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FACE「Taking Peace for Granted」|笑みに潜む平和ボケを描いたアート

よしてる

特徴的な笑顔を見せるモチーフたち。その笑顔にはどんな意味が込められているのでしょうか。今回は原宿にある「GALLERY TARGET」にて開催したFACEさんの個展「Taking Peace for Grantedの模様をご紹介します。

FACEとは?

FACEさんは台湾人の父と日本人の母を持つ、東京生まれのアーティスト、イラストレーターです。

子どものころから絵を描くのが好きだったようで、漫画家になるのを夢みてノートにドラゴンボールやスラムダンクの絵を描いていたそうです。大学中退後にアパレル業界に就職し仕事をしながらも、絵は描き続けていました。

その後に描いた作品が雑誌編集者の目にとまり、雑誌、adidas、ISETAN、BEAMS、Disneyとのコラボと活躍の幅が広がっていきます。

他業界を経てアート制作に至っている背景から、好きで絵を描くことを継続していたから、アーティストとしての道へにつながっていったのではないかと感じます。

笑顔のモチーフの背景には9.11が

《関節》
2020、FACE、Acrylic on canvas、530 × 455 mm

今回の展覧会の作品制作の原点には、アメリカ史上最悪の自爆テロ攻撃といわれている9.11があるそうです。110階もあった高層ビルが1日で何もない場所に変貌し、跡地が広島の原爆爆心地を連想させることから、「グランド・ゼロ」と名付けられました。

このグランド・ゼロを見て、FACEさんは「日本人はあまりに危機意識がなさすぎるんじゃないか」と感じたそうです。

貼り付けたような笑顔は、銃を突きつけられてもニコニコしている日本人への皮肉を表現しているそうです。平和である日本に住むがゆえの良さと、危機感の欠如に気づくことができないわるさがあることに気づけます。

“Taking Peace for Granted”とは「平和ボケ」

今回の展覧会タイトル“Taking Peace for Granted”を直訳すると、「平和が当たり前」となります。海を挟んだアメリカでは9.11のような衝撃的な出来事が起きている一方で、どこか「日本だから大丈夫」という空気感が漂っています。

個人的な体験として博多駅前道路陥没事故は現地で体験したことがありますが、犠牲者が出なかった事故でした。これが人為的に狙われた大規模な事件であったとしたら個人的な平和ボケの気持ちも変わっていたのかもしれません。

そんな、体験したくはないけれど知っておく必要のある視点を、アートから感じることができると思います。

展示作品を鑑賞

それでは、入口から順番にアートを観ていきましょう!

正方形の小さな作品群「toybox」

《toybox (上段)No.7~10、(下段)No.17~20》
2020、FACE、Acrylic on canvas、200×200 mm

FACEさん作品の象徴である、連なる目と弧を描いた口の作品群「toybox」です。まるで福笑いのような表情の配置で、大きく表情を変えています。その表情は顔面に収まることを知らず、時に腕や髪の上に添えられています。

本当に笑っているのか、それとも嘲笑っているのか、困っているのか…。表情からは被写体がどんなことを考えているのか、なかなか読み取れません。

ここで、表情から何かを読み取ろうとしている自分に気が付きます。日本人的な「空気を読む」感覚を引き出されている、そんな感覚になります。表情から情報を得て、和を乱さないようにする、身近な平和の維持活動の由来と出会うことができます。

おなじみのあのキャラクターのモチーフ作品

続いて、どこかで見たことのあるモチーフが、FACEさんの手により皮肉っぽい空気を醸し出していました。

《落とし物》
2020、FACE、Acrylic on canvas、400×400 mm

オランダの絵本に登場する、あのウサギのようなモチーフが描かれています。大量の目が机上に転がっていて、口は腕に抱えた人形のものになっています。

本家のウサギの絵本は究極のシンプルを追及している作品で、ウサギの表情はイラストのシンプルさと似て、基本は無表情で描かれています。本家のシンプルな無表情と、FACEさんの作品の笑顔との間には、何か似た雰囲気を感じます。

シンプルなものには余白が残されていて、この余白を埋めようとする過程で想像力が生まれていきます。そんなシンプルな表情を落としてしまったとき、その余白には何が残るのでしょう。

想像力は発揮する場所によって相手を気遣いすぎてしまい、大衆の空気に合わせ「自分がどうしたいか」を見失う使い方もできてしまうと感じます

そんなときはあえて落とし物をしてみて、「自分がどうしたいか」に想像力を発揮してみてはどうだろうかと、作品からメッセージを受け取れた感覚になりました。

2階スペースを飾る大判作品

2階にも作品があるということで、階段をのぼって観に行きます。

階段の途中には見たことのある作風の「KOTTCH」が描かれていました。FACEさんのイラストは、今回の展覧会で描いたようです。

インビテーション作品「見えないナイフ」

今回のインビテーションともなっている作品が展示されていました。

Q
インビテーションとは?

日本語で「招待」を意味する言葉です。展覧会で配布されているポストカードや、展覧会開催のお知らせの際に使用されているものを指して、インビテーションと呼ばれることがあります。

《見えないナイフ》
2020、FACE、Acrylic on canvas、1120 × 1455 mm

ナイフという表現には、物理的なものだけでなく、言葉の表現としても使われます。その一つとして、この笑顔もナイフとなりうることを表していると感じる作品でした。

こちらを向いている女性に描かれている水色の影のせいか、その笑顔が非常に冷ややかな印象を受けます。平和を当然と思うことに警告をしているようで、外にも目を向けようと考えるきっかけになる作品でした。

また、この作品を観て、ふと中学校卒業時のはなむけの言葉でいただいた、この言葉を思い出しました。

ことばを大切にしてください。ことばは未熟です。未成熟です。ときには刃物より力をもち、ときには両手いっぱいの花束にも勝る力をもちます。ことばを大切にしてください。

笑顔から空気を読むには、情報量として未熟な部分もあるのではないかと思います。知った気になる感情から一歩身を引いて、しっかりとコミュニケーションをとっていく必要性を感じる時間になりました。

まとめ:空気を読むのではなく「自分がどうしたいのか」

FACEさんの作品に浸れる空間で、笑顔とシンプルさ、コミュニケーションについて考える時間を過ごすことができました。

平和ボケの中には「空気を読む」という和を重んじる文化があり、それも大事にしていきたいと思う一方で、一歩引いて「自分がどうしたいのか」に軸を持つ大切さも感じました。

展示会情報

展覧会名“Taking Peace for Granted” by FACE
会場GALLERY TARGET
会期2021年4月16日(金)- 2021年5月1日(土)
開廊時間12:00 – 19:00
閉廊日:祝日・日曜休廊
※緊急事態宣言の発令を受け、人数制限を行いながらの開催。
混雑時は待つ可能性あり。
サイトhttps://www.gallery-target.com/2021/04/12/adriana-oliver/
FACEさんInstagram:@face_oka
観覧料無料

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東京の展覧会をめぐりながら「アートの割り切れない楽しさ」をブログで探究してます。2021年から無理のない範囲でアート購入もスタートし、コレクション数は15点ほど(2022年11月時点)
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