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【作品解説】ステンシル壁画(HYKRX)|自由が丘・不二屋書店に描かれたパブリックアート

よしてる
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2023年2月18日、自由が丘駅北口を降りた正面にある誰もが目にしたことがあるだろう不二屋書店の壁面に、大きな壁画が描かれました。

どんな作家が、何のために、この作品を描いたのでしょうか。

今回はそんな疑問を探究しながら、作品についてご紹介します。

HYKRXによるステンシル壁画

自由が丘・不二屋書店のしらかば通り沿いの壁面にできたこちらの壁画は、HYKRX(百樂:ヒャクラク)さんが制作した作品です。

この作品はステンシルと呼ばれる、手作業で切り抜いた型紙にスプレーを吹き付ける技法で描かれています。

雲に乗った子どもが釣りざおでハートを釣り上げているところを、猫が見つめています。

少年と猫が描かれた作品

タイトルなし(部分)
2023、HYKRX、ステンシル

白と黒で描かれた子どもはカゴを背負っていて、釣りざおで釣り上げたのであろうハート達で溢れています。

タイトルなし(部分)
2023、HYKRX、ステンシル

釣り上げている最中のハートをじっと見つめる猫。

ハートが無事に釣り上げられるように見守っているようで可愛らしいです。

作品名がない理由は「鑑賞者の解釈で楽しんでもらうため」

タイトルなし(部分)
2023、HYKRX、ステンシル

この作品にはあえて、作品名はつけていないそうです。

そこには「見る人それぞれの解釈で楽しんでいただけるように」という願いが込められています。

いろんな解釈ができると思いますが、例えば、個人的な解釈としてはこんな風に感じました。

  • 釣りざお:棒の先に糸をつけた簡易的な釣りざおから、子どもでも作れる簡易さで生み出せる「ハート=愛」がある、というメッセージ
  • カゴ:ハートが溢れそうになっているところに、行動を続けることで得られるものも増えていく、というメッセージ
  • 釣り上げているハート:意図的にぐるぐる巻きにして釣れるようにしているところに、子どもに協力してくれる誰かの存在も大切である、というメッセージ

これらの解釈を踏まえると、誰でもできる小さな試みも、協力者がいればより大きな試みにつながることが表現されているようです。

展示当初は「バンクシーの作品か」との問い合わせも相次いでいた

作品が完成した当初、ステンシルによるアート作品で有名なバンクシーの作品ではないか、と話題になったそうです。

そのためか、作品の下にある掲示板には、こんな貼り紙がありました。

作品についての説明

この貼り紙で作家を知るということにもつながっていそうです。

ちなみに、貼り紙以外にも作者を知る方法があります。

それがこちら。

タイトルなし(部分)
2023、HYKRX、ステンシル

猫の視線上にある、こちらの模様。

推測するに、HYKRXさんの作品によく見られるアイコン的なサインが描かれていて、いわゆるタギングが施されているようです。

Q
タギングとは?

スプレーやフェルトペンなどを使い、公共の壁などにイラストや文字を描くグラフィティーの一種で、自分のサインを描く行為のことです。

知る人ぞ知るサインによるコミュニケーションに気づけたら、作品の特別感が一層増しますね。

「自由が丘ねこまつり」を記念して描かれた作品

本作品は猫をテーマにしたイベント「自由が丘ねこまつり」の開催を記念して描かれました。

不二屋書店の店主が自由が丘商店街で地域猫活動に取り組む「自由が丘ニャンとかしよう会」事務局代表でもあることから、不二屋書店の壁が選ばれたのでしょう。

「自由が丘の地域猫活動発祥の地として、壁面に猫にまつわるアート作品を描いてもらう」という計画が、2022年の秋に持ち上がったそうです。

HYKRXさんは猫や犬など保護される動物たちのために、できる限りの支援をしていく「SAVE ANIMALS -LIBERTY FUND-」プロジェクトに参加されたこともあることから、今回の壁画制作に至ったのかなと感じます。

今回の作品をきっかけに、自由が丘に新しいアートが生まれいったら良いなと思います。

HYKRX(ヒャクラク)とは

作品を生み出した作家についても知ってみましょう。

HYKRX(百樂:ヒャクラク)さんは、1974年生まれ、奈良県出身の日本人作家です。

1990年にバンドフライヤーの制作から作家活動をスタートし、ミュージシャンやクリエイターから強い支持を得ているそうです。

作品には「情報社会のサイクルの中で埋もれていく感情」が込められているように感じます。

例えば、こちらの作品。

《icandoit (purple)》
2020、HYKRX、Painting、H60.6 × W72.8 × D2.7 cm(引用:Art Scenes

「I CAN`T DO IT(できっこない)」を、ネズミがマッチの火で「T」を焦がし、「できる!」に変換しています。

黄色いスカーフは、明るい希望、喜びや幸せを伝えているのかもしれません。

今はできないという周囲の声があったとしても、燃え尽くすほどの情熱が自分の中にある限り、「世の中案外できることばかりだよ」と教えてくれているようですね。

このように、他作品にも柔らかく、温かみのあるメッセージが含まれている印象があります。

不二屋書店は2023年で100周年

今回壁画が描かれた不二屋書店は、自由が丘駅北口の正面にある、大正12年(1923年)創業の書店です。

今の自由が丘駅ができる前からある書店で、2023年でちょうど100周年を迎えます。

こぼれ話になりますが、自分自身、学生時代に不二屋書店でアルバイトをしていました。

わずか3年程度ではありましたが、多彩な本との出会いや自由が丘という街にある温かい人情を体感できたのは、不二屋書店のおかげで、今でも自分にとって自由が丘は特別な街です。

そんな個人的体験もある書店にアートが現れたのは、とても感慨深い出来事でした。

温かな場所なので、壁画を観た後は、ぜひ書店にも足を運んでみてください。

まとめ

どんな作家が、何のために、この作品を描いたのかを紐解いていくと、猫に関連した取り組みや場所選びにも意味があることが見えてきます。

公共の場所に制作されるパブリックアートを通じてその街を知っていくと、好きな街が増えていくかもしれません。

自由が丘駅北口の正面にある作品なので、立ち寄った際はぜひ鑑賞してみてはいかがでしょうか。

作品名なし
展示期間常設
展示時間24時間
観覧料無料
作家情報HYKRX(百樂:ヒャクラク)さん|Instagram:@hykrx
展示場所不二屋書店 しらかば通り沿いの壁面
東京都目黒区自由が丘2丁目11−3

参考リンク

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ABOUT ME
よしてる
1993年生まれの会社員。東京を拠点に展覧会を巡りながら「アートの割り切れない楽しさ」をブログで探究してます。2021年から無理のない範囲でアート購入もスタート、コレクション数は25点ほど(2023年11月時点)。
アート数奇は月間1.2万PV(2023年10月時点)。
好きな動物はうずら。
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