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山口真人「SELFY」展|どこまでがありのままの姿か再考する

こんにちは!よしてる(@uzuraism_)です。

今回は原宿にある「SH GALLERY」にて開催した山口真人さんの個展「SELFY」の模様をご紹介します。

この記事を読むとこんなことが分かります。

・山口真人さんとその作品を知れる。
・作品コンセプト「トランスリアリティ」について知れる。
・SNS(InstagramやTikTok)を通した表現の持つ曖昧さに気づける。

今回の個展では、まるでInstagramやTikTokの画面をみているような作品や、自撮りをした女性像をアート作品にしたものを展示していました。

今を生きる人たちにとってもなじみ深いSNSがアートになった作品をご紹介していきます。

山口 真人さんとは?

山口真人(やまぐち まさと)さんは、東京生まれのアーティストです。

法政大学を卒業後、2008年にアート&デザインスタジオ「アイデアスケッチ」を設立。

企業のVI、CI、アートディレクション、グラフィックデザイン、WEB、映像制作を手がけ、APOGEE、椎名林檎、Rocketmanなど、音楽関係のアートワークやPV制作もされていたそうです。

2011年からアートワークとして「Plastic Painting」シリーズの制作を開始し、以降もアート作品の制作をされています。

アートは独学で試行錯誤しながら制作されていたところから、今年からSH GALLERYにも所属され活動の幅をさらに広げています。

(参考:山口真人さんBiography

YouTubeからも現代アートを発信

山口さんの特徴的な取り組みのひとつとして、YouTubeでの現代アートについての解説や考察動画を投稿されていることがあげられます。

今回の個展でもYouTubeを観て来られる方も多いようで、僕自身、山口さんを知るきっかけになったのもYouTubeチャンネルでした。

ギャラリーでアーティストと話さない限り、「作家が何を考え、アートと向き合い、自身のアート作品を制作しているのか」を知る機会はなかなかありません。

YouTubeを通してアートが言語化されることで、初めて現代アートに触れる人にとっても「そう解釈するんだ!」という、発見の場になると思います。

ちなみに、僕自身が初めて観た動画がこちらでした。

グラフィティで有名なバンクシーについての動画で、

「なぜバンクシーが評価されているのか」
「公共の場にグラフィティ作品を描くのか」
「グラフィティがなぜアートになるのか」

を整理し分かりやすく解説されています。

山口さん自身の考察にも触れられるので、アーティストを知るという意味でもおすすめのコンテンツです。

作品コンセプト「トランスリアリティ」

山口さんの作品コンセプトは「トランスリアリティ」というものです。

トランスリアリティとは、例えばSNSや動画サービスサイト、AIによって生成される仮想イメージなど、相手の姿形や存在自体を実際に確認していないにも関わらず、そこにリアリティを覚える感覚のことをいいます。

虚像性と実在性の同居が現代の私たちに共通する特徴の一つであり、その造形化によって私たちが無防備に信じている世界の姿、私たち自身の存在にまつわる認識に再考を促しています。

現代をネットとリアルの両輪で生きている自分たちにとってのアイデンティティのあり方を、絵画という形態から模索し、造形化されています。

(参考:山口真人さんBiography

山口真人さん「SELFY」の作品を鑑賞

今回の「SELFY」は、SH Gallery に所属後初となる個展になりました。

「トランスリアリティ」を掲げた作品のなかでも特徴的な、女性を描いた「SELFY」シリーズが一同に展示される初めての試みとなっています。

それでは、InstagramやTikTokに映る「自撮り(SELFY)」のイメージをカットアップした作品展示の模様を観ていきましょう!

スマホでスワイプしているような縦長作品

スマホの画面でInstagramの投稿欄を見ているような構図の作品。

右下の四角いマークから、Instagramの画像表示を切り取っているのかなと予想できます。

中央の女性の顔には涙が描かれていて、黄色く強調されています。

右目を前に突き出すように自撮りをしているようで、涙を見て!と言わんばかりの構図は、その涙は本当の感情由来か、何かを意図してのものなのか、はっきりと判断できません。

時に涙はリアルですら真偽が分からない場合があるもので、SNS上で見るとより涙を通した感情の境界線が曖昧に見えます

そういう意味で、現実と虚像の曖昧さを強く感じる作品でした。

猫耳の作品

《I know what U want *TF》
2021、Acrylic on canvas、80.3 × 80.3 cm

正方形のキャンバスがどこかInstagramの投稿写真のようにも見える作品。

凛とした表情に日本のクールさを感じつつも、猫耳やひげをつけて映えるワンシーンにする現代を生きる人の今を切り取ったように見えます。

山口さんは中学の終わりのころに渋谷系に感化され、高校に入ったころからアンディ・ウォーホルなどの現代アートの世界に関心を持ったそうです。

一番はじめに表現について学んだことは、「人の作品を再解釈して自分の作品を作る」ことだったとか。

自撮りした写真を保存したり、リアルよりも映えるように加工してSNSに投稿したりするといった、もはや日常の一部になっている行動をひとつの文化として、アートにしているように見えます。

そして、文化として海外にも発信力をもつ可能性のあるものを、アートで再構築しているような印象を受けました。

首をかしげた女性

《This is our story》

縦長の似た作品が2つ並べられた作品。

よく見ると、左の女性よりも右の女性の方が右耳が映り込んでいて、首を深くかしげていることが分かります。

画面いっぱいに使った絵画はスマホ画面のようで、24時間限定で公開できるストーリー機能を彷彿とさせます。

SNS上には24時間限定しか表示されない画面を絵画として長く保存できるようにしているようです。

制作過程でつくる小型作品のエディション作品

《Welcome to the fantastic magical moment *EDITION》
2021、Spray on paper、26 × 26 cm(29.7 × 42 cm)

まるで夢の国の被り物をしているかのような作品。

撮影した写真をカメラアプリで簡単に加工できるようになった今、リアルで装飾品を被らなくても、画像の中だけで表現できてしまいます。

リアルな場にいなくても画像の中の一瞬だけは魔法をかけられる様子を表しているように感じました。

この作品に限らず、どの原画作品についても完成イメージの確認のため一度ステンシルによる小型による試作をするのだそうです。

試作段階のものとはいえ制作方法は原画と一緒で、使用している材料が異なるミニチュア原画みたいだなと感じます。

この作品は抽選販売もされていて、サイズもちょうどA3サイズと既製品の額でも収まりやすいサイズになっており、手頃に作品を家に飾りたい人にとっても優しい作品でした。

まとめ|どこまでが「ありのままの姿」なのかを再考する

山口さんの個展「SELFY」についてまとめました。

自撮りした女性像を描いた作品群を観て感じたのは、「どこまでがありのままの自分/相手の姿なのか」ということです。

日常生活を装飾して表現できるSNSは、本来自分が表現したい姿を容易に投影できる機能が充実してきています。

ただ、SNSから情報を受け取る側にとっては画面に映った情報がすべてで、リアルなその人をどこまで把握できるものだろうかとも感じます

SNSのもつ現実と虚像が重なり合った曖昧な状態を改めて考えるきっかけになる展示でした。

展示会情報

展覧会名山口 真人「SELFY」展
会場SH GALLERY
東京都渋谷区神宮前3-20-9 WAVE ビル3F
JR原宿駅徒歩5分
会期2021年7月16日(金)~7月31日(土)
開廊時間12:00~19:00
月曜日 休廊
サイトhttps://www.shartproject.com/news/masato-yamaguchi-solo-exhibition-2107/
観覧料無料
作家情報山口 真人さん
HP|https://plastic.tokyo/
Instagram|@yamagch
twitter|@yamagch
YouTube|山口真人 – 現代アートチャンネル

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ABOUT ME
よしてる
東京でアート巡りををしながら「アートの割り切れない楽しさ」を探究している理系男子です。会社員をしながら、週末アートウォッチをしています。 2021年から無理のない範囲でアート作品の購入も始めました。 好きな動物はうずら。

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