キャンバスのM、P、F、Sとは何か|キャンバス、額縁サイズを解説
今回はキャンバスの大きさについて解説します。
- キャプションに書いてあるM、P、F、Sって何?
- キャンパス、額縁のサイズが違うと何が変わるの?
そんな方向けに、キャンバスサイズを表す「M、P、F、S」の意味からキャンバスの号数まで図解でご紹介します。
キャンバス・額縁の大きさ
アート鑑賞をしている際に、こんなキャプションを見たとします。
「M、Pって何だ?」
アートを普段から観ている人でも、こんな疑問を持つかもしれません。私も初めてこの表記を見たときに「?」となりました。
そこには、こんな意味があります。
M、P、F、Sの意味
1枚で答えると、こんな感じ
今回の疑問に1枚で答えると、こんな感じになります。
詳細を説明していきます。
Mは「海景」、Pは「風景」、Fは「人物」
各ローマ字は、英単語の頭文字からとっています。
M:Marine (海景)
P :Paysage(風景)
F :Figure (人物)
F>P>Mの順でキャンバスの短辺が長くなり、面積が大きくなるイメージです。
海景、風景、人物それぞれのモチーフを描くのにふさわしいサイズといわれているために、その頭文字をとってサイズの名前として使われています。
ただ、「描くモチーフに合わせて、必ずこのサイズを使わなければいけない!」というわけではないようです。
例えば、先ほどご紹介した2つのキャプションの作品を観てみましょう。
こちらがM12号の作品。
海景にふさわしいとされているMサイズに油彩画を描いた作品です。女性のスラっとスタイリッシュな印象を与えていました。
次に、こちらがP100号の作品。
風景にふさわしいとされるPサイズに油彩画を描いた作品です。身体のほぼ全体が描かれ、背景のほどよい余白があることで女性の存在感を強めているようでした。
描く作品のテーマによってキャンバスを選んでいるのだろう、ということも見えてきます。
S「正方形」もある
ちなみに、Sというサイズも存在します。このローマ字は、
S :Square (正方形)
からとっています。こちらはM、P、Fと比べたらシンプルですね。
比率にも注目
Mは黄金比、Pは白銀比が使われている
各サイズには、目安としている枠の比率があります。
Fサイズ:画面比率「1:1.236(√5 ー1)」を目指したサイズになっています。
Pサイズ:白銀率を目指した画面比率で、「1:1.414(√2)」を目指しています。
Mサイズ:人類が最も美しいと感じる黄金比を目指した画面比率で、「1:1.618((√5+1)÷2)」を目指しています。
例えば、レオナルド・ダ・ヴィンチの描いた有名な肖像画「モナ・リザ」は、黄金比率を用いたMサイズのキャンバスを縦構図で描いています。
サイズの規格に違いがありますが、その説明は後ほど。
比率は号数それぞれで違う
黄金比、白銀比といった目安を設けていながらも、必ずしもこの比率に合わせた号数になっているわけではありません。号数によってわずかな比率の違いがあります。
画面比率の最小値~最大値はこんな感じになります。
Fサイズ(人物) 1.165(F10号) ~ 1.489(F120号)・・・0.324の差
Pサイズ(風景) 1.293(P10号) ~ 1.732(P120号)・・・0.439の差
Mサイズ(海景) 1.433(M15号) ~ 2.000(M120号)・・・0.567の差
短辺がみじかくなるほど、号数の差が大きくなっています。これは、試し描きでF10号キャンバスに描いた後に本番でF120号キャンバスに描いたら、構図のサイズが合わなかった・・・という現象が起こることになります。
号数によって比率が違う理由
比率が違う理由は、号数によって規格が決められているからです。
日本のキャンバスのサイズは「号数」によって規格化されています。日本の規格のルーツをたどると、もとはフランスの規格をベースに作られています。フランス規格をベースに尺寸単位に変換して用いていたものを、メートル法に換算(尺はメートルの33分の10の長さ。1尺=約30.3030 cm。)して、現在の規格に至っています。
そのため、フランス規格と日本規格で号数が同じでも、長さにわずかな誤差が生まれています。
そして、ベースとしているフランス規格が、号数によってキャンバスの比率に差があるため、日本の規格にもそれが反映されているようです。
先程のモナ・リザのサイズ規格が異なったのは、日本の規格を使っていないためでしょう。
ただ、「縦77.0cm、横53.0cm」をフランス規格の表を見ると、M23号に近いようで、短辺の長さが若干異なるようです。モナリザの長辺比率も「1.452」となり、現在のフランス規格よりも若干黄金比に近づけているようです。
まとめ:キャンバスを知って、アートを楽しもう!
キャンバスにはサイズによって規格があることが分かりました。
黄金比や白銀比など、無意識に美しく見える比率も活用され、そこにアーティストの表現が重なり合うことで、総合的に「美しい」と感性を刺激されているのかもしれない、と感じました。
アート鑑賞の中では使う機会は少ないかもしれませんが、アート購入を検討する際に、「この大きさなら家に飾れるサイズだな」という場面で役立てられるかもしれません。参考にしていただけたら嬉しいです。