白井カイウ&出水ぽすか「MIROIRS – Manga meets CHANEL」|マンガで観るシャネルの哲学
今回はCHANELと漫画家 白井カイウさん&出水ぽすかさんのコラボ展覧会《MIROIRS(ミロワール)》の模様をご紹介します。
この記事を読むとこんなことが分かります。
- マンガ×CHANELのコラボと《MIROIRS》の意味が分かる
- ガブリエル・シャネルさんの生き方をマンガで分かりやすく知ることができる
- 「CHANEL=高級ブランド」というイメージの先にある、人間ドラマを垣間見れる
2021年はココ・シャネル没後50年にあたり、有名なシャネルの香水「No.5」が誕生100年を迎える年です。そんな節目に、マンガを通して新たな表現をしている展覧会を観ていきましょう!
マンガとシャネルのコラボレーション
日本のカルチャーがますます世界的に注目される今日、シャネル・ネクサス・ホールで、そのトレンドの一歩先をいく企画ができないかという想いから生まれたのが、今回のプロジェクト、「Manga meets CHANEL」です。・・・既存の商業的な展開とは一線を画す、純粋に文化的なアプローチとして、シャネルのイメージに合った作風のアーティストさんに、書き下ろしで漫画を制作いただくことにこだわりました。
ー展覧会説明書きより引用
CHANEL創業者のガブリエル・シャネルさんは生前、芸術を愛し、支援していたそうです。そんなシャネルの精神を受け継いだ企画展には、自分自身のありのままの姿で挑戦する者を支援する温かさを感じることができます。そのため、今回の企画展では作家の白井カイウさんと出水ぽすかさんには白紙の状態、ゼロから制作をお願いしたんだそうです。
ゼロから組み立てている、という視点で展覧会を観ていくと、その完成度に驚きます。
原作者:白井カイウ/作画家:出水ぽすか
白井カイウさん&出水ぽすかさんといえば、ジャンプマンガ「約束のネバーランド」の作者です。
2020年12月時点で全世界累計発行部数は2600万部を突破している人気マンガです。おふたりは今回の展覧会のために、本来はシャネルの生きた街・フランスでの取材をするはずでした。
しかし、新型コロナウイルスの影響で現地取材が叶わず、参考書籍や映画、ビデオ電話による取材、店舗での詳細なレクチャーなどありとあらゆる情報収集をしています。そのため、今回のプロジェクト制作には2年以上の時間を費やしているそうです。
3章の短編マンガにはシャネルの哲学が多面的に表現されていて、濃度の高い作品となっていました。
MIROIRS(ミロワール)の意味は「鏡」の複数形
展示タイトルになっている《MIROIRS(ミロワール)》、聞きなれない単語ですが、フランス語で『鏡』の複数形、複数枚ある鏡を指しています。
ガブリエル・シャネルさんの残した言葉の中に、
鏡は厳しく私の厳しさを映し出す それは鏡と私の闘い 私という人間をあらわにする
ガブリエル・シャネル
(鏡は自分の正体を正直に映してくれるものだ、自分がどんな人間なのか思い出させてくれる、という趣旨の言葉)
があります。
お二人がバーチャルでガブリエル・シャネルさんのアパルトマン(フランス語でアパートのこと)を見たときにも、各部屋にきれいな鏡が置かれていたとか。この鏡たちが映してきたであろうガブリエル・シャネルさんのさまざまな人物像の断片を、マンガの力で組み合わせ、再生させているようでした。
展覧会「MIROIRS – Manga meets CHANEL」を観る
それでは、展覧会の模様を観ていきましょう!
Chapter1 魔女
第1章は女の子と魔女のお話です。
母親と一緒にいたいけど、その時間が少ない女の子。その心のさみしさを埋めるかのように本を読みふけり、空想の世界で遊ぶことに没頭しています。
「想像の中でなら私以外の誰かになれる」
その言葉の裏には、自分には強みがないと感じている姿が見てとれます。そんな時、魔女との出会いから景色が一変する様子が描かれます。
空想の世界を現実に持って歩くのは勇気がいりますが、時には偶然の出会いから実現できることもあります。
本は幼少期のガブリエル・シャネルさんにとっても別世界への入口だったそうです。
貧しい境遇に生まれ、12歳の時に病で母親を亡くし、父親はガブリエル・シャネルさんとその姉妹を修道院に預け姿を消してしまっています。その中でも、想像の中では貧しさのない世界にいれる、だから本をたくさん読んでいたのかもしれません。
何物でもない頃の自分はどうだったか、どんな景色を見たいと思い、どんな服を着て歩きたいか、そんな他愛のないことを振り返ることからも、ありたい自分との出会いにつながっていきそうです。
Chapter2 嘘つき
第2章は人に合わせて、自分の映し方を変える女性が主人公。
その日の気分で服を変える自由さが、周りからは自由奔放に見えて、素顔が分からずに嫌われている姿が描かれています。
日本人は周りの目を気にする風習が強い分、自分自身のしたいふるまいを抑えて生活している人が多いのではないでしょうか。そんな中で、自由奔放にふるまう姿を見ると、本来はそうありたいけれどできない人にとっては受け入れたくない存在になるのかもしれません。
そう感じる人ほど、「恋なんてしなくたって、楽しいことはあふれている」という言葉が響くのではないかと思いました。
相手がいて初めてできる恋だけが楽しみではなく、性別関係なく自由を存分に楽しんでみたくなります。
現代であればオシャレとして受け入れられていますが、ガブリエル・シャネルさんの生きた時代はコルセットが女性服の基本とされていました。そんな中でガブリエル・シャネルさん自身、色んな恰好を楽しんだそうです。
この「楽しむ」という感覚が、女性ファッションの常識を覆したのかもしれません。これまでの女性ファッションの因習から解放したことから、「皆殺しの天使」とまで称されました。純粋に「楽しむ」ことが、どれほど力を持つものなのかが分かります。
Chapter3 カラス
第3章はコンプレックスを抱え、世界の息苦しさのなかで暮らしている少年が主人公です。
周りには色があり、自分は無色で何もないという描写から、「世界を塗り替える」姿が描かれます。コンプレックスを克服し、何色でもなかった自分の方から世界の色を替えていく姿が、ガブリエル・シャネルさんと重なります。
自身のコンプレックスや世間に対して反骨する行動が、周囲の価値観を変え、周囲の色を替えていくことができる、そんな教訓を得ることができます。
ガブリエル・シャネルさんの強さは、一貫した生き方にあると感じます。自分の「したい」ことを貫き、曲げず、歩み続ける強さこそ、彼女の魅力なのではないかと思いました。
子供のころは無邪気にできていたことを、大人になってからも続けるには、世間に反骨する強さがいります。彼女は自身の「したい」を貫いた結果、世界の価値観の方を変えてしまいました。
「かけがえのない存在であるためには、人と違っていなくてはならない」
このガブリエル・シャネルさんの言葉が、すとんと入ってくるストーリーでした。
【名言】言葉から感じるガブリエル・シャネルの哲学
展示会場に飾られていた言葉たちも、ここで紹介しようと思います。
“翼を持たずに生まれてきたとしても、自分の翼が育つのを妨げてはならない”
まさに自分の「したい」を放牧せよ、という印象を受ける言葉です。
“小さいカバンに でっかい夢がつまってる”
個人的に、今回の展示の中で一番好きな言葉です。ありのままの自分を思い出させる、強い言葉です。
“自由とは勝ち取るもの”
自由とは、してもらうのではなく、するもの。受け身ではいけないと、奮い立たせる言葉です。
まとめ:ありのままの自然体を貫く生き方
ガブリエル・シャネルさんの生涯を通した生き方を、マンガで感じることのできる展覧会でした。
「CHANEL=高級ブランド」というイメージを持っている人ほど、今回の展示を観る価値があると思います。ブランドに根付く、ありのままの自然体を貫いたガブリエル・シャネルさんの生き方が、ブランドに輝きを添えていることが分かります。この生き方から見える人間味が、高級ブランドという側面とは違った形で、寄り添いやすい存在になるのではないでしょうか。
マンガがシャネルという文化に刻まれる歴史的な展覧会、ぜひ現地で体感してみてください!
展示会情報
展覧会名 | MIROIRS – Manga meets CHANEL Collaboration with 白井カイウ&出水ぽすか |
---|---|
会場 | シャネル・ネクサス・ホール |
会期 | 2021年4月28日~6月6日 会期中無休 |
開廊時間 | 12:00~19:30 ※要予約、詳細は公式ウェブサイトへ |
サイト | https://chanelnexushall.jp/program/2021/manga/ |
観覧料 | 無料 |
関連書籍
関連リンク
多面的に展覧会を知りたい方は、こちらもおすすめです。