ギャラリー

MAKI Collection「JAPAN」|日本の現代アートが集う展示空間

よしてる

今回は天王洲にあるMAKI Gallery 天王洲 I にて開催したMAKI Collection展覧会「JAPAN」の模様をご紹介します。

この記事を読むとこんなことが分かります。

  • 天王洲にあるMAKI Collectionについて知れる
  • 展覧会「JAPAN」展示作品について知れる
  • アートを通して現代をどう捉えていくのか再考するきっかけになる

会場は、多種多様なジャンルや年代の日本人アーティストの作品が集まる空間となっていました。ひとつひとつのアート作品がもつメッセージを受け取り、明日に活かしてみる、そんなコレクションの楽しみも疑似体験しながら、現代アートを観ていきましょう!

「MAKI Collection」とは?

MAKI Collectionとは、ギャラリストであり、アートコレクターでもある牧正大(まき まさひろ)さんが、これまでコレクションしてきたアート作品の一部を公開しているスペースです。

牧正大さんは美術作品の輸入販売会社で約3年修行をしたのち、アートディーラーとして26歳で独立され、30万円ほどの元手から事業を拡大された方です。「アートを鑑賞する」だけではなく、「アートをコレクションする」ことに焦点を当て、牧さんが長年に渡ってコレクションしてきた作品を、約半年おきに入れ替えて公開しています。

コレクター、アーティスト、ギャラリー、美術館の垣根を越え、それぞれの立場から「交流、議論、提案」を行うことを目指しているそうで、所属ギャラリーや国籍など利害に一切捕らわれることなく展示をしています。

日本では常設で個人のコレクションを見せる場があまりありません。自分の財産を見せびらかさないという日本独特の美徳の文化があるためだと思いますが、それが国内のアートマーケットが育たないネックのひとつでもあります。コレクターが作品を見せることで、作品を納めたアーティストもそこに集まるし、ほかのコレクターやギャラリストたちも集まり、そこにディスカッションが生まれる。そのような場所にギャラリーをしたい。その意味でも、コレクションを見せることは、僕の思想の体現ですし、僕なりのメッセージなんです。

美術手帖より引用

まるで古代ギリシャのアゴラのような、人が集まり、議論し、文化的な先進国となる発信地を目指しているようだなと感じます。

展覧会「JAPAN」について

展覧会「JAPAN」は、前回の展覧会「L.A.」に続き、MAKI Collection第2回目となる企画展です。

今回は日本人アーティストに焦点を当てたコレクション展となっていて、多種多様なジャンルや年代のアーティストで構成されています。

  • 厳格さや気品、奥深さや秩序など、この地のアーティストが潜在的にもつ厳かな空気感を放つもの。
  • 自然と都会を隣り合わせに、四季という移りゆく無限の彩で包んでいるこの地でこそ映しだされる色彩、光、影。
  • アイデンティティに富んだコンセプチュアルなものや日本由来のファッションやカルチャーを反映するもの。

さまざまな時代やジャンル、空気感を日本というくくりで共存させた展示となっています。

広々としたギャラリーで多彩な背景やコンセプトを持つアート作品を鑑賞することで、開放的な気分で作品のエネルギーに触れることができます。

展覧会「JAPAN」の作品を鑑賞

それでは、展示作品の中からピックアップして観ていきましょう!

鍵岡リグレアンヌ:水面の反射を立体的に表現した作品

Reflection p-8

《Reflection p-8》
2018、鍵岡リグレアンヌ、oil and mixed media on panel、194 × 390.9cm

奥に掛けている作品は、鍵岡リグレアンヌさんの作品です。鍵岡リグレアンヌさんはMAKI Galleryの最初の取り扱い作家なのだそうです。

水面の反射を立体的に表現している作品はグラフィートという、重ねた色層を削りとる古典的な壁画技法に布のコラージュを加え、そこに色層を重ねる独自のペインティング法を用いていて、立体感のある絵画を制作してます。立体と平面が共存していると、本当に水面の揺れる瞬間を観ているようです。

ちなみに、手前にある漆黒のブロンズ像は、井田幸昌さんの作品で、ベーコンとムンクからインスパイアされた等身大の《Pope》です。

他展示での鍵岡リグレアンヌさん作品はこちら

井田幸昌:ブタとの一期一会を考えさせられる作品

Pig

《Pig》
2018、井田幸昌

「一期一会」をテーマに、抽象的な表現を多く描いている井田幸昌(いだ ゆきまさ)さんの作品。今を生きる身近な存在を描きだすことで「一期一会」の記憶を描いているようです。

ブタをモチーフとした作品は、井田さんと聞いて連想される作品のひとつです。暗い背景にブタの顔が水面に反射して映っているようで、水を飲みに着た瞬間を切り取ったようです。

日常的な行動と、暗くも見えるたたずまいを観ていると、自分自身が威嚇されているようで、食物連鎖で食卓に並ぶそれとは違う、生命と生命のやり取りをしているような感覚になる作品です。

他展示での井田幸昌さん作品はこちら

サイトウマコト:表情の奥に潜む人間の本性を描いた作品

Portrait of F.B

《Portrait of F.B》
2014、サイトウマコト

サイトウマコトさんは1952年生まれ、福岡県北九州市出身のアーティストです。

もともとはグラフィック・デザイナーとして国際的に活躍されていた方で、2005年ごろに長年研究していたペインティングに主軸を現代アートへ移した経歴をもっています。

作品のモチーフとなっている人物は、サイトウさんが「感情移入する対象」であると捉えている、フランシス・ベーコン(20世紀最も重要な画家の一人で、現代美術に多大な影響を与えたて人物画家)です。

写真という二次元の情報を主に、ドットの技法を用いて描かれていて、表情の奥に潜む人間の本性をあらわにして、新たな人間像を描いているようです。

サイトウマコトさんのその他作品こちらから

川島秀明:自意識と向き合い描く作品

Drawing

《Drawing》
2017、川島秀明

川島秀明(かわしま ひであき)さんは1969年生まれ、愛知県出身のアーティストです。

比叡山延暦寺での仏道修行を経験し僧侶になるか画家になるか悩んだのち、2001年にアーティスト活動の道を選択した、ユニークな経歴を持った方です。

作品制作では一貫して自意識と向き合い、顔、そしてそこに現われる繊細で複雑な感情を描き続けています。

作品には、図書館でイラストを描いている女学生が描かれています。描いているのが頭蓋骨なのが奇妙に感じるところで、まるで自分の未来像を描いているようにも見えます。また、女学生の目元が如来像や菩薩像といった仏像にみられる、「半眼」のようにも見えてきます。

開けた半分の目で外の世界を見て、閉じた半分の目で自分の心の中の世界を見ているのかもしれません。

川島秀明さんのその他作品はこちらから

三島喜美代:氾濫する情報やゴミを陶器で再現した作品

Coca Cola その1

《Coca Cola》
2019、三島喜美代

三島喜美代(みしま きみよ)さんは1932年(昭和7年)、大阪市生まれのアーティストです。

情報への関心が強いそうで、「新聞を紙から陶器に変えたら、情報にたいする危機感や不安感が表現できるのでは」と考え、1970年代初頭から氾濫する情報やゴミを陶器で再現する作品を制作されています。

コカ・コーラの作品は一見すると陶器とは分からないほど精巧で、新聞紙やダンボールまでもが陶器でできています。陶器には落としたら割れるという危機感があり、落としたら割れるのだから大切に扱わなければならないという意味を感じます。

Coca Cola その2

《Coca Cola》
2019、三島喜美代

三島さんの作品を観ていると、祖父を思い出します。戦争を経験した祖父の部屋には本やチラシといったものであふれていて、戦中派はものが足りなかったからと、捨てずに残していました。

生活が豊かになりゴミを捨てるという行為が当たり前になっている今、所有するものは長く使うことであったり、浪費により生まれるゴミについて考えさせられる作品でした。

他展示での三島喜美代さん作品はこちら

三沢厚彦:独特の動物の彫刻作品

Cat 2014-2

《Cat 2014-2》
2014、三沢厚彦

三沢厚彦(みさわ あつひこ)さんは1961年生まれ、京都府出身のアーティストです。

2000年から動物をモチーフに木彫制作を始め、クスノキを主材とする動物の彫刻「Animals」シリーズで知られています。2020年に明治神宮の杜芸術祝祭で屋外に、作品が展示されたことが記憶に新しいです。

ほぼ実物大であらわされた動物は、作者の中にある動物のイメージを造形化しているのだそうです。見上げるようにみつめてくる猫は人のような目をしていて、ひとつの動物というくくりで対等な目線をこちらに向けているようです。木肌にほどこされたノミ跡も猫のぬくもりを伝えています。

他展示での三沢厚彦さん作品はこちら

小西紀行:つねに変容する人の姿をみているような作品

Untitled

《Untitled》
2020、小西紀行

小西紀行(こにし としゆき)さんは1980年生まれ、広島県出身のアーティストです。

幼少期の自分の家族や身近な知人たちの集合写真、スナップなどプライベートな記録写真を参照しながら、筆やタオル、手指などを用い、大胆で伸びやかなストロークと鮮やかで深い色彩で、人を記号的かつ多角的に描き出しています。

スキーゲレンデで青いスノーボートに乗って遊んでいる様子を描いているように見える作品。一旦は絵の具で擦り付けてた後にそれを拭いとることで、キャンバス上の空間と人の身体のバランスがゆがめられていて、不確実性の高い現代でつねに変容する人の姿のように見えます。この作品のモチーフが幼少期の記録写真だとしたら、幼少期から変容を求められる時代であることを未来に伝えているのかなと感じました。

一見するとキャンバス上で何が起きているのか紐解くのが難しいですが、その背景を知ることで思考が促される抽象画でした。

小西紀行さんのその他作品はこちらから

篠田太郎:空間の捉え方について考えさせられる作品

桂・イ Katsura1

《桂・イ Katsura1》
2020、篠田太郎

篠田太郎(しのだ たろう)さんは1964年生まれ、東京出身のアーティストです。

日本庭園の造園家としてキャリアをスタート後にアーティスト活動を開始した経歴を持ち、宇宙を含む森羅万象を「人類の営みが共在するような進化する自然として理解する」ことをテーマに作品制作をされています。

麻布のキャンバスに大きな余白があり、よく見ると中心に向かうほどゆるやかに曲面を描きながらくぼんでいます。共通認識としてある「キャンバスは平面である」という前提を問い直すような作品で、空間の捉え方について考えさせられる作品です。

この「桂 KATSURA」シリーズは、日本庭園として最高の名園といわれている桂離宮との関連性も取り上げられていて、二次元や三次元といった一般的な空間の捉え方とは異なる、日本の特殊な空間概念の要素を反映しているようです。

絵画として以前の、鑑賞としての捉え方について問いを立てている作品でした。

篠田太郎さんのその他作品はこちらから

栗棟美里:「見る」という行為の本質とは何を問う作品

You may be in this world.Or you may not be

《You may be in this world.Or you may not be》
2020、栗棟美里

栗棟美里(くりむね みさと)さんは1988年生まれ、兵庫県出身のアーティストです。

作家自身が撮影した写真を支持体として、その上から描画を施すミクストメディアの手法で、美・存在・時間・生命といったものの本質を問い続ける作品を制作されています。

こちらの作品は「あなたはこの世界にいるかもしれない。もしくはいないかもしれない。」という意味の作品名にもある通り、実在しない人物をモチーフに取り上げた作品なのだそうです。実在しない人物と言われないと分からないくらいリアルなポートレートで、レンチキュラー(平面なのに3Dのような立体感を感じる印刷方法)による奥行きも感じられるために、「画面越しに確かにその人を捉えている」ような印象を受けます。

作品の見え方が現代の生活様式とどこか重なる部分もあり、時間や場所を問わず画面越しに人と会い、会話をする環境が整ってきた今、直接的な交流が欠如しているんだなということを痛感します。目の前の人を見るとは、果たしてどこまでの粒度で見えているのかを考えさせられる作品です。

栗棟美里さんのその他作品はこちらから

三嶋りつ恵:宙空に光の玉が浮遊するようなガラス作品

Drops of the universe

《Drops of the universe》
2017、三嶋りつ恵

三嶋りつ恵(みしま りつえ)さんは1962年生まれ、京都府出身のアーティストです。

1989年からヴェネツィアに移住し、2011年より京都にも住まいを構え、二拠点を往復しながら作品制作をされています。

雫を積み重ねたような作品は展示空間に溶け込みつつも、近づくと鏡のようにもなっていて、光を取り込んでその場の空気感を表現しているようでした。和名で「宇宙の雫」となる作品は、吹きガラスによるガラス玉に溶けた銀を流し込んだシリーズです。

あたかも宙空に光の玉が浮遊するような幻想的な作品は、三嶋さんの作品のコンセプトである「光」を空間全体で表現しています。

三嶋りつ恵さんのその他作品はこちらから

KYNE:ステッカーのようなシェイプドキャンバス作品

Untitled

《Untitled》
2019、KYNE

KYNE(キネ)さんは福岡県出身のアーティストです。

大学時代に日本画を学び、また、同時期に70年代にアメリカで生まれたグラフィティというストリートでの表現に出会い、相対する2つのエッセンスを使って一つのキャンバスに作品を描いています

女性のポートレート作品が有名で、モノクロで描かれた凛とした表情の女性の作品を多く制作しています。

今回展示されていたのが、シェイプドキャンバス(作品に合わせて可変するキャンバス)の作品。KYNEさんのイラストは“KYNE-girl”ステッカーとしてもつくられていて、福岡の路上やビル壁に貼られていたりしています。

そんなストリートカルチャーから現代アート作品を制作している経歴から、シェイプドキャンバスはステッカーを彷彿とさせ、これまでの歩みを1つの作品で表現しているようにもみえます。

KYNEさんの描く女性は艶やかさや凛とした表情があり、じっと観ていたくなります。

他展示でのKYNEさん作品はこちら

花井祐介:飾らない日常を描いた作品

Conversation

《Conversation》
2019、花井祐介

花井祐介(はない ゆうすけ)さんは1978年生まれ、神奈川県出身のアーティストです。

20代でサンフランシスコへ渡りアートを学び、50年代~70年代のサーフ系イラストやアメリカのカウンターカルチャーに影響を受け、どこかレトロさを感じるイラストレーション作品を制作されています。

登場する男性はムッスリとしていて、癖がありそうな人に見えます。笑顔や魅力的な瞬間を切り取ったものではなく、日常の中でのありのままの姿を描いているようです。

日常の何気ない会話を描いた作品はどこか懐かしい風景にみえ、相手の表情をみながら会話する日がまたきますようにと想いながら観ていました。

花井祐介さんのその他作品はこちらから

ロッカクアヤコ:無邪気さ伝わる童心にかえれる作品

Untitled

《Untitled》
2015、ロッカクアヤコ

ロッカクアヤコさんは1982年生まれ、千葉県出身のアーティストです。

クレヨンで無邪気に描いているような、童心に帰ったような気分になる作品を描いています。

白い大きな花と紫色の服を着た少女はじろりと左手をみつめていて、どこか戦いを挑んでいるようにみえます。手指で描いていたり、そのカラフルで元気の出る色彩であるため、作品を通したロッカクさんのエネルギーが伝わってきて、「ポジティブなエネルギーが作品に宿っている」と感じることができます。

他展示でのロッカクアヤコさん作品はこちら

LY:黒いモンスター「LUV」くんを描いた作品

LUVS

《LUVS》
2021、LY

LY(リー)さんは東京出身の女性アーティストです。

白と黒とグレーを使い、海外で訪れた街並みや、幼い時から妄想していた風景を描き、その風景の中には自身の気持ちや想いを投影した黒いモンスターが登場します。原宿にミューラル(壁画)を描いていることでも知られていて、もしかしたら見たことのある方もいるのでは。

この黒いモンスターには名前がついていて、作品タイトルからも「LUV(ルーヴ)」であることが分かります。ソファーに腰かけて本を読んでいるLUVの部屋には気ぬけた花と照明、小さな絵が飾られています。窓越しにはハンバーガー屋さんやステーキ屋さんの入った建物が見え、その先には自然が広がっているように見えます。

LUVの日常を通して、窓の外には出かけたくなる景色が広がっているのにそれが叶わず、家でできることをしている様子を表しているようにみえます。花瓶の花は、そんな日常が長時間続いている様子を表しているようでした。

LYさんのその他作品はこちらから

hi-dutch:サーフボードリペア技術を活かした作品

BIG Smile

《BIG Smile》
2020、hi-dutch

hi-dutch(ハイダッチ)さんは1972年生まれのアーティストです。

20代はサーフショップで働き、次第にサーフボードのリペアに興味を持つようになり、27歳でサーフボードのリペア職人に転身され、その頃からイラストなどを書きためるようになったそうです。そこから、アーティストとしてのキャリアをスタートし、サーフボードリペアによる樹脂を用いた技術を活かし、毛糸、木材、樹脂を合わせた作品を制作しています。

大きな笑顔のアイコンはまるで夕日のようなグラデーションで、海に沈む瞬間を捉え作品にしたように見えます。樹脂特有の艶感も印象的な作品です。

hi-dutchさんのその他作品はこちらから

まとめ:異なる背景の現代アートから知る現代の捉え方

共通点は日本人であることで、そのほかの時代や経歴、性別が異なるアーティストの作品をみていきました。

特殊な経歴から得た思想や技術を作品に取り入れて表現したり、ストリートやファッションから現代アートへと領域を広げ活動されているアーティストも知ることができました。異なる背景をもった現代アートが集うこの場所は、まるでアゴラのようだなと感じました

現代アートが集い、それぞれの持つメッセージを受け取って、咀嚼し、自分はどうするかと考えるきっかけになる空間だなと感じました。

情報過多やオンライン重視の生活など、現代ならではの不自由感を感じていました昨今でしたが、アート鑑賞を通して、「環境が整うことはない」が一つ自問自答した結果出た答えでした。不確実性の高い現代こそ、自分の周りの環境が整うことはまずなく、その中でできるクリエイティブをしていこうと、そんなことを考えながら鑑賞をすることができました。

この空間で作品を鑑賞し、感じたことを友達と話してみるのも面白いかもしれません。この数と種類の現代アートを鑑賞できるのは嬉しいです。

展示会情報

展覧会名MAKI Collection 「JAPAN」
会場MAKI Gallery 天王洲 I
東京都品川区東品川1丁目33−10 1F

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東京の展覧会をめぐりながら「アートの割り切れない楽しさ」をブログで探究してます。2021年から無理のない範囲でアート購入もスタートし、コレクション数は15点ほど(2022年11月時点)
好きな動物はうずら。
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