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オスカー・ムリーリョ 「geopolitics (manifestations)」|愛情と豊かさがある幸せに気づく抽象画

こんにちは!よしてる(@uzuraism_)です。

今回は六本木にある「タカ・イシイギャラリー」にて開催したオスカー・ムリーリョさんの個展「geopolitics(manifestations)(地政学―マニフェステイション)」の模様をご紹介します。

この記事を読むとこんなことが分かります。

・オスカー・ムリーリョさんとその作品について知れる
・個展タイトル「geopolitics(manifestations)」に込められた意味を知れる
・抽象絵画の鑑賞方法のひとつを知れる。

鮮やかな色彩と筆跡の力強さが印象的なムリーリョさんの作品は、どんな背景から生まれたのでしょうか。

アーティストのことも知りながら、作品の世界に浸っていきましょう!

オスカー・ムリーリョとは


オスカー・ムリーリョさんは1986年生まれ、コロンビア出身のアーティストです。

2007年、ウェストミンスター大学(イギリス、ロンドンにある国立の伝統校)で美術の名誉学士号を取得し、2012年にロイヤル・カレッジ・オブ・アート(ロンドン)の修士課程修了しています。

ムリーリョさんはコロナ禍による世界的パンデミックの危機の中、2020 年 3 月からコロンビアの故郷の町でアート制作と人道支援活動の両方に従事してきました。

ペインティング作品「マニフェステイション」シリーズとは

今回の展示作品は、個展タイトルにも含まれている、「マニフェステイション(manifestations)」シリーズというペインティング作品です。

マニフェステイションという言葉にはいくつかの意味があり、例えば「明示、表明、現われ、しるし、兆候、(政治的効果をねらった)示威行動、(霊魂の)出現」があげらえます。

中でもこの言葉は、数カ国の言語において「政治的抗議」の意味でもっとも多く使われています。

コロンビアが激動期にある中で、作品と自分がどういう人間かを表明する試みをしていて、身体を使ったアクションを政治の力に変えています。

『マニフェステイション』シリーズは、グローバル資本主義がもたらした、行き場のない、そわそわした生き方への(ムリーリョの)応答だ。継ぎはぎのキャンバスは、抗議を繰り広げるための場となっている。
ー『Mixing It Up』(Hayward Gallery Publishing、2021 年)ロザンナ・マクラフリン(批評家/ライター)ー

激動期の国で作られた作品を通して、日本だけでは見えてこない世界で起きている今に気づくことができます。

個展「geopolitics (manifestations)」の意味

個展タイトルを和訳すると「地政学(政治的抗議)」となります。

2020年から2021年にかけて制作された新作で構成されており、アーティストの「マニフェステイション」シリーズの一環として、嵐のような激動期にコロンビアのスタジオで制作されました。

ちなみに、コロンビアは南米の北端にある国です。

2021 年にはコロンビア政府による税制改革案を発端にコロナ禍も相まって大規模な抗議活動が起こり、それを封じようとする国家の暴力によって人びとの暮らしはますます困窮したものとなっています。

今回の展示作品は、そんな状況下で描かれたものです。

不安定な状況に存在したペインティングには、周りで起こったことの何かしらが吸収されているようで、パンデミックにまつわる苦難の証人であると、ムリーリョさんは考えています。

個展「geopolitics (manifestations)」の作品を鑑賞

コロンビアで起きている政治的な背景も意識しつつ、力強い表現の展示作品を観ていきましょう!

manifestation|激動の波を描いたような作品

《manifestation》
2020-2021、Oil,oil stick,cotton thread,graphite and spray paint on canvas and linen、120 × 115cm
展示会場入口からまっすぐに見える作品です。

赤、白、黒、青と鮮明な色が織り交ざっています。

飛び散らすような筆跡の力強さが印象的で、黒や赤といった色からもある種の怒りを込めているようにも見えます

《manifestation》
2020-2021、Oil,oil stick,cotton thread,graphite and spray paint on canvas and linen、110 × 105cm

作品を間近でみると、雑誌の塊が貼り付けられていたり、毛糸が混じりながら筆を走らせていることが分かります。

キャンバス上に異物が混ざっていると違和感を感じると思いますが、その混沌さがむしろ必要な要素になっている印象があるのが不思議です。

困窮した激動の中の不安定さを感じます。

《manifestation》
2020-2021、Oil,oil stick,cotton thread,graphite and spray paint on canvas and linen、115 × 180cm

描く順序を意識して鑑賞してみると、背景から見ると上部が赤、下部がキャンバス自体の色で塗り分けられていて、その上から白、黒、青でギザギザとブラシストロークをしているように見えます。

背景の2つがコロンビアの対立する者同士だとしたなら、ブラシストロークは抗議活動によと国家の暴力の争いの構図のようにも見えてきます。

お互いの主張する言葉がまっすぐ通じず、湾曲してしまっている様子を描いているのかなと感じます。

《manifestation》
2020-2021、Oil,oil stick,cotton thread,graphite and spray paint on canvas and linen、135 × 115cm

キャンバスをよく見てみると、布を継ぎ合わせてできていることに気づきます。

まるであらゆる意見を繋ぎ合わせて、ひとつの作品として取り込んでいるようです。

不安定なキャンバス上に鮮やかな色を残しているのがますます印象的に感じます。

《manifestation》
2020-2021、Oil,oil stick,cotton thread,graphite and spray paint on canvas and linen、115 × 90cm

untitled(news)|豊かさと愛情を感じる作品

《untitled(news)》
2020-2021、Oil,oil stick,graphite and spray paint on canvas and linen、210 × 180cm

こちらの作品だけ唯一、他とタイトルの異なる作品でした。

他の作品ではそこまで強く金色とピンク色の油彩が印象的です。

金色は「豊かさ、価値のあるもの」などを連想させます。

ピンク色は「恋愛・しあわせ・思いやり」などを連想させます。

困窮した中に必要なものは金銭などの物質的な豊かさと、相手や自分自身を愛し、物心共に豊かさを育むことが大切だと、訴えているように感じる作品でした。

個展の中でも大型作品だったことからも、一番発信したい想いが込められているのかもしれません。

まとめ|愛情と豊かさがある幸せに気づく

抽象画を観に行く機会がなかったので、今回ムリーリョさんの作品を鑑賞できたのはとても勉強になりました。

他にも作品の紐解き方はあると思いますが、アーティストのことを知ったうえで、表現方法や用いている色から感情を紐解き、考察する楽しみ方もあるのではないかなと感じます。

また、海外では今まさに困窮した生活を強いられている国があることも知る必要があると感じました。

コロンビアといえばコーヒー豆の美味しい国というイメージでしたが、情勢に目を向けると国の見方も変わってきます。

日本にだけいるとなかなか気づけない、国境を越えた出来事や文化に触れることができました。

展示会情報

展覧会名geopolitics (manifestations)
会場タカ・イシイギャラリー(complex665)
東京都港区六本木6丁目5−24 complex665 3F
会期2021年9月4日(土)~10月2日(土)
開廊時間12:00~18:00
定休日:日・月・祝祭日
サイトhttps://www.takaishiigallery.com/jp/archives/25558/
観覧料無料
作家情報オスカー・ムリーリョ(Oscar Murillo)さん|Instagram:@lacachepli
ABOUT ME
よしてる
東京でアート巡りををしながら「アートの割り切れない楽しさ」を探究している理系男子です。会社員をしながら、週末アートウォッチをしています。 2021年から無理のない範囲でアート作品の購入も始めました。 好きな動物はうずら。

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