解説

【作品解説】三島喜美代「割れる新聞紙」|ゴミを陶器で表現したアート

「こんなゴミの塊がアート作品なの?」と思ってしまったとしたら、それは美術家である三島喜美代さんの狙い通りですのでご安心を。

今回は三島喜美代さんによるゴミをモチーフとしたアート作品をご紹介します。

要点だけ知りたい人へ

まずは要点をピックアップ!

  • ゴミがモチーフの作品は、素材を割れやすい焼き物の陶で制作することで、溢れる情報への危機感や情報化社会の現代性を表現しているといわれています(作品によって素材が陶器ではないものもあります)
  • この作品を制作する作家は三島喜美代さん、1932年(昭和7年)生まれ、2022年で90歳となる美術家です
  • 作品には社会批評といった深い意味はなく、面白いと思ったらすぐにやる行動力から生まれ、その自由な制作スタイルが魅力です

動画にもまとめています。

作品:割れる新聞紙の入った《BOX Coca Cola 22-2》

《BOX Coca Cola 22-2》
三島喜美代、2022、印刷したセラミックに手彩色、34 x 26 x 27cm

ゴミがなぜアート作品になるのか

新聞紙をくしゃくしゃにしてダンボールに捨てたような作品がなぜアート作品として評価されるのでしょうか?

新聞紙をモチーフにする理由は、情報に囲まれている危機感や、次の日には捨てられ埋没していく不安感があるからで、媒体として持っている要素が面白いからなのだそうです。

その危機感をもっと出せないかと思った際に、「危機感=割れる」と考え、陶製によって「割れる情報物」を作り、スリリングさを表現しています。

陶製は地中に何世紀もの長く在っても朽ち果てずリサイクルされないものであり、陶のある種の消費されない点が新聞紙とその情報の短命さとは対局にあります。

そして、三島さん自身は「新聞紙が割れる」という点に一番興味を持ったそうで、ある展覧会では掃除の時に本物の新聞と思って倒して割ってしまうこともあり、その報告を聞いた三島さんは「引っかかりはった」と思って面白がり、狙い通りとも思うそうです。

作品タイトルにこだわりはない

作品タイトルを見てもらうとわかりますが、タイトルは記号的で深い意味は込められていません。

三島さんはまずこんなことをやってみたいと思ったことをやって、出来上がったときにタイトルをつけています。

その時に、鑑賞者が観ていろいろ考えて、自分で判断してもらえるようにという考えから、タイトルにはあまりこだわっていないようです。

アーティスト「三島喜美代」ってどんな人?

三島喜美代さんは1932年(昭和7年)、大阪府大阪市生まれの美術家です。

2022年で90歳となる美術家で、地元と岐阜県土岐市を拠点に制作活動をしています。

作品は情報社会への不安感を意識させる一方で、一番に興味を示しているのは「割れるはずのないものが割れる面白さ」であったりと、三島さんのユーモア溢れる自由な人間性が現れています。

好奇心を失わないこと。それが一番だと思います。
Never lose curiosity.That’s the only thing.

三島喜美代作品集より引用

この言葉からも、三島さんの人間性が伝わってきます。

カン、ビン、ダンボール、コミックもアート作品に

新聞紙以外にも、カンやビンなども陶器で作品化しています。

カン

《Work 22-C3》
三島喜美代、2022、印刷したセラミックに手彩色・鉄、34 x 34 x 51cm

ビン

《BOX Coca Cola 22》
三島喜美代、2022、印刷したセラミックに手彩色、32 x 24 x 25cm

ダンボール

《Work 22-G》
三島喜美代、2022、印刷したセラミックに手彩色・鉄、62 x 58 x 92cm

コミック

《Comic Book 22-S》
三島喜美代、2022、印刷したセラミックに手彩色、17 x 14 x 18.5cm

主観:奔放不羈に鑑賞

三島さんのゴミをモチーフとした作品は70年代を反映したものになっていますが、情報社会と作品を照らし合わせながら観ていると感慨深いものがあります。

ネット上に氾濫する情報も、物理的なものに変換するとこんなふうに捨てられ埋没してるのかもしれません。

検索エンジンが優秀になり、検索ボックスに知りたい言葉を入れれば最新情報で役立つ情報をすぐにキャッチできるようになりました。

でもそれは同時に、その他大多数の不要な情報がネット上に埋没されていることでもあります。

ネット検索は便利だけど、それは時にゴミ箱を漁るような行為になっているのかもしれないと、ちょっとした恐怖を感じるのでした。

まとめ

三島喜美代さんのゴミをモチーフにした作品には「新聞紙が割れる」という面白さと同時に、情報の持つ不安感が表現されていることが分かりました。

一見意味不明なアート作品にも作家の制作過程とそのイメージを形にする技、そしてそれを観てさまざまな意見が出るところが魅力に繋がっているのかもしれません。

今回ご紹介した作品の展覧会

展覧会名三島喜美代展
会場銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM
東京都中央区銀座6丁目10−1 SIX6階
会期2022年1月29日(土)~2月8日(火)
開廊時間11:00〜20:00 ※最終⽇のみ18:00終了
サイトhttps://store.tsite.jp/ginza/blog/art/24350-0943290113.html
観覧料無料
作家情報三島喜美代 さん|HP:https://mishimakimiyo.com/

参考書籍

英語版と書いてますが、日本語でも掲載されているのでご安心を。Kindleの読み放題だと無料で読めます。

6ページ分ですが、三島喜美代さんのインタビューも含まれています。

ABOUT ME
よしてる
東京でアート巡りををしながら「アートの割り切れない楽しさ」を探究している理系男子です。会社員をしながら、週末アートウォッチをしています。 2021年から無理のない範囲でアート作品の購入も始めました。 好きな動物はうずら。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA