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グループ展「交差点-いま、ここからの-」|アートと振り合うも多生の縁

Bunkamura Gallery
よしてる
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今回は渋谷にあるBunkamura Galleryにて開催した小松 美羽さん、小松 孝英さん、奈良 祐希さん、小野川 直樹さん、絹谷 香菜子さん、やました あつこさんによるグループ展「交差点-いま、ここからの-」の模様をご紹介します。

この記事を読むとこんなことが分かります。

  • 渋谷Bunkamura Galleryで開催中の展覧会について知れる
  • 小松 美羽さん、小松 孝英さん、奈良 祐希さん、小野川 直樹さん、絹谷 香菜子さん、やました あつこさんについてとその作品を知れる

一歩会場に踏み込むと、繊細なものから大胆な表現まで、多様なアートの形に出会うことができます。どんなことを表現している作品なのか、鑑賞しながら言葉にしてみました。新たなアートとの出会いのきっかけになったら嬉しいです。

「交差点-いま、ここからの-」展覧会のテーマ

本展覧会のタイトル「交差点」には、作品と人はもちろん、作家同士、作家とコレクター、コレクター同士といった、あらゆるものが重なり合う場という意味が込められているそうです。

伝統 × 現代アートで革新をもたらす新たな価値観を発信する作品や、Z世代(概ね1990年代中盤から2000年代終盤までに生まれた世代)が生み出す新作も鑑賞できます。

「交差点-いま、ここからの-」Part1の展示作品を鑑賞

会期中は前半と後半で作品の入れ替えがあり、合わせると総勢14名のアーティストとその作品に出会うことができます。今回は、前半の6名のアーティストの作品を鑑賞してきました。

やましたあつこ

入口から入って最初に目に入るのが、やましたあつこさんの作品です。

やましたあつこさんは愛知県生まれのアーティストです。2018年に第4回CAF賞入選や、シェル美術賞 藪前知子審査員賞を受賞されています。また、パブリックコレクションとして、2019には愛知県美術館に作品が収蔵されています。

作品には赤い髪をした少女や青い髪の天使がよく登場します。これは、やましたさん自身の内面でつむがれる物語で、ドローイングの⼿法を交えたペインティングによって描いています。

この物語を通して、「邪魔のない幸せな世界」を表現されています。

tree girl

《tree girl》
油彩,キャンバス、652 × 530mm

前回蔦屋銀座の作品を観て以来でしたが、今回の方が大きな作品で、ゆったりとした雰囲気が増しているような気がしました。

植物や鹿の角、花などのモチーフが描かれているのは、自然へ帰りたくなる、原始的な単純性の世界を求める心からくるモチーフなのかなと、想像していました。

《花》
油彩,キャンバス、652 × 530mm

赤い髪の天使が、口に赤い花を加えています。花と向き合っている女性は花の香りを楽しんでいて、自分にとっての幸せを見つけているようです。

都内にいるとつい急ぎ足になりがちだけど、自分にとって落ち着ける情景にただいるだけの時間も大事にしたいと感じる時間になりました。

小松孝英

小松孝英(こまつ たかひで)さんは宮崎県出身のアーティストです。

国内外のアートフェアに多数出品されていて、アートフェア東京にも2011年、2015年、2017年、2019年に作品展示をしています。国連生物多様性条約記念ミュージアムに作品が収蔵されています。

「九州から世界へ」を実践し生物多様性をテーマに、蝶々やカエル、鯉、鰻などの生物をモチーフとした作品を制作されています。

distance – 在外来種

《distance – 在外来種》
2021、小松孝英、キャンバス,アクリル,箔、652 × 910mm

表現をパッとみると日本画のように見えますが、画材は岩絵具ではなく、アクリルを用いているところに不思議な印象を受けた作品。さまざまな種類の蝶々が舞っていて、大小のサイズの違いから奥行きがあるように感じます。背景は方眼紙のような網目模様になっていて、まるで蝶々を捕まえた虫かごのように見えます。

虫かごの中に隔離する様子は、人にとっては遊びでも、蝶々たちにとっては生命の危機になり得ると思う半面、今の感染症と人の付き合い方の構図に似ているなとも感じました。

なお、中央にいるアゲハチョウの仲間、キアゲハだけ唯一分かる種類でした。

うなぎのぼり

《うなぎのぼり》
2020、小松孝英、キャンバス,アクリル,箔、1000 × 727mm

一直線に惹かれた縦の線は、滝をよりシンプルに描いたもののように見え、そこを5尾のうなぎが登っています。その下に13羽の蝶々が飛んでいます。

うなぎは川や湖などの淡水で成長し、海で産卵する「降河回遊魚(こうかかいゆうぎょ)」と呼ばれる魚で、うなぎのぼりは産まれたばかりのうなぎが移動している姿に見えます。

奈良祐希

奈良祐希(なら ゆうき)さんは石川県出身の陶芸家です。

アメリカやイギリス、フランス、香港など、海外での展示をされていて、東京都にある根津美術館に作品が収蔵されています。

作品制作以外にもデザインや建築も手掛けられています。

Bone Flower 20’21

《Bone Flower 20’21》
2021、奈良祐希、Ceramic、H325 × W280 × D260mm

「花の骨」というタイトルの作品は、陶芸でよく見る器型ではなく、あばら骨のように隙間を多く含んだ構造をしています。

この「隙間・あいだ」に焦点を当てた作品を制作し、0と1のようにくっきりと分けずに表現することで、その境界の中に今まで密かに隠れていた様々な場所を湧き上がらせています。

Bone Flower 24’21

《Bone Flower 24’21》
2021、奈良祐希、Ceramic、H290 × W260 × D260mm

奈良さんのホームページをみると分かりますが、この作品にはデジタルで描いてからアナログの陶芸作品にしています。作品と空間に境界線を引かずに、内側と外側を曖昧にすることで展示空間に同化しているようだなと感じました。

折り紙のように軽やかな陶芸作品でした。

小野川直樹

小野川直樹(おのがわ なおき)さんは東京出身のアーティストです。

折り鶴をモチーフとした作品制作をされていて、アクセサリー販売などもしています。

2019年には自身の美術館「naoki onogawa museum」を香川県小豆島にオープンしています。

Yurikago

《Yurikago》
2021、小野川直樹、ミクストメディア、W310 × D200 × H200mm

極小の白い折り鶴が木の葉のように何羽もとまっています。

その様子が、現代の千羽鶴の姿のようで、はばたこうと思えばいつでも飛べるけれど、自分の意志で留まっているように見えます。

rhapsody

《rhapsody》
2019、小野川直樹、ミクストメディア、W340 × D340 × H270mm

こちらは木の幹が金色の作品。紅葉の木のようにふんわりとした広がり方をしていて、秋の訪れを感じます。

折り鶴は何か想いを込めて折られることの多いイメージですが、その意志を届ける鶴一羽一羽が休む居場所をつくっているようにも見えます。

絹谷香菜子

絹谷 香菜子(きぬたに かなこ)さんは東京出身のアーティストです。

国内で多くの展覧会を実施していて、サロンドプランタン賞、安宅賞を受賞されています。

作品は動物をモチーフにモノクロームを基調とした水墨・日本画を制作されていて、生きていることを瑞々しく実感させてくれる動物たちの営みや、一瞬一瞬の表情に輝きとストーリーを見出し描かれています。

Noah’s Ark -Ocean-

《Noah’s Ark -Ocean-》
2020、絹谷香菜子、紙本彩色(和紙,岩絵具,墨)、1303 × 1940mm

クジラが船のようになって、古今東西の動物たちが乗っている作品。

黒背景もあってか、動物たちの表情がやや厳しそうな面持ちに見えて、自分の身は自分で守るからこその、「生きることそれ自体の強さ」を感じました。

Revival-Markhor

《Revival-Markhor》
2020、絹谷香菜子、紙本彩色(和紙,岩絵具,墨)、910 × 727mm

ヤギの仲間であるマーコールという動物を描いた作品。近くでみると毛並みの一本一本が丁寧に描かれていて、角も木の年輪のような層があり力強さを感じます。角からは蒸気のようなモヤが浮かんでいて、それが復活した象徴のように見えます。

マーコールは絶滅危惧種で、生息地域が紛争といった人の都合で狭くなったり、角を目的とした乱獲などで個体数が少なくなっています。

厳しい状況でも生きる強さとはかなさの両方を感じます。

小松美羽

小松美羽(こまつ みわ)さんは長野県出身のアーティストです。

2015年に、英国王立園芸協会主催(総裁はエリザベス女王)のガーデニングイベント「チェルシーフラワーショー」で一対の有田焼狛犬《天地の守護獣》を庭の守り神として展示し、この作品が大英博物館所蔵となり日本館に永久展示されています。

また、2018年銀座シックス1周年を祈念した屋上のガーデンでライブペイントでは、エレベーターが1時間待ちとなるほどになり、その人気が伺えます。

神獣や神々、もののけなどをモチーフとした作品を通して、独自の「死生観」や「神獣の世界」を描き出しています。

天命と共に魂の意志と知る

《天命と共に魂の意志と知る》
2021、小松美羽、パネル,キャンバス,アクリル、1310 × 1940mm

会場に入る手前、ガラス越しから鑑賞できる作品。中央にいる神獣は坐禅を組んでいるように見え、その周りには青と赤の狛犬が描かれています。自身の天命は普段意識する機会はないですが、それは坐禅のような自分と対話する時間を取れていないせいかもしれません。

ステイホームが続き自宅から動かなくなり自由時間が増えたように思いますが、何に使ったのかもはっきりしないまま気づけば消費している感覚があります。

神獣と一緒に、姿勢や呼吸、心をととのえているような気持ちになれる作品でした。

また、作品の脇にはこんな言葉も添えられていました。

深く瞑想に入った先に見えてくる各々が繋がった世界。
大地はしっかりと根を張り、宇宙を自由に駆け巡る。
望んだ世界は、すぐそこにある。

ー展覧会説明書きより引用

双の星の宿命を持つ神獣、そして門は開かれる

《双の星の宿命を持つ神獣、そして門は開かれる》
2019、小松美羽、パネル,キャンバス,アクリル、2273 × 1818mm

今回の展示作品の中でも特に大きな作品。先程の作品もそうですが、神獣の目は強調するかのように大きく描かれています。

小松美羽さんは制作する前に瞑想し、心を落ち着かせ、気持ちを切り替えてから制作をすすめていて、神獣を描く時には必ず最初に目の輪郭を作るのだそうです。

見方によっては、この目のくっきりとした描き方が怖いと感じる部分もあります。ただ、これは恐怖心を植えつけるためではなく、「どうか人を見放さないでいつまでも見守り続けてほしい」そんな意味が込められているようです。

作品の脇には、こんな説明書きがありました。

魂が求める清らかな道へと進む先に、突如として現れた門は開かれる。
2匹の神獣は宿命に忠実となり、あなたを誘う。

ー展覧会説明書きより引用

本心と向き合い、怖くても少しでも歩みを進めてみたとき、背中を優しく押してくれる存在がいることを教えてくれているようです。

まとめ:アートと振り合うも多生の縁

交差点を歩きいろんな人とすれ違うように、あらゆる表現と出会うきっかけになる展覧会でした。

普段は通り過ぎた人の顔は覚えていないものですが、展示会場ではパッと観たときについ立ち止まってしまうような作品と出会えるかもしれません。

袖振り合うも多生の縁というように、触れたアートと自分の間でおこる化学反応を楽しんでみてはいかがでしょうか。

展示会情報

展覧会名交差点-いま、ここからの-
会場Bunkamura Gallery
東京都渋谷区道玄坂2丁目24−1
会期Part1:2021年8月26日(木)~9月5日(日) ← 本記事はこの期間中のご紹介です。
Part2:2021年9月8日(水)~9月15日(水)
開廊時間10:00~19:00
※9/5(日)は17:00まで、9/6(月)は入れ替え日のため休廊
サイトhttps://www.bunkamura.co.jp/gallery/exhibition/210825kousaten.html
観覧料無料
作家情報【Part1】
小松 美羽さん|Instagram:@miwakomatsu_official
小松 孝英さん|Instagram:@takahidekomatsu
奈良 祐希さん|Instagram:@yuki__nara
小野川 直樹さん|Instagram:@naokionogawa
絹谷 香菜子さん|Instagram:@kanakokinutani
やました あつこさん|Instagram:@siatsuko
【Part2】
高橋 知裕さん|Instagram:@tomo.hiro0808
豊田 涼華さん|Instagram:@toyodasuzuka_
水戸部 春菜さん|Instagram:@cacco999
新宅 加奈子さん|Instagram:@_____.49
山田 康平さん|Instagram:@kumakuma0523
三浦 光雅さん|Instagram:@koga_miura2343
ナカ ミツキさん|Instagram:@nakamitsuki
仲 衿香さん|Instagram:@u_n_b

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ABOUT ME
よしてる
1993年生まれの会社員。東京を拠点に展覧会を巡りながら「アートの割り切れない楽しさ」をブログで探究してます。2021年から無理のない範囲でアート購入もスタート、コレクション数は25点ほど(2023年11月時点)。
アート数奇は月間1.2万PV(2023年10月時点)。
好きな動物はうずら。
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