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谷口正造「頼りない天使」アート鑑賞レポート|キチムの空間を彩る作品

よしてる
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谷口正造さんといえば東京・吉祥寺にあるキチムでの展示です。

そんな地で7回目となる「頼りない天使」と題した展覧会が開催されました。

今回は個展「頼りない天使」に展示していた家を乗せた馬やアメ車、山などのモチーフを用いた谷口正造さんの多彩な作品のご紹介と、鑑賞を通じた探究を含めた内容を鑑賞レポートにまとめていきます

谷口正造とは?

谷口正造(たにぐち しょうぞう)さんは1990年生まれ、愛媛県出身の作家です。

今回開催したキチムは2016年から2021年の間、6年連続で谷口正造さんが個展を開催していた地で、今回が2年ぶりとなる7回目の開催になります。

その他の直近の主な展覧会に

などがあります。

馬をモチーフとした作品を始め、多彩な作品を制作

谷口正造さんは多彩な作品を制作されていますが、中でも馬をモチーフとした作品で知られています

馬の多くは目を閉じていて、首輪を身につけ、背中に小さな家を乗せ、穏やかな様子で佇んでいるのが特徴的です。

谷口正造さんの作品(部分)、首輪や小さな家を乗せた馬が描かれています(2022、谷口正造「My Song」、biscuit gallery・渋谷)

他にも大きい靴を履いた少年人間みたいなうさぎ四角いアメ車蝶々の羽根を身につけた少女など、さまざまなモチーフが登場します。

作品からは好きや憧れ、情熱といった感情の輝きを閉じ込めているように感じます。

展覧会タイトルはFISHMANS「頼りない天使」が関係

今回の展覧会ステートメントをみると、展覧会タイトルがFISHMANSさんの「頼りない天使」という楽曲からつけられたことが分かります

「頼りない天使」って歌が
作品が自分に語りかけてきてるように聴こえた夜があって
粘土で作った作品たちに
そのままこの名前をつけました

なんて不思議な話だろう
こんな世界のまん中で
僕が頼りだなんてね
(頼りない天使 / FISHMANS より一部引用)

キチム オフィシャルサイトより引用

FISHMANSさんの「頼りない天使」はこちら。

楽曲を聞いて作品を鑑賞すると、また違う鑑賞体験ができるかもしれません。

「頼りない天使」展示作品を鑑賞

今回の展覧会はゴールデンウィーク中の3日間と短期間での開催でした。

そんな中、作品の世界観で包み込むように、店内外に谷口正造さんの作品が展示していました。

キチム入口から作品展示がスタート

まずはキチムの入口付近に展示していた作品から観ていきましょう。

まずは、入口付近に展示されていた「The DAYS ARE GETTING LONGER(日が長くなってきた)」という英文が添えられた絵画です。

樹木を灯火のように持った巨人、飛行船が近くを飛んでいる様子からもその大きさが想像できます。

日が長くなる夏至(6月下旬)を思わせる景色で、これから訪れる季節感を感じます

その隣に目を向けると、山岳地帯を描いたような作品が登場します。

空に稲妻のような模様が縦横無尽に走っているのが印象的です。

家を乗せた馬といった馴染みのあるモチーフ以外に、変革を感じる作品と出会えるのも魅力的です。

環境が作り出す予測不可能な現象のように、予想外を巻き起こす力強さを感じる作品です。

アート作品のあるカフェ空間

店内に入ると、カフェキチムの注文カウンターがあります。

鮮やかな注文カウンターの周りには、随所に立体作品が置かれています。

谷口正造さんの作品に多く登場する、優しい表情をした馬や、窓が極端に小さい家、車の作品がカフェ空間に展示されています。

車の作品の前には谷口正造さん自作のZINEも置かれていました。

ギャラリーのキリッとした展示空間とは違った、日常に寄り添うアート展示を楽しめます

中には立体看板や段ボールに描かれた、キチムならではの作品展示も。

背中に家を乗せた馬の立体作品《頼りない天使》がここで出迎えてくれます。

今回の展示のきっかけとなった、頼りない天使の一人でしょう。

壁面にも絵画作品を展示

店内の壁面にも、平面作品が展示されていました。

モチーフはどれも絵本に登場しそうな可愛らしさがあります

メインステージには大型作品、ドローイング、立体作品も

メインステージには大型の絵画作品から立体作品、ドローイング作品と、世界観が凝縮されたような展示空間となっていました。

馬を描いたキャンバス作品

展示作品の中でも最も大きな100号(1620 × 1300 mm)の作品《頼りない天使の COCOON》が、周りの演出もあって存在感を放っています。

写真では見えづらいですが、作品にはラメが用いられていて、光を柔らかく反射させています。

背中に乗せた小さな家を繭(COCOON)で包み込んでいるような表現で、頼りない保護ながら幸せを届けているようでした。

馬を描いたキャンバス作品はもうひとつあり、今回の展覧会のキービジュアルにもなっていた作品もメインステージで鑑賞できます。

蝶々のような丸い翼をもつ馬の上に、少女が寝そべっている作品。

少女は馬に心を許して身を任せているようで、この少女にとって馬が天使のような救いをもたらしてくれる存在なのかもしれません。

天使というと遠い存在に聞こえますが、この作品の中では身近にいる存在のことを意味しているようだなと感じます

まさに、FISHMANSさんの「頼りない天使」の歌詞と重なる作品だなと思いました。

馬の立体作品

100号のキャンバス作品の隣には、《頼りない天使》というタイトルの立体作品が複数展示してあります。

立体作品はbiscuit galleryでの個展「My Song」(2022)から制作方法が進化しているそうで、清らかな白が印象強くなっていました。

台座の高さは差がつけられていて、身長の低い子供から高い大人まで、鑑賞者と作品の目線が合うように工夫されているようでした。

こうした段差を利用した展示から、鑑賞者の視点それぞれにとっての天使が側にいる、というメッセージがあるように感じました。

蝶々の羽を身につけた少女の絵画作品

メインステージは馬の作品がメインとなっていますが、その周りにも多彩な作品が展示してあります。

蝶々の羽を身につけた少女の作品もそのひとつです。

《SWALLOWTAIL BUTTERFLY》(アゲハ蝶)というタイトルの作品には、羽の模様に家や馬が描かれています。

蝶々といえば、サナギから綺麗な姿へ変化することから、輪廻転生や復活の象徴とされたり、夫婦円満の吉祥文様としても用いられる存在です。

少女に綺麗な羽が生えている様子から、これまでの自分自身からの脱皮・変化が表されているようです

アメ車の立体作品

蝶々の少女の作品《キミノキモチ》の隣には、アメ車をモチーフにした作品が展示されていました。

車のボンネット部分には同じく蝶々の少女が描かれていて、《キミノキモチ》の絵画作品とリンクさせているような展示にも見えます。

そして、ボンネットの横には「THE FANTASY IS REAL(空想は現実のものとなる)」という文字が添えられています。

作品のように、空想は何かを生み出す源泉であることを示しているようです。

カオス的な展示のドローイング作品

ドローイング作品の展示はカオス的に、マスキングテープでいくつも壁に貼り付けられていました。

ドローイング作品に描かれる内容はどれも異なり、谷口正造さんの創作欲が映し出されているようです。

左上のA3サイズほどの作品にはこれまでキチムで開催してきた展覧会タイトルが書かれていて、これまでの活動を振り返っているようでもあります。

探究:天使は自分含め身近に存在していている

今回の展覧会を通じて考えたのが「天使が示すもの」です。

人によって「天使」という言葉から連想するものは違う(羽の生えた人物、ペット、恋人、推し など)一方で、共通するのは幸せや生きがいをもたらしてくれる、いわばその人にとっての「救いとなる存在」です。

今回の展示の中で印象的だったのが、高さの異なる台座に置かれた立体作品の展示です。

身長差によって見えない人がいないように作品を展示しているようで、それはその人の目線だから見える天使がいる、ということを示しているようでした。

そういう意味で、作品も誰かにとっての身近な天使になりうると思いました。

谷口正造さんの作品には多彩なモチーフが登場し、展示数も多い印象があります。

そのひとつひとつの作品が誰かにとって身近な天使のような存在となっているのかもしれないと、思考を巡らせながら鑑賞していました。

また、作品に登場する馬は包帯をしていて、決して強い存在ではない印象を受けます。

《頼りない天使》(部分)
2022、谷口正造、キャンバスにアクリル絵の具,色鉛筆、727 × 606 mm(F20号)

それでも、誰かの天使となって、感動を生んでいます。

こうした姿を自分と照らし合わせた時、決して強い存在ではない自分も誰かにとっての天使となっているのかもしれない、とも感じました。

それを誇らしげに自認することはないですが、自分の思いもよらない瞬間に、誰かの救いとなる行動や言動をしているかもしれないと考えていました。

作品鑑賞を通じて感動を得るのと同じように、形は違えど、自分自身も同じ感動を生み出せる可能性を秘めている、そういう意味で、誰もが天使になれると思いました。

実現したいことを吉夢のように描き、失敗を繰り返しても、歩みを進めることが大切だなと。

谷口正造さんの今回の個展から、そんな強く生きるためのヒントを得られたような気がします。

キチム入店時は注文を

会場のキチムはイベントスペースとカフェを併設したお店で、カレー屋ピワンとギャラリー芝生と場所を共有しています。

キチム入口

地下一階に進むと、展示会場に入れます。

展示会場はカフェ併設となるので、入店の際には注文が必要です。

最近コーヒーにハマっているので、今回はキチム特製アイスコーヒーを注文。

キチム特製アイスコーヒー(620円)

これからの暑い時期にも飲みやすい、スッキリとした味わいでした。

飲み物や軽食を取りながら、心地の良い店内でアート鑑賞しながらゆったりと過ごせました。

まとめ

今回は谷口正造さんの「頼りない天使」の鑑賞レポートをまとめました。

展示作品数や多彩なモチーフの作品から、創作欲を感じる展覧会でした。

キチムは谷口正造さんが個展を長年開催している場所で、私自身は初訪問でしたが、カフェスペース全体が作品の世界観で包まれていて、素敵な空間でした。

探究でも書いたように、天使という言葉について考えるきっかけにもなる展覧会となりました。

解釈は人それぞれだと思うので作品を知るひとつのきっかけにしていただきつつ、次回の展覧会で実際の作品を鑑賞してみてはいかがでしょうか。

展示会情報

展覧会名頼りない天使
会期5月4日(木祝) 15:00-19:30
5月5日(金祝) 12:30-18:30
5月6日(土)  12:30-18:30
定休日なし
サイトhttps://page.kichimu.la/syozo/
観覧料無料
※カフェのため入店の際は注文をお願いします。
作家情報谷口正造さん|Instagram:@syozo_taniguchi
他展示での谷口正造さん作品はこちら
会場イベントスペース&カフェ キチム(Instagram:@kichimu_kichijoji
東京都武蔵野市吉祥寺本町2丁目14−7 地下

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1993年生まれの会社員。東京を拠点に展覧会を巡りながら「アートの割り切れない楽しさ」をブログで探究してます。2021年から無理のない範囲でアート購入もスタート、コレクション数は25点ほど(2023年11月時点)。
アート数奇は月間1.2万PV(2023年10月時点)。
好きな動物はうずら。
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