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MAKERS SPACE×山口真人「stay pixelated」|デジログの境界線をみるアート

よしてる
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今回は原宿 神宮前にあるSH GALLERYにて開催したMAKERS SPACEさんと山口真人さんのコラボ展覧会「stay pixelated」の模様をご紹介します。

SNSや画面越しに相手を見る機会が増えた現代をテーマにした作品を観ていきましょう!

MAKERS SPACE × 山口真人のコラボ展覧会が開催

MAKERS SPACEとは?

MAKERS SPACEさんは国籍不明のアーティストで、フランスのギャラリー「Gallery Joyana」に所属されています。身元や名前は公表していないアーティストです。

強い色彩のピクセルにインスピレーションを受け、ソーシャルメディア上で人々がピクセル化する「Pixelation」という写真シリーズから制作を始めています。現在はカラフルなピクセルを用いて、現代の世界がSNSを通じてピクセル化していく様子をキャンバスや彫刻で表現しています。

「生活が過度に露出されているのにもかかわらず、私たちはピクセル化されることでプライベートでありたいと願っている」という現代の問題に焦点を当てています。

(参考:Gallery Joyana|Makers Space

山口真人とは?

山口真人(やまぐち まさと)さんは1980年生まれ、東京都出身のアーティストです。90年代渋谷系・グラフィティの影響を受けグラフィックデザイナーとして活動し、2011年からアートワークとして「Plastic Painting」シリーズの制作を開始、以降もアート作品の制作をされています。

山口真人さんは現代に生きる私たちのアイデンティティのあり方を絵画という形態から模索し、造形化されています。例えば、SNSや動画サービスサイト、AIによって生成される仮想イメージなど、 相手の姿形や存在自体を実際に確認していないにも関わらず、そこにリアリティを覚える感覚を『トランスリアリティ』と名付け、これをコンセプトとした作品制作を2019年から展開しています。

虚像性と実在性の同居が現代の私たちに共通する特徴の一つであると指摘し、その造形化によって私たちが無防備に信じている世界の姿、私たち自身の存在にまつわる認識に再考を促しています。

(参考:SH GALLERY|MASATO YAMAGUCHI [ ARTIST INFO ]

展覧会タイトル「Stay Pixelated」の意味

展覧会タイトルの「Stay Pixelated」とは、MAKERS SPACEさん自身を示すキャッチフレーズでもあるそうです。“Pixelated”とは「デジタル動画などにおいて、不具合やビットレート不足により正方形状または長方形状の平板な小領域が画面上に発生している状態」を指します。つまり、“Stay Pixelated”とは「ビットレートが足りない動画のような少しバグっているよう」という意味合いをもっています。

デジタルデータが予測不能なブロックノイズを発生させるように、私たちは時折なにかが足りず、感情に揺れ、不合理な行動を起こすことがあります。こうした不合理な感情をポジティブに肯定し、愉快なポップイメージに置き換え作品を展示しています。

2021年の山口真人さん個展がコラボのきっかけ

今回のコラボは2021年の夏に開催した山口真人さんの個展「SELFY」がきっかけで決まったのだそうです。

MAKERS SPACEさんと山口真人さんのコンセプトは「SNS的なデジタルワールドとアナログが交差する曖昧な世界観を描く」という意味で一致し、コラボの話も自然と生まれたのだそうです。

コラボレーションの計画はとても自然に進み、MAKERS SPACEと僕のビジュアルは最後に残った二つのパズルを繋げるぐらい簡単にイメージをすることができた。スタジオでプロジェクターをカスタムキャンバスに映し、2人で簡単なシミュレーションをした時に、間違いなく「ヤバい」作品ができることを確信していた。
・・・これらのコラボレーション作品はデジタルと現実世界のあやふやな繋がりを抽象と具象の両方の手法から表現している。いい意味で何が本当か嘘かわからない、不安定で加速度的な2020年代を象徴した、最高にポップな作品が生まれたと思う。

SH GALLERY|Upcoming Exhibitionより引用

表現しているテーマに親和性もあり、2人の手で紡がれた新たな世界観を楽しめる展覧会となっています。

そして以下のコメントが、画面上で生まれるエラーと今生きている風景とを照らし合わせた見え方のヒントになるように感じます。

“Stay Pixelated” はエラーを楽しむ魔法の言葉なのかもしれない。いつも私たちの世界ではビットレートが不足して、誰かの手のひらのスマートフォンにブロックノイズを発生させている。ニック・ボストロムのシミュレーション仮説によれば私たちの世界は映画マトリックスのようなシミュレーテッド・リアリティの中に存在しているらしい。本当のところはよくわからないが、もしそれが本当だとしたら。私たちの世界はたまにビットレートが不足していて、カラフルなピクセルが世界に溢れているのかもしれない。

SH GALLERY|Upcoming Exhibitionより引用

山口真人さんの個展「SELFY」についてはこちらでレポートしています。

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展示作品を鑑賞

それでは、展示作品の一部をご紹介していきます。

MAKERS SPACEさん × 山口真人さんコラボ作品

Stay with you pixel – 147*1

《Stay with you pixel – 147*1》
MAKERS SPACE × 山口真人、2022、159.8 × 115.1 × 4.7cm、Acrylic on panel

ギャラリーに入ってすぐに現れる作品です。鏡を前にした女性がスマホで自撮りをしているような構図になっています。パーカーの下の方には展覧会タイトルである「Stay Pixelated」が筆記体で書かれています。

その撮影中にバグが発生したのか、目元以外の顔を覆い隠すように大きなピクセルが拡散しています。その拡散スピードを表すように画面外へピクセルが飛び出しています。

予測不能なブロックノイズが画面上で発生するように、ヒトの感情も安心できる情報をインプットできず、不合理な行動に変換されてしまうことがあります。そんな「情報に踊らされる状況」を感じる一方で、それをポップな色彩のピクセルで描くことで不合理な行動をポジティブに捉え、前進を促してくれているようでした。

Stay with you pixel – 70

《Stay with you pixel – 70》
MAKERS SPACE × 山口真人、2022、143.8 × 108 × 5cm、Acrylic on panel

ピクセルによるブロックノイズが周りを囲み、女性の姿がほぼ分からない状態になっている作品。数えてみると分かりますが、タイトルの“70”はこのピクセルの数を表しています。

モチーフとなっている女性はおそらく先の作品と同じパーカーを被った女性だと思いますが、ピクセルがその確実な情報を見せないようにしているようです。SNSやデジタル上のものごとはこの作品のように、見せたくない部分はあえて見せず、知ってほしい部分だけを魅せている場合があります。そんなデジタルとリアルの境界線が曖昧になっている様子が描かれているようでした。

MAKERS SPACEさんの作品

コラボ作品以外にも、お二人それぞれの作品も展示していました。

pixel – 220

《pixel – 220》
MAKERSPACE、2022、55.8 × 84 × 7.7cm、Acrylic on panel

パネルにピクセルをいくつも描いた作品。一部ピクセルが飛び出している箇所も見受けられます。

どんな景色、またはヒトをピクセル化しているのか、解像度が粗すぎて分からない状態になっています。「SNSに知ってほしいことを投稿するけれど、プライベートな部分はしっかりと隠したい」という、日常的に起こる状況を表しているように見えました。

pixel – 260

《pixel – 260》
MAKERSPACE、2022、15 × 16 × 13cm、Acrylic on wood

ピクセルを積み木のように重ねた立体作品も展示していました。ピクセル同士が重なり合っている部分もあったり、ピクセルのない空間を生んでいる部分もあったりします。

ブロックノイズは本来画面上で起こるものだと思いますが、それが三次元で表現されることで、現実世界の小さなバグのようにも見えてきます。そう考えると、映画マトリックスのようなシミュレーテッド・リアリティの中に生きているのかもしれないと錯覚してしまう作品です。

山口真人さんの作品

Stay with you WH*1

《Stay with you WH*1》
山口真人、2022、145.5 × 89.4cm、Acrylic on Canvas

山口真人さんの作品も展示していました。モチーフは他作品にも登場している、パーカーを被った女性のようです。そして、左手におさまったスマホカバーは手に隠れつつも「TRUE/FALSE」と書かれているように見えます。

まるでスマホの画面が、現実世界と仮想世界の境界線のようなメッセージを発しているようです。

また、パーカーのフードを被っている様子から、フードを被っている自分というアイコンをSNSの中で“作って”いるのかもしれないと感じました。隠したいという感情はときに、何かを創造し何かを生み出す可能性も秘めているのかもしれません。

まとめ:デジタルとアナログの境界線に生まれるピクセル

MAKERS SPACEさんと山口真人さんのコラボ展覧会を鑑賞してきました。先行きの見えないVUCA時代と呼ばれるようになった昨今、その不安をただネガティブに受け止めるのではなく、ポジティブに解釈している印象を感じる展覧会でした。

また、SNSの中の自分と現実世界の自分、それぞれで見え方は異なるかもしれませんが、乖離しすぎない程度に自己表現の幅を広げることが、新たな創造性を生むきっかけにもなるのではという発見もありました。

展示会情報

展覧会名stay pixelated
会場SH GALLERY (Instagram:@sh_gallery_tokyo
東京都渋谷区神宮前3-20-9 WAVEビル3F
会期2022年1月15日(土)~1月29日(土)
※休廊日:月
開廊時間12:00~19:00
サイトhttps://www.shartproject.com/news/stay-pixelated-makers-space-x-masato-yamaguchi_202201/
観覧料無料
作家情報MAKERS SPACEさん|Instagram:@makers__space
山口真人さん|Instagram:@yamagch

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他展示での山口真人さん作品はこちら

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ABOUT ME
よしてる
1993年生まれの会社員。東京を拠点に展覧会を巡りながら「アートの割り切れない楽しさ」をブログで探究してます。2021年から無理のない範囲でアート購入もスタート、コレクション数は25点ほど(2023年11月時点)。
アート数奇は月間1.2万PV(2023年10月時点)。
好きな動物はうずら。
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