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大森暁生「幻触」|生命の息づかいまで彫刻で表現しアート

よしてる
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より近くで「彫刻で生き物を観る」を体験した、大森暁生さんの作品。

今回は銀座蔦屋書店アートウォールギャラリーにて開催した大森暁生さんの個展「幻触」の模様をご紹介します。

この記事を通して、こんなことができます。

  • 大森暁生さんの彫刻作品を知るきっかけになる。
  • 日常生活では触れることのできない生命に、彫刻を通して触れる楽しみを知れる。
  • 展覧会「幻触」を見逃した方は、新作含めた作品を鑑賞できる。

では観ていきましょう!

大森暁生とは?

大森暁生(おおもり あきお)さんは東京出身の彫刻家です。

籔内佐斗司(やぶうち さとし)さんのアシスタントを経て自身の工房を開設しています。
(籔内佐斗司さんは彫刻家で、平城遷都1300年記念事業のマスコット「せんとくん」を制作したことで有名です。)

おもに⽊彫とブロンズの作品を制作されていて、作品は国内外での展覧会から飲⾷店の装飾ディレクション、テレビドラマ等メディアへの作品協⼒まで、さまざまなジャンルで活躍しています。

生命力溢れる等身大の動物作品から、日常生活で使えるものと作品を掛け合わせた作品まで、表現豊かな作品を多く制作しています。

作品に⼀貫してあるのは《作品の持つリアリティと、その世界観が持つ幻想的な雰囲気》なのだそうです。

展覧会タイトル「幻触」とは?

今回の個展は、作品集の刊行記念で開催されていました。

「幻触」というタイトルは、「幻に実際に触れることが出来るのが彫刻の最⼤の魅⼒である。」という思いから名付けた、大森暁生さんの造語です。

例えば犬や猫でもなければ、日常生活で出会うことのない動物にゆっくり触る機会なんてないですよね。

今回の展示にあった動物たちも、(作品だから触れられませんでしたが)彫刻だからこそ安心して鑑賞を愉しめ、不思議と生命が宿っているかのような、息づかいを感じることができます。

大森暁生「幻触」展示作品を鑑賞

静かな力強さを持つピラルク

《月下のPirarucu》
大森暁生、H120.5 × W210.5 × D26cm

今回の展覧会の新作です。

大森暁生さんといえば鏡を使った表現で知られています。

鱗は何かを貼り合わせているんじゃないかと感じてしまうほどの仕上がりで、遠目から観たら彫ってあるなんて微塵も思えませんでした。

静寂な湖の中でしっとりと泳いでいるような、優雅な姿をしています。

表情はというと、「湖の主である」という風格を感じました。

静かな湖の均衡を保てているのは、このピラルクがいるからこそ。

その均衡を、作品としても醸し出しているように感じました。

「静かな力強さ」の良さを感じます。

波紋の中を泳ぐアロワナ

《月夜のテーブル-Arowana-》
大森暁生、テーブル:H46×W71×D71cm,椅子:H41×W31×D31cm 4脚

ピラルクのいる大きなテーブルと、その周りには小さな椅子が並べられた作品です。

一つ一つの円が水面に浮かぶ波紋のようで、アロワナ動きを表現しているようでした。

アロワナはいくつかの種類に分かれ、また個体によってもヒレのかたちが様々なのだそうです。

大森暁生さんは、後方3ヒレが一枚に繋がっているものが特に好きと、キャプションに書いてありました。

キャプションとは?

キャプションとは、作品の近くに添えられた説明書きのことです。大体は作者、作品タイトル、大きさ、制作年、場合によっては作品の説明書きなどの情報が書かれています。キャプションは鑑賞者が興味を持った作品をもっと知るための、作者の制作意図を紐解くヒントになるものです。作品によってはキャプションがないこともありますが、興味を持った作品についてはチェックしてみましょう。

キャプションを見ると、《月下のPirarucu》、《月夜のテーブル-Arowana-》と、作品名に「月」が添えられていました。そこで、月を意識した意図はなんでだろう、と考えてみます。

月に手を伸ばしても当然のごとく届きませんが、水面に映る月は自分たちの手に届くほど近くにやってきます。

ピラルクとアロワナ共に、普段は近くにいるような生き物ではないですが、作品として昇華したとき、手に届く場所にやってくる、という観え方を重ねているのかな、と捉えてみながら鑑賞しました。

狛犬の化身

《狛の仔》
大森暁生、テーブル:H46×W71×D71cm

大森暁生さんは以前から、熊本市動物愛護センターの取材をライフワークとしているそうです。

そこで出会った子犬の無垢なオーラがまるで神様の子どものように思えたようで、狛犬(こまいぬ)の化身というストーリーをその子に与え作品にしたものです。

巻き髪がなんとも愛くるしいです。

動物愛護センターという環境には居れど、同じ生命であり、大森暁生さんの心を動かし作品にまでさせてしまう子犬に想いを馳せると、環境関係なく可能性は眠っているものだなと思わされました。

そろそろ蜻蛉の飛ぶ時期

《Glorious images TypeA》
大森暁生、H42×W32×D7cm

蜻蛉(とんぼ)のモチーフは珍しいなと思い撮ってみました。

鏡に自分が写ってしまうあたり、画角の鍛錬が必要だということが身に染みた今日この頃です。

羽根は透かし彫りという方法で彫られていて、触ったら折れてしまいそうなのが、むしろ軽やかさや繊細さを表現していると感じました。

最近都会では蜻蛉を見かけなくなってしまいましたが、作品という形で触れられるのはある意味貴重なのかもしれません。蜻蛉には、まだまだ都会にもいてほしいですけどね。

まとめ:じっくりと生命を”観れる”彫刻


作品鑑賞を通して、「普段は手の届かない場所に居る生命を直に見て、触れたような感覚になれる作品」という魅力が出し惜しみなく表現されていました

鱗や肉球、羽の動的な印象が強く、細部に拘り抜かれた技があるからこそ生命力のある作品になっているんだなと思いました。

日常生活では鑑賞できるほどゆっくり観れないものを観る、そんな体験ができるのも彫刻の良さですね。

大森暁生「幻触」展覧会情報

展覧会名幻触
会場銀座 蔦屋書店内 アートウォールギャラリー(Instagram:@ginza_tsutayabooks/@ginza_tsutayabooks_art
東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX 6F
会期2021年2⽉1⽇(⽉)〜2⽉28⽇(⽇)
主催銀座 蔦屋書店
協⼒D.B.Factory、新⽣堂
サイトhttps://store.tsite.jp/ginza/blog/art/18421-0947260129
作家情報⼤森暁⽣さん|instagram:@akioohmori

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ABOUT ME
よしてる
1993年生まれの会社員。東京を拠点に展覧会を巡りながら「アートの割り切れない楽しさ」をブログで探究してます。2021年から無理のない範囲でアート購入もスタート、コレクション数は25点ほど(2023年11月時点)。
アート数奇は月間1.2万PV(2023年10月時点)。
好きな動物はうずら。
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