらいたい」

という想いから、作品は人に見てもらう前提でコレクションされていき、現在に至っています。

今回の展覧会も会社関係者はもちろん、一般の来場者まで幅広い層が名だたる作家のアート作品を自由に鑑賞できる場となっています。

タグチアートコレクションの作品6選

本展覧会で展示している18作品のうち、6作品を厳選して観ていきましょう。

キース・ヘリング《Untitled May 31》

タグチアートコレクションの始まりのきっかけとなったキース・ヘリングさんの作品は見逃せません。

キース・ヘリングさんってどんな人?

  • 1958年アメリカ出身
  • 1980年代のアメリカ美術を代表するアーティスト
  • 地下鉄の黒紙の貼られた広告板に白いチョークで絵を描く、通称「サブウェイ・ドローイング」と呼ばれるグラフィティアートで有名となる
  • シンプルな線で描かれたキャラクターと色彩が作品の象徴的なアイコンとなっている
  • 1988年にエイズ感染と診断され、その翌年に財団を設立、1990年31歳で亡くなるまで、アート活動を通してHIV・エイズ予防啓発運動にも貢献

《Untitled May 31》
キース・ヘリング、1989、アクリル / キャンバス、61.5 x 61.5 cm

愛の象徴であるハートと人を組み合わせたイメージはどこか陽気で楽しそうです。

この作品はヘリングさんがエイズと診断された翌年と、亡くなる一年前に描かれたそうです。

どんな人でもわかる単純なイメージには、人種や思想、病気などによる差別や暴力をなくし、もっとフラットに、皆が分かり合える世界になるようにという想いがあるように感じます。

確立された「信頼」とコレクションのきっかけとなり今も続く「継続性」に当てはまりそうだなと感じました。

宮島達男《Counter Falls》

宮島達男さんのLED(発光ダイオード)によるデジタルカウンター作品もありました。

宮島達男さんってどんな人?

  • 1957年東京出身
  • 1988年第43回ベネチア・ビエンナーレの若手作家部門「アペルト88」で国際的な注目を集めた
  • 「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」というコンセプトに基づいた、デジタルカウンターによる作品が特徴的
  • 「0(ゼロ)」のみ暗転するのは死を意味し、生と死が繰り返されることが表現されている
  • 時間という普遍的な概念を扱いつつも仏教的思想やテクノロジーという要素を融合させている

《Counter Falls》
宮島 達男、2018、LEDパネルディスプレイ,変圧器,コンピュータ,ビデオコントローラ,電線,鉄枠、450.0 x 50.0 x 22.5 cm

デジタルカウンターは青、ピンク、白と色を変えていき、それが日本の四季、つまりは「一年間の時間の流れ」をあらわしているようにも見えます。

そして、それぞれのデジタルカウンターは時に滝のように早く、時に雪のようにゆっくりと上から下へ流れていき、同じパターンは二度と現れないようです。

そうした特徴から、時間と生と死の視覚化を試みているように感じます。

国内外で活躍する「信頼」に当てはまりそうだなと感じました。

ハルーン・グン=サリ《Senzenina(われわれが何をしたのか)》

展示作品の中でも、比較的大きなインスタレーションです。

ハルーン・グン=サリさんってどんな人?

  • 1989年南アフリカのケープタウン出身
  • 現在南アフリカ、ケープタウンとヨハネスブルグを拠点に活動
  • アパルトヘイト後および植民地支配後の南アフリカを題材にした作品を制作
  • 過渡期にある南アフリカ共和国特有の出来事を芸術的介入やインスタレーションに変換している

《Senzenina(われわれが何をしたのか)》
ハルーン・グン=サリ、2018、彫刻インスタレーション,キャスト,サウンド ※展示の都合によりサウンドはなし

こちらの作品は、2012年8月16日に南アフリカ北西部マリカナにある英資本のロンミン鉱山で実際に起こった事件がもとになっています。

待遇改善を求めた1週間のストライキの後、平和的に解散しようとしていた鉱山労働者34人が、それを排除しようとした警察の発砲により射殺されてしまい、その惨劇の瞬間に座り込んでいた17人の姿を作品にしているそうです。

作品は鉱山で稼ぐための要となる手と、個人を特定するための顔がスッパリと切り落とされていて、歴史の悲惨さを物語っているようです。

植民地主義、人種差別、資本主義などが権力と結びつき、さまざまな支配の構造を生み出している現実を広く世界に発信している現代アートだと感じ、歴史的な物語を後世へ伝えています。

世界の動向を直接的に表現した「国際性」に当てはまりそうだなと感じました。

ヴィルヘルム・サスナル《Untitled》

映画のポスターで使われそうなワンシーンに見え他のが、ヴィルヘルム・サスナルさんの《Untitled》です。

ヴィルヘルム・サスナルさんってどんな人?

  • 1972年ポーランド、タルヌフ生まれ
  • 現在ポーランド、クラクフを拠点に活動
  • 映像作家でもある
  • 私たちを取り巻く環境や歴史を、不釣り合いで静かな不安感をもって描き出す作品で知られている
  • 絵画の題材は携帯で撮影した写真、インターネット、新聞、映画のスチル写真、見つけた写真の肖像画などから引用している

《Untitled》
ヴィルヘルム・サスナル、2018、油彩 / リネン、280.0 x 200.0 cm

中央にある黒い車は、作家自身の車なのだそうです。

余計な線を描かずに抽象化して描いた景色が特徴的で、作品から読み取れることは、車のドアが若干曇っていて、寒空の下にあることくらいでしょうか。

そして、緑の占める多さも印象的な心に残る作品です。

これからの作品も観たくなる「チャレンジ精神」に当てはまりそうだなと感じました。

オスカー・ムリーリョ《Night shift》

2021年にタカ・イシイギャラリーさんで観たオスカー・ムリーリョさんの作品も展示していました。

オスカー・ムリーリョさんってどんな人?

  • 1986年コロンビア、ラパイラ生まれ
  • 現在イギリス、ロンドンとラパイラを拠点に活動
  • 労働のイラリティやコミュニティのあり方を探求に関心をもち、文化交流の概念と、アイデア、言語、そして日用品でさえも置き換えて制作をしている

《Night shift》
オスカー・ムリーリョ、2013、油彩,オイルスティック,黒鉛,泥 / キャンバス、235.9 x 205.7 cm

荒々しく縫い合わされた作品は、見た目の良さというよりは日常生活の中にあるリアルをそのまま出しているように見えます。

こうした大型作品は床の上に置かれ、スタジオ内で移動する足跡、指紋、埃、泥、ゴミまでも意図的に蓄積されていくそうです。
右端についた紙切れも蓄積の中でつけられたものなのでしょう。

そういう意味では、生活の中で生まれる、掃除されてしまう跡を作品に残し、日常を記録しているような作品だなと感じます。

制作環境、国によって異なる生活の在り方自体を伝える「国際性」に当てはまりそうだなと感じました。

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アリシア・クワデ《Be-Hide (Semicircle)》

個人的にはシンプルな構造ながら、心に残った作品が、アリシア・クワデさんの《Be-Hide (Semicircle)》でした。

アリシア・クワデさんってどんな人?

  • 1979年ポーランド、カトヴィツェ出身
  • 現在ドイツ、ベルリンを拠点に活動
  • 日常生活における時間の認識について考察した作品を制作している

《Be-Hide (Semicircle)》
アリシア・クワデ、2020、鏡,石,塗装したブロンズ、110 x 105 x 209 cm

拾った天然石とそのレプリカを鏡で区切った、シンプルな構造の作品。

視点を移動させると隣り合った石が鏡を介して重なり合っているように見え、なんとも不思議な光景に変容します。

実像と虚像が重なるときに作品の存在感を一層感じるのは、角度によっていろんな見え方があって面白いと感じる部分と、その中に天然石の在り方・形の普遍的な部分を発見しているからかもしれません。

そんな道順を辿って、天然石そのものが発する力強さを感じているような感覚になる作品でした。

そんな作品から「チャレンジ精神」を感じていました。

まとめ

ミスミグループ創業者の田口弘さんが収集したアートコレクション展「SMBC meets Contemporary Art ~Come take a look!」を観ていきました。

タグチアートコレクションを観て、コレクターの現代アートを観る視点を疑似体験ができたようで、新しいものから刺激を受ける時間になりました

また、アートコレクションは時間をかけて、アーティストとともに築いていく中で価値が生まれていくものなのだろうなとも思いました。

今回の展覧会のキーワード「国際性」「信頼」「継続性」「チャレンジ精神」についても、アートに興味を持って、長期的に触れていくことで気づけることも多いように感じます。

その気づきがさらに良い感性を育み、良いコレクションにもつながっていくのかもしれません。

最後に、田口弘さんのインタビューから、現代アートを一般公開する想いにもつながるであろう言葉を引用させていただきます。

若い方、ビジネスに関わる方に伝えたいのは、まず現代アートを観てほしいということです。
ビジネスの世界では新事業開発が活発です。全く新しいものを創らないといけない時代。
この「全く新しいものを創る」という点では、ビジネスの世界よりも、現代アートの世界の方が、ずっと先をいっています。現代アートをみる経験は、これからやる仕事に、繋がっていくと思います。
MUUSEO SQUAREより引用

長年のコレクションを厳選し、鑑賞しやすい形で一般公開する、粋な展覧会でした。

展示会情報

展覧会名SMBC meets Contemporary Art ~Come take a look!
会場東京都千代田区丸の内1-3-2 三井住友銀行東館1F アース・ガーデン
会期2022年1月25日(火)~2月18日(金)
開廊時間月〜金: 9:00~18:00
土日祝:13:00〜18:00
サイトhttps://www.smfg.co.jp/company/art/0125.html
観覧料無料
作家情報キース・ヘリング(Keith Haring)さん|Instagram:@haring_archive
宮島達男さん|Instagram:@tatsuomiyajimastudio
ハルーン・グン=サリ(Haroon Gunn-Salie)さん|Instagram:@gunn_salie
ヴィルヘルム・サスナル(Wilhelm Sasnal)さん|Instagram:@wilhelm_sasnal
オスカー・ムリーリョ(Oscar Murillo)さん|Instagram:@lacachepli
アリシア・クワデ(Alicja Kwade)さん|Instagram:@alicjakwade

 

ABOUT ME
よしてる
東京でアート巡りををしながら「アートの割り切れない楽しさ」を探究している理系男子です。会社員をしながら、週末アートウォッチをしています。 2021年から無理のない範囲でアート作品の購入も始めました。 好きな動物はうずら。

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