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カシン・ローン「−+」|The MonstersのLabubu(ラブブ)と数学的な要素を取り入れたアート

よしてる
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Labubu(ラブブ)をはじめとした可愛らしいキャラクターで有名な「The Monsters(ザ・モンスターズ)」シリーズ。

そのアート作品にはキャラクターの可愛さとは一見交わらなそうな、数学的な記号が組み合わされていました。

そこにはどんな理由があるのでしょうか。

今回は元麻布の「Kaikai KIKI Gallery」にて開催したKasing Lung(カシン・ローン)さんの個展「−+」の模様をご紹介します。

アートトイとしても人気The Monstersの世界をチェックしていきましょう。

Kasing Lung(カシン・ローン/龍家昇)とは?

《Slope!》
2021、カシン・ローン、アクリル,キャンバス、160.0 × 120.0cm

Kasing Lung(カシン・ローン/龍家昇)さんは香港生まれ、香港・台湾・中国・ベルギーで活躍しているイラストレーター・アーティストです

Labubu(ラブブ)をはじめとした「The Monsters(ザ・モンスターズ)」シリーズのキャラクターの生みの親として世界的に有名です。

幼少期に家族でオランダに渡り、ヨーロッパに古くから伝わる妖精の伝説に影響を受けて育ったそうで、そうした生い立ちから妖精のような不思議な存在を信じる気持ちを持つようになったそうです。

広告業界で働いた後にイラストレーターとしての活動を始め、2011年から香港のフィギュアメーカー「How2work」とコラボレーションし、カシン・ローンさんのイラストに登場するキャラクターをモチーフにしたフィギュアを発表しています。

その後の2013年に、台湾の大手出版社が協力して販売した初めての中国語の絵本となる『My Little Planet』が台湾で出版され、「ラブブ」というキャラクターが注目されるようになりました。

2014年、著名作家のブリジット・ミンネさんとのコラボレーションで子供向け絵本『Lizzy Wil Dansen(リジーはダンスがしたい)』がベルギーで出版され熱狂的な支持を受け、ヨーロッパの絵本コンテストで中国人として初めて優勝し、異なる言語の翻訳版がヨーロッパとアジアの国々で販売されています。

2015年には、「The Monsters(ザ・モンスターズ)」シリーズの中国語の物語を『THE PUCA STORY』、『PATO AND THE GIRL』、『MIRO’S REQUIEM』というタイトルで制作。

登場人物のコレクターズ・フィギュアも発売されました。

「ザ・モンスターズ」シリーズのフィギュアは300体以上制作され、中国本土、香港、台湾、日本、東南アジアのフィギュアコレクターに広く愛されています

The Monsters(ザ・モンスターズ)シリーズとは?

「The Monsters(ザ・モンスターズ)」とはカシン・ローンさんの描くいたずら好きで愛らしいモンスターたちを描いたシリーズです。

妖精のような可愛らしさに満ちていながらも、どこか現実世界に通じるシニカルな面もやんわりと含んでいて、大人から子供まで楽しめる世界観が人気を集めています。

キャラクターたちをみていると幼い頃の記憶が呼び起こされ、心の奥底から無邪気さや希望を引き出してくれるようで、そんなところも世界中で愛されている理由ではないかなと思います。

Labubu(ラブブ)とはどんなキャラクター?

Labubu(ラブブ)

カシン・ローンさんがこれまでに生み出してきたキャラクターの中でも有名なのが、ウサギの耳を持つ「Labubu(ラブブ)」というキャラクターです。

元々は絵本のキャラクターとして誕生し、その後の人気度と共にフィギュア化されました。

日本では「新世紀エヴァンゲリオン」や「鉄案アトム」とのコラボをしていて、フィギュアコレクターからも広く愛されています。

他にも、ラブブと一緒に登場するキャラクターにドクロの「Tycoco(タイココ)」もよく描かれています。

カシンさん自身ドクロが好きなこともありタイココも好きなキャラクターなのだそうで、ふたりが描かれている場面では時折ラブブがタイココにちょっかいを出すシーンが描かれています。

LINEスタンプでその様子をちょこっと見ることができます。

そんな様子から、善と悪の両面を持つキャラクターとしてもこのふたりの描き方には弱肉強食の世界観が感じ取ることができます

他にも、今回の個展の作品中には恐竜の尻尾を持つ「Zimomo(ジモモ)」、白い巾着袋のような頭をした「Spooky(スプーキー)」などが登場します。

作品鑑賞をしながら、ザ・モンスターズの仲間たちを探してみるのも面白いかもしれません。

カシン・ローン「−+」展示作品をご紹介

2016年以降はペインティングとドローイングの制作を本格的にスタートしているカシン・ローンさん、日本初となる個展は2020年3月の「THIS IS WHAT IT FEELS LIKE 」(Hidari Zingaro,中野)でした。

今回の個展は国内初の大型個展となり、約3mの新作ペインティングを含む25点を展示しています。

個展タイトルからもわかる通り、今回の展覧会では「−」と「+」の記号をテーマにした作品が並んでいました

カシン・ローン大型作品

本展覧会で最も大きな絵画作品

©︎Kasing Lung

今回の個展の中でも一番大型の作品で、3枚でひとつの作品となっています。

中央には天使の羽根をはやした大きなラブブやジモモがいて、その周りには街並みや天気、そして他のキャラクターたちも描かれています。

天使のような見た目のラブブ

まるでラブブやジモモが天使になって街を遊び場にして悪ふざけをしたり、天気を操っていたりしているようです。

そんな彼らの無邪気さをみていると、天気のように自分の感情がコロコロと変わるのは、妖精が悪ふざけして遊んでいるせいなのではとも思えてきます。

左にいるのがラブブ。右がジモモで、その上にいるガイコツ頭の子がタイココ、白い頭をしているのがスプーキーです。

この作品に限らずですが、カシン・ローンさんの作品には絵本のような幻想的な雰囲気の中に、数式やベクトルのような矢印、プラスとマイナスのような、数学的な要素も登場します

X軸に見えるグラフの上では、イモムシのようなキャラクターがSIDED LIMITS [片側極限]、ANGLE [角度]と、数学用語を言葉にしています。

その理由としてカシン・ローンさん自身が天文学と物理学がとても好きなのだそうで、その要素が作品にも反映されているのかもしれません

ジモモの視線の先にある「−と+」にはコロナや数学的な要素が

©︎Kasing Lung

ピンク色のジモモが腕を組んで笑みを浮かべながら、何かを企んでいるような姿が可愛らしい作品です。

顔の周りには丸い泡のようなものが浮かび、それを栄養にして周りのカラフルな何かがエネルギッシュに成長しているかのように、イキイキとして見えます。

−と+は時代性を考慮するとコロナウイルスの陽性・陰性を示しているように見えます。

そして、ジモモの視線の先にはALTや数字の表記があります。

仮にパソコンのキー操作を表しているとしたら、赤く描かれた「−と+」は、数字キーだけだと数字入力になるけれど、ALTキーを組み合わせることで違う記号も入力できるようになることを表しているのではないでしょうか。

ひとつだとできることは少なくても、組み合わせることでできることも増えていき、周囲へもプラスという花が育っていく、そんなことを表現しているのかもしれませんね。

何日も考えて、自分にマッチする表現に固めて制作を始めている

©︎Kasing Lung

どれも作品の制作過程が気になる作品ですが、カシン・ローンさんは最初の段階では何日も考えるばかりの日々を過ごし、自分にマッチする表現に固まってから制作を始めているようです。

僕自身の完璧主義のせいで、時折、あまりにも多くのアイディアに溺れてしまうことがあります。特にペインティングを描き始める最初の段階では、具体的なことは始めないで、何日も考えるばかりの日々を過ごします。
作品につかう色やパターン、シンボル、素材などについて、よく考えています。すべてが僕にぴったりとマッチする必要があります…。

作家からのメッセージより引用

この作品も子供がクレヨンで無邪気に描いているように見えますが、考えた末にマッチしたものを表現していることを意識して観ると面白い発見ができたりします。

例えば、ラブブの黒い体もよく見ると、下地に黄色があることが分かったりします

ヒトの脳内の計算過程を表しているような作品

《LOOP!》
2021, Acrylic on canvas, 800x600mm,©︎Kasing Lung

身体の真ん中を境に、白と黒で描き分けられたラブブの作品です。

天使の心と堕天使の心の両方を持っているように見えます。

その周りには言葉たち(REWIND [巻き戻し]、DIAGRAM [図表]、Loop [​​輪]、CPU [中央処理装置])が登場し、右上にいるピンク色のジモモが「N/W!! [ありえない!!]」と叫んでいます。

天気を表しているように見えてた雲も、見方を変えると、ネットを通じて様々なサービスを手軽に利用する概念「クラウド・コンピューティング」の略語であるクラウドにも見えてきます

そう考えると、丸い黄色の粒は電子で、信号を送っているようにも見えますね。

ヒトが脳内情報を整理・比較・検討・決断に行きつくまでの処理は1日に3万5,000回と言われています。

このクラウドがヒトの脳内を表していると仮定して観ると、この処理数をしてもなおラブブのように笑顔でいれる状態に、ジモモが「ありえない!!」と叫んでいるのかもしれません。

カシン・ローン立体作品と小型作品

畳の展示室は部屋にも飾りやすい立体作品と小型作品(およそP25サイズ)を展示していました。

立体作品「KING MON」

©︎Kasing Lung

カラフルな爪をしたラブブの立体作品。Tシャツには「KING MON」という文字と王冠が描かれています。

足元にはモンスターの王らしく、月面に立っているような台座も用意されていました。

ラブブはフィギュア界でも人気が高いですが、実際に見ると艶感が出てて造形が綺麗でした。

それでいて愛くるしい。

例えば、玄関に飾ったら大人から子供まで毎日ほっこりしそうだなと思うのでした。

キャラクターたちの7変化を表現しているような絵画作品たち

絵画作品はザ・モンスターズのキャラクターたちが7変化しているような作品たちが並んでいました。

©︎Kasing Lung

あぐらをかいて座る紫色のラブブ。

上の方に+と−を描いているように見えますが、それらが重なり合って、ジグザグ模様に見えます。

©︎Kasing Lung

​こちらは元気よく手をあげているラブブ。雷を起こそうとしているのか、いたずらな表情が可愛らしいです。

©︎Kasing Lung

ゴジラのように見えるジモモも展示されていました。

この作品のように、ザ・モンスターズのキャラクターたちが別のキャラクターに7変化することで作品同士の調和を生んでいくのも、いろんな人の元に作品が届いていく理由なのかなと思います

これらの小型作品はほんの一部です。

この倍以上の作品が並んでいるので、どのキャラクターが自分好みの子か探してみてください。

まとめ:The Monstersが変える−+の捉え方

カシン・ローンさんの個展「−+」を観ていきました。

ここまで観ていただいて分かる通り作品の描き込みが特徴的で、ひとつひとつの要素を観ていくと、考えた末に生まれた構成なのだと想像できます。

−と+の記号が今回のテーマで、時代性も考慮するとコロナウイルスの陽性・陰性を示しているようでありつつ、数学的な記号が含まれているのはカシン・ローンさんの好きな分野だからかもしれません。

Labubu(ラブブ)たちと記号が組み合わさることで、好きなものなら堂々と表現することの大切さを教えてくれているようです

そして、−と+は一蓮托生で、結果のよしあしにかかわらず、共に在ることで今を楽しむことができる、そんなことを作品から感じ取ることができました。

純粋に「かわいい!!」という感情から作品を楽しみやすいのも特徴的です。

作品はもちろん、アートトイからカシン・ローンさんの世界観を親子で味わうのも良いかもしれませんね。

カシン・ローン「−+」情報

展覧会名「−+」
会期2022年5月13日(金) – 2022年6月2日(木)
開廊時間11:00 – 19:00
定休日日・月・祝
サイトhttps://gallery-kaikaikiki.com/2022/04/kasinglung_soloexhibition_2022_main/
観覧料無料
作家情報Kasing Lung(カシン・ローン/龍家昇)さん|Instagram:@kasinglung
会場Kaikai Kiki Gallery(Instagram:@kaikaikikigallery
東京都港区元麻布2丁目3−30 クレストビル B1F

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1993年生まれの会社員。東京を拠点に展覧会を巡りながら「アートの割り切れない楽しさ」をブログで探究してます。2021年から無理のない範囲でアート購入もスタート、コレクション数は25点ほど(2023年11月時点)。
アート数奇は月間1.2万PV(2023年10月時点)。
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