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Chim↑Pom from Smappa!Group個展|改名から「個と公」の多様性と境目を考える

都市をはじめとする公共空間とそこで生きる私たちの間にある「個人の在り方」のギャップを、ユーモアと皮肉を交えながら軽快にアート作品にしていくChim↑Pom(チンポム)さん。アーティスト名の改名からも、「個と公」の関係性を考えさせられます。

今回は天王洲にある「ANOMALY」にて開催したChim↑Pomさん改名後初の個展「Chim↑Pom from Smappa!Group」の模様をレポートします。

要点だけ知りたい人へ

まずは要点をピックアップ!

要点
  • Chim↑Pom from Smappa!Group(チンポム フロム スマッパ!グループ)とは、2005年に東京で結成されたアーティスト・コレクティブ。
  • 結成当初から「個と公」を表象した「都市論」をテーマに作品を制作。
  • Chim↑Pomは2022年4月27日をもって、アーティスト名を「Chim↑Pom from Smappa!Group」に改める動きをして話題に。
  • 改名の理由は、森美術館で開催中の「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」(2022)の協賛をめぐる問題が関係。
  • 今回紹介する展覧会が改名後初となる展覧会。
  • 本記事では展示作品のうち印象に残った8作品をご紹介。

要点の内容を詳しく知りたい方は、続きもご覧ください!

Chim↑Pom改め、「Chim↑Pom from Smappa!Group」とは?

Chim↑Pom from Smappa!Group(チンポム フロム スマッパ!グループ)とは、2005年に東京で結成されたアーティスト・コレクティブ(複数のアーティストが協働する形態)です

メンバーは

  • 卯城竜太(うしろりゅうた)さん
  • 林靖高(はやしやすたか)さん
  • エリイさん
  • 岡田将孝(おかだまさたか)さん
  • 稲岡求(いなおかもとむ)さん
  • 水野俊紀(みずのとしのり)さん

の男性5名、女性1名の合計6名で活動しています。

結成当初から「個と公」を表象した「都市論」をテーマに作品を制作していて、積極的かつ変則的に、現代社会の多様な問題を取り上げた作品を生み出しています。

作品にはユーモアと皮肉を交えた独創的なアイディアでメッセージ性の高い作品を発表し、国内外で評価を得ています。

Chim↑Pom from Smappa!Groupの「都市論」とは?

Chim↑Pom from Smappa!Groupの都市論とは、東京のまちづくりをはじめとする都市の再開発・高級化により変化する「公共空間」と、その変化に従うか立ち退くかを迫られる「個人の在り方」の関係を表す「公から個」という流れに反した、「個から公」への回帰と刷新を念頭にした考え方のことです。

特に昨今の東京で公と個の関係が加速度的に変わっていっていることや、世界中で起きているジェントリフィケーション(地域に住む人々の階層が上がると同時に地域全体の質が向上すること)により排除される人々の構図への疑問から、「おもしろい個が、おもしろい公をつくる」として、社会と個人の関係、現代に潜む矛盾、国際情勢の問題をも取り上げた作品を発表しています。

時代のリアルを追究した、賛否両論ある作品を次々と発表してきたChim↑Pom from Smappa!Groupは2022年で活動17年目を迎え、本展覧会の他に、これまでの作品を振り返る回顧展と同時に、新たなプロジェクトも展開する個展「Chim↑Pom展:ハッピースプリング(森美術館、2022)」も同時開催しています。

開催場所が異なることでできる表現の違いが観てとれるので、別視点から深くアーティストの世界観に浸ることができます。

Chim↑Pomから改名した理由

Chim↑Pomは2022年4月27日をもって、アーティスト名を「Chim↑Pom from Smappa!Group」に改める動きをして、話題となりました。改名の理由は、森美術館で開催中の「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」(2022)の協賛をめぐる問題が関係しています。

Chim↑Pom「ハッピースプリング」|11のテーマ別で現代の問題をアート化した作品を紹介国内外で問題となっている出来事をユーモアと皮肉を交えながら軽快にアート作品にしていくChim↑Pom(チンポム)。名前は聞いたことがあっ...

Chim↑Pomから改名した経緯

  1. 森美術館から協力要請を受け、展覧会で必要となる設営費などを賄うため一部アーティスト側で協賛金を集めることになっていた。
  2. アーティストからいくつかの企業へ声かけし協賛申し出があった中で、「六本木ヒルズという『まちづくり』における『ブランディング』」という観点から、接客を伴う水商売を事業にもつSmappa!Groupのロゴは展覧会での掲載NGとなった。
  3. Smappa!GroupはこれまでにChim↑Pomとの協働による代表的なプロジェクトを生み出してきている。
  4. 他にも黄色いネズミの作品《スーパーラット》が美術館から共同プロジェクトスペースに出され、「表現の自由」に議論の余地が大きく生まれてしまったことも相まって、水面下での交渉が限界となった。
  5. そこで、NGとなった企業名をアーティスト名に含め改名することで、間接的に企業名掲載を模索
  6. Chim↑Pom自身が「際どい社会人」であるとした上で、掲載の排除をアーティストと美術館の事情の違いをもって敵対するのではなく、どうすればすり合わせ地点を見つけられるかの実証実験の場として、様々な議論を開くことに(2022年5月7日現在も協議中)。※詳しい経緯を知りたい方はアーティストの「改名のお知らせ」も併せてご覧ください。

こうした改名の経緯もあり、「ハッピースプリング」展をより面白く意義あるものに発展させる新プロジェクトとして今回の展覧会「Chim↑Pom from Smappa!Group」での開催が決まりました。

展示作品を鑑賞

※以降にはネズミを使った作品などを掲載しているので、苦手な方はご注意ください。

改名後の意思表明を感じるサイン

《Chim↑Pom from Smappa!Group》
2022、Chim↑Pom from Smappa!Group(ネオン制作:市川大翔)、ネオンサイン、110 × 120cm

展覧会の入口に展示された、改名後のアーティスト名「Chim↑Pom from Smappa!Group」のネオンサイン。

Chim↑Pom from Smappa!Groupの開催初日を以って当面アーティスト名を改める「Chim↑Pom」の一旦の最後であり、新生Chim↑Pom from Smappa!Groupのはじまりとなることを表明し、改めての自己紹介をしているようです。

そして、その裏には別の表明が描かれたサインがありました。

《排除せれても駆除されない WE ARE SUPER RAT》
2022、Chim↑Pom from Smappa!Group、象嵌サイン、58 × 109.5cm

「排除せれても駆除されない WE ARE SUPER RAT」と描かれた言葉には、美術館の展示ができなかった《スーパーラット「千葉岡君」(レプリカ)》と自身を重ねつつ、アーティストとしての在り方を懸命かつ明るい態度で表しているようです

個の「居場所」を切り開き、公共空間の枠組みを議論する場にしているようです。

ふたつの展覧会の繋がりを生んでいるような作品

《ハッピースプリング》
2022、Chim↑Pom from Smappa!Group(制作協力:松田修)、キャンバスにシルクスクリーン、12 × 12cm

小さなキャンバスに「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」を鑑賞に来た有名人とエリィさんの記念写真を作品化したもの。

元画像は実際にインスタグラムに投稿されています

森美術館の展覧会とANOMALYの展覧会を意図的に繋げているように感じます。

Chim↑Pom from Smappa!Groupの自画像「スーパーラット」

《スーパーラット「ピカピカ」》
2022、Chim↑Pom from Smappa!Group(制作:篠崎裕美子)、ネズミの剥製,純金箔、20.5 × 13.5 × 10cm

スーパーラットとは駆除薬剤に対して抵抗力を増した、巧妙化、強靭化するネズミのことです。

毒に耐性を持つネズミが発生した背景には1964年の東京オリンピックが関係していて、東京オリンピック開催前に行われた都市の「浄化」から免疫を獲得したことで現れたとされています。このネズミたちは都市部を中心に増加し現在も問題となっています。

そんなスーパーラットをメンバーで捕えて剥製にし、着彩された作品は、Chim↑Pom from Smappa!Groupの自画像といわれています。都市が変化する中でも自身を変化させ共存していく姿は、個の持つ存在感と面白さを象徴しているようです。

《スーパーラット「千葉岡君」(レプリカ)》
2022、Chim↑Pom from Smappa!Group、ネズミの剥製、18.5 × 8 × 11.5cm

その隣には着彩が黄色くなった、馴染みのあるモンスターのような姿をしたスーパーラットも展示されていました。

この作品は権利上の問題などから森美術館での展示が叶わなかったそうで、美術館とは別会場の「ミュージアム+アーティスト共同プロジェクト・スペース(完全予約入替制)」に同じものが展示されています。

「多様性の在り方」という、立場や個人によって異なる考え方の境界線を作品を通して提示している作品のようです

置かれた状況や立場を抜きにした”叫び”に胸打たれる映像作品

《HOSTAGE(ホスタージュ)》
2022、EDI MAK、ビデオ、12分40秒

Chim↑Pom from Smappa!Groupの改名の由来にもなった、歌舞伎町のホストクラブを中心とした企業、Smappa!Groupの協力を得て制作された映像作品です。

ホストクラブで働く人たちひとりひとりが想いを言葉に乗せ投げていく様子が映し出されていきます。その様子がどこか、東日本大震災の被災地の若者と希望の言葉を叫ぶ映像作品《気合い100連発》(2011年)と似た熱量を感じました。

作品の背景や内容は異なる作品ですが、どちらも社会的な現象に巻き込まれた中でも生き抜く姿が映し出されている点は共通しているのかなと思います。

置かれた状況や立場を抜きにした叫びに胸打たれる感覚がありました。

電話をかけることでエネルギーを生成する街路灯の作品

《性欲電気変換装置エロキテル8号機》
2022、Chim↑Pom from Smappa!Group、街灯,携帯電話、寸法可変

会場内に横たわる街路灯は、以前歌舞伎町にあったものを使っているそうです。

会場に説明書きがあるわけではないですが、床に散らばっているピンクチラシの電話番号にかけると、作品の街灯が発光する仕組みになっています。自分の行動によって作品が完成する体験ができるのも面白いですね。

つまり、ピンクチラシに電話をかける行為を「性欲というエネルギー」と捉え、それを電気エネルギーに変換するという作品になっています。

最近では石油の高騰が続く中で人間の生理的な三大欲求をもエネルギーにしてしまう、エコロジカルでサステイナブルな思想を作品として昇華させているパブリックアートです。

リアルの道をバーチャル上でも育むNFT作品

《Michi no Tochi》
2022、Chim↑Pom from Smappa!Group、NFT(協力:スタートバーン株式会社)

森美術館内に設置している《道》(2022年)を「月の土地」のような発想と解釈で仮想「土地」として概念上坪分けし、NFT化する試みも展示されていました。このNFT作品は実際にギャラリーで購入することができ、すでにいくつかの区画が売約済となっていました。

美術館に作られた《道》は会期中にダンスや大道芸などのイベントやパフォーマンスも行われるプロジェクトスペースとして機能していて、公共の場として鑑賞者と共に育つ場所となっています。

しかし、そんな《道》も会期終了となったら取り壊されてしまいます。そこで、リアルに育った作品を電子的に在り続ける場所としている試みにバーチャル上でも道を育む面白さを感じます

個と公の間にある「多様性の境目」を考える展覧会

Chim↑Pom from Smappa!Groupに改名後初となる展覧会を鑑賞してきました。

作品の表現は軽快ながらもダイナミックで、人によっては「こんな問題が世の中で起きているのか」と気づくものもあると思います。

その気づきから個と公の間にある多様性と、どこまでを受け入れるかの境目について考えてみても面白いかもしれません

展示会情報

展覧会名Chim↑Pom from Smappa!Group
会場ANOMALY
東京都品川区東品川1丁目33−10 TERRADA Art Complex 4F
会期2022年4月27日 (水)〜2022年6月4日(土)
休廊日:日・月(会期中の祝日4/29、5/3、4、5は開廊)
開廊時間12:00〜18:00
サイトhttp://anomalytokyo.com/exhibition/chimpom-from-smappagroup/
観覧料無料
作家情報Chim↑Pom from Smappa!Groupさん|Instagram:@chimpomfromsmappagroup

美術手帖でもChim↑Pomの2005年の結成から、2022年の個展「ハッピースプリング(森美術館)」まで、これまでの活動をわかりやすくまとめられています。

Chim↑Pomメンバーのエリイさんが独特な文体で書いた書籍。
「私は完全なる死を生んでしまった」という言葉が印象的です。

ABOUT ME
よしてる
東京でアート巡りををしながら「アートの割り切れない楽しさ」を探究している理系男子です。会社員をしながら、週末アートウォッチをしています。 2021年から無理のない範囲でアート作品の購入も始めました。 好きな動物はうずら。

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