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油野愛子「When I’m Small / 小さかったころ」|自分とは何かを多角的に問う

こんにちは!よしてる(@uzuraism_)です。

今回は六本木にある「小山登美夫ギャラリー」にて開催した油野愛子さんの個展「When I’m Small / 小さかったころ」の模様をご紹介します。

この記事を読むとこんなことが分かります。

・油野愛子さんとその作品について知れる
・多彩な素材を用いた表現に出会える
・多角的に「自分とは何か」を問う表現に出会える

素材の持つ面白味を引き出し、そこに問いを潜ませた表現しているところが、不思議と夏休みの自由研究のように感じる作品でした。

多彩な表現を用いた作品を観ていきましょう!

油野愛子とは

油野愛子(ゆの あいこ)さんは1993年生まれ、⼤阪府出身のアーティストです。

2018年に京都芸術⼤学⼤学院美術専攻総合造形領域を修了されていて、主な受賞歴に2017年CAF賞⼊選、2019年群⾺⻘年ビエンナーレ⼊選があります。

作家ステートメントから、何か良いことがあったときの喜びの記憶であったり、その反対の不安な感情であったりを、作品を通して表現されているように感じます。

“HAPPY” と名付けられたつかの間のせつなさは、
記憶という見えない曖昧さのなかに漂っている
どこで切り取り、どの部分を再生するのか
経験したはずの感覚や記憶の断片を増幅し、その意味や印象を再構築しながら
曖昧な未来の大きな不安に向かって楽観的にドローイングする私がいる
Statementより引用ー

また、小山登美夫ギャラリーでの個展は今回が初となります。

作品制作|素材の動きに現れる、未来への夢と大人の現実、移り気な散漫さ

作品制作には金属や樹脂、陶芸、アクリル絵具など多様な技術と素材を使用した表現をしています。

今回の個展でも3つの異なる表現の作品を鑑賞できました。

あらゆる素材を用いた表現をしているのは、過去を振り返りながら多角的に「自分とは何か」を問う表現をしているからかもしれません。

今回の展覧会によせたコメントからも、そんな印象を感じました。

「子どもの頃は大きく見えていたものが小さく感じたり、そのとき見えていたものや感じていたことが失われ、変わっていく様な瞬間、私はいつも小さいころの自分が側にいて、なりたかった姿を今に融合して生きていると感じる。愛着の様なさみしさや、大人になるということへの違和感、かつて想像していた未来への夢や期待を日常にみる現実社会との違いを交えて、悲しいことや嬉しいこと、怒りといった感情の束の間の衝動を、自身の子どもの頃の記憶や体験をもとに、この完璧でない世界を表現しようとしている。」
油野愛子ステートメントより引用ー

個展「When I’m Small / 小さかったころ」の作品を鑑賞

それでは、今回の展示作品を観ていきましょう!

絵画作品「Narrative」

《IRIS(Narrative)》
2021、spray,resin,acrylic on canvas、145.5 × 112.0 × 4.5cm

「Narrative」シリーズとは、

  • アクリル絵の具が乾く前に上からスプレー塗装をすると、スプレーした部分が浮き上がって皮膜ができる特性
  • 樹脂の他素材とは馴染まないといったマイナス的特徴

といった、素材の特性を利用した作品です。

一度描いた絵画をヘラで剥がしたような見た目で、アクリル絵の具の裏側には樹脂の黒い光沢がみえます。

《GARDEN(Narrative)》
2021、spray,resin,acrylic on canvas、162.0 × 130.3 × 4.5cm
Narrativeという言葉には「特に小説における物語の中での出来事の描写」や「物語を語る技術」といった意味があります。

同じ言葉を縦に並べて、背景は異なる色で描いた後、それを剥がし地肌を見せるような表現から、「同じ日々をいろんな色に染まって繰り返している自分の本心は何なのか」を見つけ出そうとしているようだなと感じました。

《NARCISSUS(Narrative)》
2021、spray,resin,acrylic on canvas、162.0 × 130.3 × 4.5cm
また、作品タイトルを観ていると園芸や花に関連する言葉を用いているのが分かります。

IRIS:アイリスというアヤメ属の植物のこと。青い花を咲かせる。
GARDEN:庭園のこと。
NARCISSUS:スイセンというスイセン属の植物のこと。白と黄の花を咲かせる。

花の咲く植物は、世界中で約20万種もあるといわれています。

多種多様な花の中からひとつの園芸や花の言葉を選ぶことは、ある種の移り気な散漫さを表しているのかもしれません。

立体作品「THE HOUSE」

《THE HOUSE 2》
2019、toy house,urethane foam,spray,glitterpearl、280.0 × 70.0cm
家の形をしたおもちゃからモコモコとした泡が流れ出ているような作品。

作品の素材に使われているのは発泡ウレタンというもので、空気に触れることで泡が発生し、液体から個体に変わっていく特性があります。

《THE HOUSE 3》
2019、toy house,urethane foam,spray,glitter、70.0 × 50.0cm
ラメの入った鮮やかな色の家からが内面を吐き出す様子は、夏の空に広がる入道雲のように層を成しているように見えます。

思春期の成長の早さに身体と心が追いつけず溢れだしてしまっているようにも見えます。

《THE HOUSE 11(ultramarine blue)》
2021、pigment on bronze、14.0 × 16.0cm

家には子どもから大人になるまでの喜怒哀楽の思い出が詰まっている場所だと思います。

耐え切れずに溢れだしてしまうほどのものだったとしても、家本体はどっしりと構えたまま、変わらず在り続けてくれています。

変わる部分と変わらない部分の両方があるから感情は成り立っているのかもしれないなと、作品を観ながら感じました。

平面作品「KFC」

《KFC 2(Gold)》
2021、reticular print,wood flame、(frame)228.0 × 119.0cm
観る角度によって見えるものが変わる作品。

レンチキュラーという、かまぼこ状のレンチキュラーレンズに印刷をし、平面でも3Dのような立体感や奥行きを出し、角度を変えると絵柄が変化する技術を用いています。

キャンディー、猫といった幼児性のあるモチーフを焼き払うように炎のイメージが重ねられており、村上由鶴氏はこれらの油野作品に「成長期の情緒不安定さの凝縮」を見出しています。

「この情緒不安定という大衆性は、油野の作品をアクチュアルに感じることのできる足がかりとなるだろう。感動や怒り、悲しみといった派手な感情ではなく、油野の作品世界に充満する散漫で移ろいやすい気分の中にこそ、いきるわたしたちのリアイリティがあるのだ。」
(村上由鶴「油野愛子作品集に寄せて」)

大人になると感情を感じたとおりに表現できるのがうらやましくなる時がありますが、成長期の頃は大人のスマートさに憧れる自分がいたなと、その移ろいを思い出す作品でした。

展示風景はオンラインビューイングで鑑賞可能

展覧会の作品はオンラインでも鑑賞することができます。

スケール感や質感までは掴みたい!という方は、次回の展覧会で作品をご覧ください。

まとめ|多様な素材と表現で記憶を刺激する

油野さんの個展の模様をまとめました。

僕自身初となる油野さん作品鑑賞でした。

素材の特性を活かしながら完成度の高い作品をしていて、視覚から自分の記憶を刺激するような作品でした。

また、素材の特性を表現に変換する点も、どこか自由研究をしているようで懐かしい気分になるところがありました。

展示会情報

展覧会名When I’m Small / 小さかったころ
会場小山登美夫ギャラリー
東京都港区六本木6丁目5−24 complex665 2F
会期2021年10月1日 (金)~10月16日 (土)
※日、月、祝休廊
開廊時間11:00~19:00
サイトhttp://tomiokoyamagallery.com/exhibitions/yuno2021/
観覧料無料
作家情報油野愛子さん|Instagram:@aiko__yuno
ABOUT ME
よしてる
東京でアート巡りををしながら「アートの割り切れない楽しさ」を探究している理系男子です。会社員をしながら、週末アートウォッチをしています。 2021年から無理のない範囲でアート作品の購入も始めました。 好きな動物はうずら。

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