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コレクション展「BUSY BEE」鑑賞レポート|世界で活躍する国内外12作家のアート作品を一堂に観る

よしてる
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日本ではなかなか直接目にするチャンスがない、世界で活躍する国内外作家の作品。そんな貴重な作品を国内にいながら鑑賞できるコレクション展をレポート!

今回は六本木のフィリップス東京にて開催したコレクション展「BUSY BEE」の模様をご紹介します。

コレクション展「BUSY BEE」とは?

「BUSY BEE」展示風景(フィリップス東京)

「BUSY BEE」とは、著名コレクターによるコレクション展です。日本だけでなく、世界各地へ足を運び作品と出会い、アーティスト、ギャラリー、コレクターと意見を交わし作り上げたコレクションの中から、厳選した作品を展示しています。

日本で目にする機会の少ない作家や作品を中心に構成された展示の中には、日本初公開の海外作家が3名もいるそうです。

気軽に旅に行きづらくなっている昨今、海外を巡るように世界で活躍する12作家、20作品を鑑賞できる貴重な機会となっています。

世界で活躍する作家とその作品を鑑賞

今回は展示作品のうち、8名の作家による作品をご紹介します。

どの作品も国内で鑑賞できる機会が少なく、リアルだからこそ味わえる質感、香り、雰囲気があります。ぜひ会場にも足を運んでみてください。

Johanna Dumet

展示スペースに入って最初に目にするのが、フランス・ゲレ出身の作家 Johanna Dumet(ジョアーナ・デュメ)さんの4m以上もある大作です。今回の展示が日本では初のお披露目となるそうです。

横長のテーブルの上にはムール貝やえび、ウニ、クラブなどの豪勢な料理とボトルが大胆な色彩で描かれています。

お皿やグラスに見られる食事の痕跡からゲストの存在を感じさせ、イスの距離感から親しい人と過ごした享楽的なひとときであったことが伺えます。そして、会場で鑑賞するとわかりますが、目線の高さがちょうど料理に合うようになっていて、鑑賞している自分自身もその場に参加しているような感覚になります。

パンデミックによる制限があったことから、豪華な食事を囲んで宴をする喜びや親しい人との時間の大切さをより感じさせる作品です。

Johanna Dumetとは?

Johanna Dumet(ジョアーナ・デュメ)さんは1991年生まれ、フランス・ゲレ出身の作家です。ファッションデザインを学んだ後にバルセロナへ引っ越し、絵画を描くようになります。

ポートレート、静物、動物、自然など、時代を超越した古典的なテーマに、大胆な色彩の作品を制作しています。

Instagram:@johanna_dumet

Shara Hughes

こちらはアメリカ・ジョージア州出身の作家 Shara Hughes(シャラ・ヒューズ)さんの作品。緑と焦げ茶のトーンで表現された2つの大きな細長いものが、青空と砂漠のように見える場所に描かれています。

浮遊感のある色彩とエネルギッシュなマークメイキングで描かれた風景は、砂漠という観点から見るとサボテンのように見えたり、抽象化された人間の姿を表しているようにも見えます。

過酷な環境下でも生き残るものの偉大さ、力強さを感じる一方で、環境変化に対応していかなければ生存していけない厳しさも感じ取れます。

現実にありそうな景色のようにも、別世界の何かにも見えてくる、幻想的な作品です。

Shara Hughesとは?

Shara Hughes(シャラ・ヒューズ)さんは1981年生まれ、アメリカ・ジョージア州出身の作家です。2004年ロードアイランド・スクール・オブ・デザインでBFAを取得後、2011年にSkowhegan School of Painting and Sculptureに進学されています。現在はブルックリンを拠点に活動しています。

万華鏡のような風景から複雑な描写の風景まで、明るく華やかな色調で作品を制作しています。

Instagram:@sharalynne

Jerrell Gibbs

男の子が川辺で読書をしながら寝そべっているワンシーンが描かれた、アメリカ・メリーランド州出身の作家 Jerrell Gibbs(ジェレル・ギブス)さんの作品。ほのかで温かみのある背景には二葉跳開橋が開き、一隻の船が出航していく様子が描かれています。

手元にある本が透けるように描かれいるのが印象的で、本当に書籍を持っているのかどうか考えてしまいます。

仮に本を持ってなかったとしても、読書をするように余暇を楽しむ日常が映し出されているようで、二葉跳開橋や船出の様子が読書を通じた別世界への思考の旅の模様を強調しているようです。

ブラックアートの多くは抑圧や人種差別について描かれることが多いそうですが、ジェレル・ギブスさんの作品からは人間性や何気ない日々の輝きが映し出されているように感じます。

Jerrell Gibbsとは?

ジェレル・ギブズさんは1988年生まれ、アメリカ・メリーランド州出身の作家です。メリーランド・インスティチュート・カレッジ・オブ・アート(アメリカ)で修士号を取得されています。

黒人のアメリカ人の生活を捉えたソウルフルなポートレート作品を制作し、緩やかで流動的な筆致を通じて深い感情や黒人文化、経験のさまざまな情景を映し出しています。

Instagram:@jerrellgibbs

Toyin Ojih Odutola

ボールペンと鉛筆で描かれた肖像画は、ナイジェリア・イフェ出身の作家 Toyin Ojih Odutola(トイン・オジー・オドゥトラ)さんによる作品です。

ボールペンと鉛筆で描かれたドローイングは遠近感が見事に表現されていて、特に人物の皮膚はまるで細胞や組織の躍動まで描かれているようで、緻密さを感じます。

見る解像度を上げ、皮膚の色ではなく人間の持つ皮膚の豊かな質感に焦点を当てているようで、まるで生命のトポグラフィーのような趣があります。

Toyin Ojih Odutolaとは?

Toyin Ojih Odutola(トイン・オジー・オドゥトラ)さんは1985年生まれ、ナイジェリア・イフェ出身の作家です。2008年にアラバマ大学ハンツビル校でスタジオアートの学士号を取得後、2012年にサンフランシスコのカリフォルニア芸術大学にて修士号を取得されています。現在はニューヨークを拠点に活動しています。

トイン・オジー・オドゥトラさんは特に、肌の色に関連する社会政治的なアイデンティティの問題を探求しています。初期作品は主に黒のボールペンで描かれ、美的な印象と同時に思考を刺激する、深いレイヤーのアプローチを見せています。

Instagram:@toyinojihodutola

Hernan Bas

異世界を冒険しているような、静けさの漂う独特な雰囲気を放っていたのが、アメリカ・フロリダ州出身の作家 Hernan Bas(ヘルナン・バス)さんの作品です。

扉を開けた瞬間に煌めく風が流れ出てきているような、幻想的な瞬間を捉えているように見えます。

未知な場所へも気後れせず、好奇心を持って勇敢に足を踏み入れる、思春期の冒険を思い起こさせてくれます。

未知の領域に踏み込むことの楽しさと、異世界の奇妙さを感じさせる作品です。

Hernan Basとは?

Hernan Bas(ヘルナン・バス)さんは1978年生まれ、アメリカ・フロリダ州出身の作家です。現在はマイアミを拠点に活動されています。

若者の思春期の冒険と古典詩、宗教、神話、超自然現象、文学を織り交ぜた、幻想的または超現実的な作品を制作しています。

Instagram:@hernanbas

George Condo

幾何学的なパーツが組み合わさっているような特徴的な肖像画は、アメリカ・ニューハンプシャー州出身の作家 George Condo(ジョージ・コンド)さんによる作品です。

歴史的な肖像画にも登場しそうな構図でありながら、ジョージ・コンドさんの作品の特徴である人間の形を歪ます表現からは、歴史的表現による高貴さと、独特の奇妙さ、醜さが絶妙なバランスで混在しています。

作品を観ていると、人間の美と醜の関係について考えさせられます。

影があるから光が強調されるように、人間にも美の仮面の裏側には時に醜いものがあり、醜い仮面の裏側には時に美しく、謙虚で魂のこもったものがあります。

作品を通じて、独特な奇妙さの裏側にある、人間が持つ本当の美を見ているようでした。

George Condo とは?

George Condo(ジョージ・コンド)さんは1957年生まれ、アメリカ・ニューハンプシャー州出身の作家です。現在はニューヨークを拠点に活動しています。

現代的なキュビズムの構図や絵の具の使い方においてパブロ・ピカソさん(Pablo Ruiz Picasso、1881 – 1973、スペイン)を明確に引用していることが多く、従来の具象肖像画のようでいて、その表情は歪みや幾何学的な要素があるのが特徴的です。

こうした作品をジョージ・コンドさんは「psychological cubism(心理的キュビスム)」と表現することが多いです。

Instagram:@george.condo

名和晃平

展示作品は海外の作家が多い中、世界で活躍する日本人作家の作品も展示していました。

こちらの作品は名和晃平さんによる、動物の剥製の表皮を球体のビーズで覆った《PixCell》シリーズの作品です。

岩場のような台座を含めてビーズで覆われたバンビは光を反射して、心地よい輝きを放っています。ビーズを通じてバンビの毛並みも見えてきます。

アナログな存在がビーズによって触れられない存在となっているところに、デジタル化した現代を象徴しているよに思えます。

名和晃平とは?

名和晃平(なわ こうへい)さんは1975年生まれ、大阪府出身の作家です。1998年に京都市立芸術大学美術科彫刻専攻を卒業し、2003年に京都市立芸術大学大学院美術研究科博士(後期)課程彫刻専攻を修了されています。

彫刻の表皮に着目し、肉眼では捉えられない細胞(セル)を大きくしたような粒で全体を覆い、情報化時代を象徴する《PixCell》シリーズで有名です。他にも、生命と宇宙、感性とテクノロジーの関係をテーマにした作品など、彫刻の定義を柔軟に解釈し、鑑賞者に素材の物性がひらかれてくるような知覚体験を生み出しています。

Instagram:@nawa_kohei

ロッカクアヤコ

2006年のロッカクアヤコさんの作品も、事務所スペースに展示していました。ギャラリーの方に聞くと、案内いただけます。

近年の作品は背景もカラフルに彩られているものが多い中、この作品は女の子のポートレートに色彩が集まっているような印象があります。

2006年といえば、ロッカクアヤコさんが村上隆さん主催のアートイベント「GEISAI」でスカウト賞を受賞された年で、ヨーロッパで作品が紹介され始めていく時期です。

ロッカクアヤコさんの歴史や過程がコレクションされているようで、時代別に作家の作品を楽しむことの魅力も感じることができます。

ロッカクアヤコとは?

ロッカクアヤコさんは1982年生まれ、千葉県出身の作家です。グラフィックデザインの専門学校イラストレーション科に通った後、2002 年から芸術家としてのキャリアをスタートし、独学で絵を描きはじめています。

下書きをすることなく手指でペインティングする独自の手法で一気に書き上げるスタイルで、主に大きな目をした女の子をモチーフにした作品を制作しています。最近では時間制限によるエディション作品を制作したことでも話題となりました。

Instagram:@rokkakuayako

まとめ

「BUSY BEE」展示風景(フィリップス東京)

コレクション展「BUSY BEE」を鑑賞していきました。

国内をメインにアート鑑賞やコレクションをしていると、特に海外作家の作品に触れる機会がなかなかありません。

本来なら海外へ赴き、観にいかなければ出会うきっかけもない作品たちを、コレクション展を通じて日本にいながら鑑賞できる機会があることは、とても貴重なことです。

今回の展示をきっかけに初めて知った作家もいて、作品を観るほどに刺激的な気づきを得れる、眼福なひとときでした。

世界で活躍する作家が時間をかけて築いてきたものを作品を通じて感じられる稀有な機会を、現地で楽しんでみてはいかがでしょうか。

展示会情報

展覧会名BUSY BEE
会期2023年3月11日(土) 〜 2023年3月31日(金)
開廊時間10:00 〜 17:00
定休日土曜、日曜、祝日
※3月11日(土)のみ土曜開催あり
サイトhttps://www.phillips.com/
観覧料無料
作家情報Johanna Dumet(ジョアーナ・デュメ)さん|Instagram:@johanna_dumet
Jerrell Gibbs(ジェレル・ギブス)さん|Instagram:@jerrellgibbs
Shara Hughes(シャラ・ヒューズ)さん|Instagram:@sharalynne
Toyin Ojih Odutola(トイン・オジー・オドゥトラ)さん|Instagram:@toyinojihodutola
Hernan Bas(ヘルナン・バス)さん|Instagram:@hernanbas
名和晃平さん|Instagram:@nawa_kohei
ロッカクアヤコさん|Instagram:@rokkakuayako
会場フィリップス東京(Instagram:@phillipsauction
東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル 4F

最新情報はInstagramをチェック!

ABOUT ME
よしてる
1993年生まれの会社員。東京を拠点に展覧会を巡りながら「アートの割り切れない楽しさ」をブログで探究してます。2021年から無理のない範囲でアート購入もスタート、コレクション数は25点ほど(2023年11月時点)。
アート数奇は月間1.2万PV(2023年10月時点)。
好きな動物はうずら。
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