ギャラリー

職人技で織り込まれた願い|絵を纏う 若槻せつ子「打掛」コレクション

こんにちは!よしてる(@uzuraism_)です。

今回は銀座のポーラ ミュージアム アネックスにて開催した絵を纏う 若槻せつ子「打掛」コレクションの展示風景をご紹介します。

・打掛とは何かを知りたい
・素敵な打掛を観てみたい
・打掛の色や模様に込められた想いを知りたい

そんな方に読んでいただけたら嬉しいです。

この記事を読むとこんなことが分かります。

・打掛に込められた意味が分かる
・1980年代後半から1990年代はじめに制作された打掛を観れる
・若槻せつ子さんの打掛コレクションに対しての想いが分かる

一枚の打掛に込められた物語に触れるきっかけになったら嬉しいです。

それでは観ていきましょう!

打掛(うちかけ)とは

打掛(うちかけ)とは、主に春、秋、冬に着られる女性の着物の一種で、室町時代に武家の女性の礼装として羽織られたのが始まりとされています。

やがて裕福な町家の女性の婚礼衣装となり、現代に至ります。

打掛には「婚家の人になった」という意味が込められていて、結婚式のお色直しとして現代でも選ばれています。

とても色が派手で豪華絢爛にみえる打掛ですが、ただ派手に着飾り装飾をほどこしているわけではありません。

ひとつひとつの色や絵柄には、大切な人への想いが込めらていて、その想いを縫い合わせていくようにひとつひとつ丁寧に織り込まれています。

色:赤=生命、太陽、魔除け
青=純潔、高潔
橙=代々栄える

絵柄:鶴と亀=長寿
二羽の鶴=仲の良い夫婦
富士山=繁栄、めでたさの象徴

佳き日を佳き服で迎えてくれる打掛は、日本ならではの伝統美だと感じます。

若槻せつ子さんについて

今回の展覧会は、若槻さんが長い年月をかけて収集された貴重な打掛コレクションの中から、1980年代後半から1990年代はじめに制作された13点を展示していました。

では、打掛をコレクションしている若槻せつ子さんとはどんな方なのでしょうか。

簡単にご紹介していきます。

KIMONOドレスブランド「ローブ・ド・キモノ」を手掛ける

若槻せつ子(わかつき せつこ)さんは、福島県出身のファッションディレクターです。

文化服装学院を卒業し高島屋などのデザイナーを経て、「オフィスワカツキ」を設立しています。

KIMONOドレスブランド「ローブ・ド・キモノ」というものが有名で、多数の著名人へ衣装提供をしていらっしゃいます。

今回の展示にも、若槻さんの制作した着物ドレスを多く着用したという藤原紀香さんがいらしたそうです。

若槻さんは会場にもいらっしゃいましたが、物腰柔らかな印象でお話を聴いてみると打掛に対しての想いが強く、素敵な方でした。

「日本の伝統花嫁衣裳に込められた日本人の美意識と匠の技、職人さんたちの魂と、華やかな衣裳に込められた嫁ぐ娘の幸せを祈る文様は次世代に繋がなければならない。」
若槻せつ子さんFacebookより引用ー

この想いを、作品を通して教えていただくことができました。

打掛を収集する意味とは

若槻さんは、どうして打掛をコレクションしているのでしょうか。

お話いただいたところによると、「海外に打掛が売られる結果、日本に残らなくなってしまうのを食い止めるため」に、打掛を収集しているとのことでした。

きっかけはバブル後、結婚式が地味になり高価な打掛を着る花嫁が減少、ウェディングへと移行した時期にさかのぼるそうです。

バブル期に仕立てられた素晴らしい打掛たちは海外のインテリアに売られていたそうです。

海外出張をした際に現地の美術館に行ってみると、日本では見ることが出来ない様な素晴らしい日本の芸術品が飾られていたそうです。

打掛も同じく海外に売られる結果、日本にキモノ文化が残らなくなってしまいます。

日本が世界に誇れるキモノ文化を日本に残すこと、それを個人で実施しているのはすごいことだと感じました。

日本の伝統文化を次世代に繋ぐために国や文化庁、美術館などによる保管活動にもつながってほしい取り組みです。

「絵を纏う – 若槻せつ子「打掛」コレクション -」を鑑賞

今回展示された昭和のバブル期前後の打掛13点のうち、特に印象に残った3点をご紹介します。

その他の作品も観たい!という方は、オンライン鑑賞をチェックしてみてください。

1. 約5年をかけて作られた打掛の絢爛さ

《緑ぼかし地鳳凰唐花宝尽くし模様(みどりぼかしじほうおうからはなたからづくしもよう)》,1993

常盤(ときわ)という永久不変の常緑樹の緑色から、華やかなエメラルドグリーンへグラデーションした打掛です。

永遠を表現している鳳凰と色鮮やかな唐花、そして、宝尽くし模様で埋め尽くされた、贅沢な逸品です。

最も特徴的なのが、「相良刺繍(さがらししゅう)」という技法を用いていることです。

制作に大変な手間と時間を要する技法で、中国で数名の職人が約5年の手刺繍をしたものを、国内で縫製しています。

この技術は習得するのに20年以上かかるといわれていて、現在ではこの技術を扱える職人や、縫い針をつくる職人も少なくなり、作品としても貴重なものとなっているそうです。

糸が浮き上がる他の刺繍と違い糸がひっかかりにくくどの刺繍よりも丈夫で、刺繍を玉結びしていく作業が縁を結ぶとされています。

たった数時間の婚礼に約5年もかけて作られた打掛には、なによりもこの打掛を着る人への深い愛情と幸せを願ってやまない様子が感じ取れます

2. 濃紺の珍しい打掛に込められた想い

《唐草に丸に鳳凰模様(からくさにまるにほうおうもよう)》

黒色は打掛としてはあまり見ない色で、珍しい展示でした。

こちらは能楽界の重鎮という人間国宝、ワキ方宝生流12世家・故 宝生閑氏デザインの打掛です。

黒に近い濃紺地に唐草(からくさ)が金色の糸と共に織りだされています。

唐草は獅子舞や風呂敷などなじみ深い模様で、途切れることなく蔓をのばしていくことから末永くという意味があります。

濃紺という宇宙、金糸という星々という捉え方をしたとしたら、永遠に広がり繁栄し続けるという意味になるのではないでしょうか

そして、円形に描かれている鳳凰。

丸は終わりがないことから、こちらも永遠を意味しています。

また、鳳凰が2羽飛んでいることから、丸とかけて円満という意味もあるのでしょう。

この打掛は今回の展示作品の中で唯一、一度も袖を通されていないのだそうです。

このほかにもう一着同じ模様の別の色があるようで、そちらは袖を通しているのだとか。

詳細は分かりませんが、黒は花嫁の母親が着ているイメージがあります。

思うに、この打掛は婚礼をした女性に子どもができて、その子供が婚礼をするときに、自身が着るために用意したのではないかなと思います。

2世代にわたり用いて永遠の広がりを願うという、日本らしい粋を感じる打掛でした。

3. 水の流れと光琳松の光る日本らしい打掛

《白地金彩エ霞観世水金駒刺繍光琳松模様(しろじきんさいえがすみかんせすいかねこまししゅうこうりんまつもよう)》

日本人の職人が制作したという打掛。

見た目は他と比べるとシンプルですが、要素をあえて重ねず、間を大切にしている雰囲気が伝わってきます。

生地には駒塩瀬(こましおぜ)という、高級な白生地を使用しています。

模様の要素を観ていきましょう。

まずは一番目立っている金色の部分、これは「光琳松(こうりんまつ)」といいます。

光琳松は尾形光琳の名前に由来しているもので、江戸中期に一世を風靡した模様です。

松は一年中落葉しない木で、緑の色を変えないことから不老長寿の象徴とされています。

よく見ると光の反射によって赤色も見えてくるところに匠の技を感じます。

白色と金色の中に生命、太陽の色である赤を潜ませていて、まるで不老不死と生命力を掛け合わせ、末永く元気であれるようにという願いが込められているようです

次に雲のように漂う模様、これは「エ霞(えがすみ)」といいます。

エ霞は、霞を「エ」の字のように描いた模様であることから、この名で呼ばれています。

霞の「現れては消える」特性と、打掛全体に連続して表れており、永続や永遠という意味を表しています。

また、エ霞の中にも2種類の模様が潜んでいて、「観世水(かんぜみず)」「亀甲花菱(きっこうはなびし)」が描かれています。

観世水はうずを巻いた水の模様、亀甲花菱は亀の甲羅の模様の中に花菱を描いた模様になっています。

流れる水は腐らずに、流れは清めの意味を持ち、未来永久の象徴とされています。

打掛の上から下まで流れを止めず、末永く幸せになるようにという願いが込められているのでしょう。

洗練された構図は、日本人の美意識の高さを感じさせます。

その他の展覧会の模様はオンラインで鑑賞可能

「今回紹介した3点の打掛以外も観てみたい!」

そんな方は、オンラインで鑑賞ができます。

本当は紹介したいものばかりですが、残りはぜひあなたの目で見て、感じてみてください。

まとめ|打掛の日本美を令和のその先までつないでいく

どの打掛も個性があり、バブル期に作られたこともあり贅を尽くしたものばかりでした。

現代ではここまでの打掛を着る機会には恵まれないかもしれませんが、キモノ文化は日本に残り続けてほしいと感じます。

また、今回展示していた打掛は、本来はガラスケースに入れ厳重に保管された状態で展示するものでした。

それをより身近に日本人の美意識の高さを感じれるように、土台を低くして目の高さから観れるように配慮がなされていました。

この展示方法からも、より多くの人が身近に打掛、キモノ文化の魅力に触れてほしいという想いがあったように思います。

平成~令和生まれの世代こそ触れて、日本にはこんな文化があったということを知るきっかけになる展示会でした。

小さなブログですが、打掛、キモノ文化に触れるきっかけになれたら嬉しいです。

展示会情報

展覧会名絵を纏う – 若槻せつ子「打掛」コレクション –
会場ポーラ ミュージアム アネックス
東京都中央区銀座1丁目7−7 ポーラ銀座ビル3階
有楽町線銀座一丁目駅7番出口すぐ
会期2021年6月4日 ~ 6月27日
開廊時間11:00〜18:40
サイトhttps://www.po-holdings.co.jp/m-annex/exhibition/archive/detail_202106.html
観覧料無料
作家情報若槻せつ子さん:
HP   |若槻せつ子 ローブ・ド・キモノ
Facebook|若槻せつ子

関連書籍

  • 錦のしあわせ 花嫁のために―若槻せつ子のローブドキモノ

展覧会にも鑑賞用に置かれていました。

着物を着用する機会の少なくなってきている中で、着物の記事を使って洋風のロングドレスに仕立てた作品が掲載されています。

これから晴れ着を着る予定のある方には、こういうドレスの形もあるんだ!という発見があると思います。

ABOUT ME
よしてる
東京でアート巡りををしながら「アートの割り切れない楽しさ」を探究している理系男子です。会社員をしながら、週末アートウォッチをしています。 2021年から無理のない範囲でアート作品の購入も始めました。 好きな動物はうずら。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA