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榎本マリコ「”午前4時” 2017-2021」|シュルレアリスムを感じるアート

よしてる

今回は元麻布の「between the arts gallery」にて開催されていた榎本マリコさんの個展「”午前4時” 2017-2021」の模様をご紹介します。

この記事を読むとこんなことが分かります。

  • 榎本マリコさんの2017年から2021年までの作品を観れる
  • 特徴的な人物の肖像画の目の部分に花や植物、動物のモチーフを描いていることが分かる
  • シュルレアリスムが「超現実主義」といわれる理由が分かる

榎本マリコさんの作品を観て、これまで現代アートメインで鑑賞をしている中、久しぶりにシュルレアリスムを感じる作品と出会ったなという印象を受けました。

ひとつひとつの作品を繊細に描いている榎本マリコさんの個展を観ていきましょう!

榎本マリコとは?

《MASK-orchid》
2018、榎本マリコ、325×420×20mm

榎本マリコ(えのもと まりこ)さんは埼玉県出身のアーティストです。

曾祖父が日本画家だったようで、幼い頃から自然と絵のある環境で育ったそうです。ファッションを学んだのちに、独学で絵を描き始めていて、雑誌の表紙やジャケットイラスト、書籍の装画なども手掛けています。

今回展示していた作品は人間と動物や植物が眼を覆い隠すように一体となっていたり、現実では見ない情景を作品にしています。

ある種のシュルレアリスムを感じる部分があり、「どこかシュルレアリスムの作品を制作していたサルバドール・ダリを思い出させる、不思議な作品だな」と感じます。

シュルレアリスムとは何か?

シュルレアリスムって何ですか?

という人へ向けて、用語解説をします。

シュルレアリスムは日本語に翻訳すると「超現実主義」、つまりは「現実を理性の働かない無意識の領域で捉え、眼でみる以上に現実を色濃く捉える概念」です。

語源となるフランス語を分解してみてみると、

  • シュル(sur):「強度」、「過剰」(今回の意味では使われませんが、他には「超える」、「離れる」という意味もあります。)
  • レアリスム(réalisme):「現実主義」

となり、つまりは「現実主義をより強い度合いで捉える」という意味合いになります。

シュルレアリスムは1920年代前半にパリで始まった運動で、当時はフロイトの「精神分析」の学問が盛んに議論されていました。このような時代背景もあり、現実を解釈するために眼にみえる現実を批判的に捉えて、「潜在意識」や「欲望」、「記憶」、「夢」などの無意識の領域に着目して現実を捉える試みがされていました。

無意識の中では認識しているかもしれないモチーフを絵画上で観たときに、「写実的だけど現実的なモチーフじゃない、なんで!?」と、鑑賞者は潜在意識や欲望へ訴えかけられ、写実的な絵画に疑問を投げかけることになります

そして、隠された謎を見つけるために、鑑賞者は作品を真剣に観察しなければならなくなります。現実よりも真剣に作品を鑑賞する、そんな態度が無意識への呼びかけに繋がるのかもしれません。

展示作品を鑑賞

それでは、「between the arts gallery」にて開催されていた展覧会の様子を観ていきましょう!

個展タイトル「”午前4時” 2017-2021」とはどういう意味?

今回の展示は、榎本マリコさんのこれまでの作品と新作を含めた展示構成となっていました。この”午前4時”とはどういう意味なのでしょうか。まずは展覧会情報をチェックしてみましょう。

夜明け前の午前4時、 まだ昨日なのかもう今日なのか曖昧な午前4時という時間が今の気分に最も近く、 また2017年から今までの作品を展示する事でこれまでのグラデーションを表現出来る良い機会だと思いました。
私自身、コロナ禍で激変する日々の生活や新しい挑戦の中で、止められない時間に抗う事なく、 変化していく自身を客観的に見直し受け入れるそんな時だとも感じています。

展覧会情報より引用

朝日がのぼった瞬間にみられる、空を染めていくグラデーションと時系列的な作品のグラデーションを重ねているようです。

1階は新作の展示

では、まずは1階の新作作品を観ていきましょう。こちらの作品は3つ並んだ連作のようでした。

あたらしい朝Ⅲ

《あたらしい朝Ⅲ》
2021、榎本マリコ、727×910×26mm

パッと見たときにダリを思わすシュールなモチーフが魅惑的です。背景2色が初夏を思わす青空のような、レモネードのようなハツラツとした雰囲気も良いなと感じました。

人間のように迷いはなく、生き生きと咲いている花が目の位置に咲いていて、表情の表れやすい目の曖昧さを隠し、花がはっきりと「私こうです!」と主張してくれているようでした。

あたらしい朝Ⅱ

《あたらしい朝Ⅱ》
2021、榎本マリコ、727×910×26mm

女性バージョンは凛々しい印象があり、正面を向いていることもあり誰かの肖像画のようです。こちらも目の部分に植物と花が咲いていて、美に対する「欲望」を潜在的に表しているようにも観えます。

また、本能的に美しいと感じる花だけど、その美しさは人間ほど寿命は長くないところから、美への追及以上に命の期限についても考えてしまう作品でした。

2階はこれまでの作品を展示

続いて2階にある、これまでの作品を観ていきましょう。大小さまざまな作品が展示されています。

闇に備えるⅡ

《闇に備えるⅡ》
2019、榎本マリコ、530×650×22mm

首の後ろから動物の手が伸び、腹部を切り裂いているように見える作品。腹の中は宇宙のような暗さで、星が輝いているように見えます。

心に残る作品だなぁと感じつつも、なぜ、《闇に備えるⅡ》というタイトルをつけたのだろうと考えながら立ち止まっていました。思うに、ある程度の闇はもう備わっているのに、終わりのない備えに時間を浪費している自分がいて、ほかに目を向ける場所があるのでは?と問いかけているようだなと感じました。

flower girl(peony)

《flower girl(peony)》
2017、榎本マリコ、250×340×20mm

女性の顔の部分が丸ごと花になった作品、顔がないとその人の人柄や年齢が全く分からなくなりますね。ということで、花から情報収集をしてみます。

ピオニー(peony)とは日本語で「芍薬(シャクヤク)」というボタン科の花の名前です。シャクヤクの主な花言葉は「恥じらい」「はにかみ」「謙遜」という意味を持っているので、そんな性格の女性なのかなと想像してみます。

そして、大きな花とまだ小さな花の2つを持っていて、成熟したものと未熟なものを両方持っている女性というふうに読み取ることができそうです。

そこまで考えを巡らせたときに、絵画に疑問を投げかけて真剣に観察している自分がいることに気づきます。そんな行動を掻き立てられるところからも、シュルレアリスムというものを感じたのでした。

まとめ:シュルレアリスムに触れつつ現代アートを楽しむ

《beginning》
2017、榎本マリコ、540×660×22mm

シュルレアリスムを感じる榎本マリコさんの作品を鑑賞しました。

現代アートを楽しみながら、過去にあったシュルレアリスムという芸術運動についても知るきっかけにもなりました。作品を通して過去とのつながりを考えてみるのも面白いです。

アート鑑賞という点を楽しんで、いずれ作品と歴史的な文脈とのつながりに気づき考察するところも楽しむきっかけをいただけたような気がしました

これまでの榎本マリコさんの作品を観れた分、今後の活動も楽しみです!

展示会情報

展覧会名榎本マリコ個展 “午前4時” 2017-2021
会場between the arts gallery
東京都港区元麻布 2-2-10
東京メトロ日比谷線 広尾駅 1 番出口より徒歩 8 分
会期2021 年 6 月 8 日(火)〜6 月 20 日(日)
開廊時間12:00〜18:00
サイトhttps://bwta.jp/events/2021/06/08/enomoto_mariko/
観覧料無料
作家情報榎本マリコさん:Instagram|@mrkenmt_tmk
榎本マリコさんの他作品も観てみる

関連書籍

榎本マリコさんが装画を担当された小説です。

今回のシュルレアリスムの解説の参考にした文献です。

ABOUT ME
よしてる
東京の展覧会をめぐりながら「アートの割り切れない楽しさ」をブログで探究してます。2021年から無理のない範囲でアート購入もスタートし、コレクション数は15点ほど(2022年11月時点)
好きな動物はうずら。
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