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豊海健太「世界の音が、すべてきえる時」|漆から生命感、自然淘汰、継承を感じるアート

よしてる
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今回は京橋にある「ギャルリー東京ユマニテ」にて開催した豊海 健太さんの個展「世界の音が、すべてきえる時」の模様をご紹介します。

この記事を読むとこんなことが分かります。

  • 豊海健太さんとその作品について知れる
  • 卵殻やタマムシの羽根を素材とした漆の加飾技法を知れる

漆を用いた伝統技法から生命感と自然淘汰、そして継承を感じました。それでは、観ていきましょう!

豊海健太とは?

豊海健太(とようみ けんた)さんは1988年生まれのアーティストです。金沢美術工芸大学にて漆芸を専攻し、2018年に博士号を取得されています。

現在は、金沢卯辰山工芸工房に勤務するかたわら、漆芸技法を用いた平面作品をメインに制作されているそうです。

漆芸技法を用いた平面表現の作品

豊海健太さんは金銀、螺鈿、卵殻などによる加飾と蒔絵(まきえ)や変り塗りといった、漆芸の伝統技法を用いた平面作品を制作されています。

特に、今回の個展で展示されていた作品の素材のひとつ、卵殻は初めてみる技法でした。砕いた卵の殻を貼る技法のことを、卵殻技法というようで、漆の伝統的な手法なのだそうです。繊細な技法はとても美しく、漆の艶感と合う組み合わせなんだなと感じます。

また、個展に対してのコメントには、漆芸と向き合っているからこその想いを感じ取ることができます。

高度な技術と多くの工程を要する漆は現代の大量生産、スピード社会に逆行し、伝統文化の保持と同時に時代から取り残される危険性を孕むが、伝統と現代を見つめ、その先の新たな表現を提示したい。

作家コメントより引用

個展「世界の音が、すべてきえる時」を鑑賞

今回の個展では、新作を中心に約10点の作品展示をしていました。展示作品の一部を、感想を交えてご紹介します。

In a Cell:生命の生存戦略を感じる作品

《In a Cell》
2021、豊海健太、漆, 卵殻, MDF、124.0 × 1.2cm

– It’s like looking into a petri dish, where your body becomes one with the world you see and melts into it.
– シャーレの中を覗き込むように、自分の身体が視覚に映る世界と一体化し、溶けこむような

そんなコメントが、案内用はがきに書かれていました。漆の黒い部分はまるで鏡のようになっていて、自分の姿が映るほどの艶感がありました。

そして、卵殻はカルシウムを再構築して新たな生命の基礎を創っているように見えます。

白い模様は植物のような、胞子のようなものが描かれていて、どことなく風の谷のナウシカに出てくる、腐海の森のような印象がありました。命の輝きからくる美しさも表現されているようで、生物の生存戦略を磨き上げている過程のようでした。

そんな作品に自分の姿が映ることで、生命が発生してから今まで生存戦略が紡がれてきたから今の自分があると、そんな物語性を想像していました。

Jewel Beetle 01:フィボナッチ数列を用いた作品

《Jewel Beetle 01》
2021、豊海健太、漆, タマムシの羽根, アルミ板、Φ108.0 × 0.4cm

一つ一つの斑点はタマムシの羽根で、中央は艶感がないもの、外側に行くにつれて緑色の輝きを放つ部位を用いていました。

そこには、自分が普段見るタマムシの綺麗な緑色だけでなく、中央にあるような艶感のない部位もあって、それら全部が大事な要素であるということが表現されているようでした。この加飾技法は玉虫細工玉虫蒔絵と呼ばれる、伝統技法の一つなのだそうです。

卵殻もそうですが、昔の人は生活の中で手に入りやすいものを素材にして技を磨き、芸術へ昇華していたことに気づきます。

また、作品の模様はまるでひまわりの花の中央の模様のようで、フィボナッチ数列(1,1,2,3,5,8,13,…)が用いられているのが特徴的です。フィボナッチ数列の連続する項の比率は黄金比(1:1.618)に近づいていきます。無意識に心地よさを感じるのは、そんな仕掛けも施されているからかもしれません。

玉虫細工や玉虫蒔絵といった装飾的な一面だけでなく、自然が生み出す合理的で秩序立った美しさを表すフィボナッチ数列も組み合わさった作品でした。

告朔餼羊:時代による自然淘汰を感じる

《告朔餼羊(こくさくのきよう)》
2020、豊海健太、漆, 卵殻, アルミ板、70.0 × 70.0 × 0.4cm

告朔餼羊(こくさくのきよう)とは、古くから続いている習慣や年中行事は、理由もなく廃絶してはならないという意味を持った言葉です。

もとは古代中国で行なわれた告朔という儀式がすたれて、祭事に供える羊だけが行為として残り、その行為自体も廃止しようとしたところ、孔子が告朔の儀式が全て廃れてしまうのを惜しんだ、という故事が由来となっています。

力強い骨格をした羊の骨のモチーフからは、変わらない生命の姿と、時代に合わせて変化する象徴としての羊の姿を感じます。

漆という伝統文化も、樹液を素材としている特性上、自然の恩恵を受けているため、ある種の生命感を感じることができます。そして、昔は生活の中で汁椀や箸といった日用品にも用いられ、漆を英語の古い言い回しで「Japan」と訳されていたほどでした。

ところが現代では大量生産でき安価なものが手に入りやすくなり、漆を利用する機会が減っています。漆も生物と同じように、時代の流れに自然淘汰されいることに気づきます。

また、こちらの作品の制作過程は豊海健太さんのInstagramでみることができます。

まとめ:漆の平面作品が放つ生命力

豊海健太さんの作品は今回が初鑑賞となりました。

自然由来の素材を用いた作品を通して、生物としての自分を見ているような感覚になりました。

漆とその加飾技法の数々を目にして、時間による自然淘汰はあったとしても、それを継承していくことはできるなと感じました

今回の記事が、伝統技術から生命感や継承を感じながら、あなたなりの解釈で楽しむきっかけになれたら嬉しいです。

展示会情報

展覧会名豊海健太 ‐世界の音が、すべて消える時‐
TOYOUMI KENTA SOLO EXHIBITION
会場ギャルリー東京ユマニテ
東京都中央区京橋3丁目5−3 京栄ビル 1F
会期2021年7月26日(月)~8月7日(土)
日曜日休廊
開廊時間10:30-19:00(最終日17:00)
サイトhttps://g-tokyohumanite.com/exhibitions/2021/0726.html
観覧料無料
作家情報豊海健太さん
HP:https://toyoumikenta.portfoliobox.net/
Instagram:@toyoumi_kenta
blog:ウルシカブラレ

最新情報はInstagramをチェック!

ABOUT ME
よしてる
1993年生まれの会社員。東京を拠点に展覧会を巡りながら「アートの割り切れない楽しさ」をブログで探究してます。2021年から無理のない範囲でアート購入もスタート、コレクション数は25点ほど(2023年11月時点)。
アート数奇は月間1.2万PV(2023年10月時点)。
好きな動物はうずら。
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