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ブルーピリオド×ArtSticker 第1会期|アニメと若手作家が織りなす景色をみる

よしてる
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今回は渋谷にあるhotel koe tokyoにて開催した梅沢和木さん、瀬戸優さん、須永有さん、國分莉佐子さんのグループ展覧会「ブルーピリオド×ArtSticker 第1会期」の模様をご紹介します。

ブルーピリオド読者やアニメ視聴者はもちろん、これから現代アートに触れてみたい人へもおすすめのグループ展です。

第2会期はこちらをご覧ください
第3会期はこちらをご覧ください

「ブルーピリオド×ArtSticker」とは?

「ブルーピリオド × ArtSticker」とは、TVアニメ「ブルーピリオド」と、アート・コミュニケーションプラットフォーム「ArtSticker(アートスティッカー)」がコラボした展覧会です。

ブルーピリオドとは、世渡り上手な努力型ヤンキー高校生が絵を描くよろこびに目覚め、美しくも厳しい美術の世界へ身を投じていく物語を描いたコミックです。

そのアニメ版の各話を展示テーマとして制作された作品を、アニメ放送期間に合わせて段階的に展開していく構成となっていて、アニメと展示を連動しながら楽しめるようになっています。

現役美大生から美大を卒業し活動するアーティストまで参加しているので、出展作品も絵画から彫刻までさまざまな表現に触れることができます。

アニメの舞台、渋谷で作品を鑑賞

展示会場に渋谷を選んだことも、ひとつのこだわりになっています。

ブルーピリオドでも印象的な場面に渋谷が登場していて、主人公である矢口八虎(やぐち やとら)が初めて描いた絵も早朝の青い渋谷の景色でした。

渋谷が主人公の矢口にとって国内最難関の美大を目指す青春の地であるように、鑑賞者にとっても新たなアート作品との出会いの場になります。

表現の異なる作品を通したアーティストのメッセージを自分なりに受け取り、アートとの距離感を知るきっかけになるような場になると思います。

第1会期作品を鑑賞

展覧会は3会期に分けて作品展示が続く中で、今回は第1会期の展示作品を観ていきましょう!

梅沢和木:ネットの情報量を絵画で表現

梅沢和木(うめざわ かずき)さんは埼玉県出身のアーティストです。

2010年代にネットにアップされたアニメにハマり、

「自分が愛するコンテンツのリアリティを絵画に落とし込めないか?」
「ネットコンテンツの圧倒的な情報量、あるいは情報の流れを、風景のようにイメージ化できないか?」

という考えから、現在も制作活動を続けているようです。

筆跡とデジタルスキャンを融合させた作品を制作されていて、ゲームのキャラクターを彷彿と指せる要素を画像と同じようにコピー、ペーストし作品化しています。

増殖、縮小、拡大がいくらでも可能なものとして扱い、作家の筆跡の持つ力を無効化した上で作品化しています。

Determination

《Determination》
梅沢和木、展示テーマ「目覚め、覚醒」 アニメ「ブルーピリオド」第1話より

タイトルを直訳すると「決定」を意味する英語ですが、正式には「ケツイ」と訳されます。ケツイという訳はゲームの話だそうで、死後もタマシイを存続させる力に関係しているようです。

梅沢さん自身の欲望を反復する、躍動感ある筆跡が重ねられています。

中央右側に女性キャラクターの顔が見えますが、その左目からは青い涙のようなものもみて取れます。

自分の中にある恐れの感情を涙で流し出し、それが燃え盛る炎のような筆跡となって、恐れの先の景色を描こうとしているようでした

梅沢和木さんの他作品はこちら

瀬戸優:共に生きる野生動物の今を彫刻で表現

瀬戸優(せと ゆう)さんは神奈川県小田原市生まれの彫刻家です。

自然科学を考察し、主に野生動物をモチーフとした彫刻作品を制作されています。

「彫刻表現における自然科学との融合生」を テーマに、「テラコッタ(土器)による実物大の動物彫刻」 を作品化しています。

自分と同時刻的に、地球のどこかに生きている動物を、等身大に、生き生きと表現しています。

月を知るーライオンー

《月を知るーライオンー》
瀬戸優、展示テーマ「努力、妥協しない強い意志」 アニメ「ブルーピリオド」第2話より

瀬戸さん作品の中でも、今回一番大きな作品です。

たてがみのうねりやこげ茶色の色味から、連戦を重ね塗られた勲章のような汚れにもみえ、百獣の王たる自信を感じとれます。

その自信を持っていながらも、夜の月を見上げる表情には落ち着きがあり、その凛とした姿に色気が潜んでいました。

一番強い!と思っていても、自分の力では月には適わないというしなやかさを持つ強さが大事と伝えてくれているようです。

水源ージャッカルー

《水源ージャッカルー》
瀬戸優、展示テーマ「努力、妥協しない強い意志」 アニメ「ブルーピリオド」第2話より

ジャッカルは、オオカミを小さくしたような姿をしたイヌ科の動物です。

作品は等身大で制作されていて、ジャッカルは意外と小さいんだなぁと感じます。

その大きさでも生存本能は強く、古代エジプトのアヌビス神(死者の守護神、死者の眠りと来世を守る神さま)のモデルともいわれています。

可愛らしい表情の裏には生きることへの貪欲さもあるように感じ取れ、厳しくも妥協しない姿が表現されているようでした。

瀬戸優さんの他作品はこちら

須永有:視点を移動して自分の姿を問う

須永有(すなが ある)さんは群馬県出身のアーティストです。

絵筆やキャンバスなどの画材をモチーフにした作品を制作されています。

自分自身を投影した絵筆をつかい、絵の具を盛り上げ、繰り返し線を引く作業は、日々の閉塞感を打破しようという格闘と模索を表しています。

今回は自分の立ち位置や立場を置き換えた作品を展示していました。

向こう側から

《向こう側から》
須永有、展示テーマ「自覚、知る」 アニメ「ブルーピリオド」第3話より

黄色い背景を黒い影が切り裂いているようにみえる作品。

この黄色い部分は切り裂かれたキャンバスだそうで、その裏側に立つ女性が描かれています。

女性がキャンバスの裏側から鑑賞者を覗いているのかもしれません。

絵画=観られる存在だったのを逆転し、絵画の中の人物が鑑賞者を覗き込んでいるところに、伝統的な主体客体の立場を逆転させ、自分の立ち位置を考えることが物事を知ることにつながることを伝えているようでした。

視線

《視線》
須永有、展示テーマ「自覚、知る」 アニメ「ブルーピリオド」第3話より

こちらは作品《向こう側から》の連作として描かれた作品だそうです。

鮮やかな赤色を中心に塗られた中央は色が剥がされているようで、何やら目のようなものがあります。

作品を通して「自覚・知る」ということは、立ち位置を変えてみたり、新しいものに触れて固定概念を壊したりして、自分の価値観を知っていくことなのかなと感じました。

アートはアーティストの作品を通して新しい価値観や見方を発見するきっかけにもなるなと振り返れる作品でした。

國分莉佐子:記憶を軽快な筆跡で塗りつぶす

國分莉佐子(こくぶ りさこ)さんは東京都出身のアーティストです。

藝大在学中のアーティストで、幼少期に経験した知覚体験から知覚・認知プロセスへの疑問を軸に絵画制作をしています。

Unconscious memory

《Unconscious memory》
國分莉佐子、展示テーマ「自分の答え、自分の絵」 アニメ「ブルーピリオド」第4話より

「無意識の記憶」というタイトルの作品。

こちらの作品は、國分さんにとってこれまでの拠点である東京を離れ初めて制作した作品なのだそうです。

これまで行ったことのない場所に足を運び、過ごした時間の長さに応じて更新される記憶を、デジタルペンのような軽快さを持つ筆跡が走り、新しい記憶で塗りつぶそうとしているようです。

ただ、その筆跡の中はまだ具体的な景色ではなく、漠然と、でも鮮やかな色をしています。

今はまだ漠然としか先が見えなくても、それが今の自分と受け入れながら進んでいるようだなと感じました。

Crooked blue

《Crooked blue》
國分莉佐子、展示テーマ「自分の答え、自分の絵」 アニメ「ブルーピリオド」第4話より

歪んだ青い空間を切り開いた先には、大手家電量販店の看板や立ち入り禁止の板、網がみえています。

先の作品《Unconscious memory》とは具象と抽象の筆跡が逆転しているようにみえます。

青い空間にも何かが描かれているようにみえますが、それが何かまでは分かりませんでした。

そうやって自分なりの答えをつい「探して」しまう行動が大事と気づかせるような作品でした。

他展示での國分莉佐子さん作品はこちら

ブルーピリオド複製原画も展示

展示会場には、マンガの複製原画も展示していました。

「絵って趣味じゃダメですか?」という主人公の矢口の言葉に対して、美術部顧問の佐伯先生が答えるシーンが展示していました。

自分の好きなことと世間体を天秤にかけたときにどちらを選ぶか、アートに限らず、これからの進路を考えるときに心に響くシーンです。

まとめ:作品の意図が文字化され初心者におすすめ

ブルーピリオド×ArtSticker 第1会期の模様をご紹介しました。

アニメの各話のテーマをもとに作品が制作されているため、作品を紐解くヒントが多く、自分なりの答えの出し方や読み解き方ができ、それを発見できたときの楽しさがありました。

そして、作品自体の持つ凄みを直接体感できる空間となっていました。

残りの会期も観に行きたくなる展覧会でした。

展示会情報

展覧会名ブルーピリオド × ArtSticker
会場hotel koe tokyo 2F「koe渋谷」POPUPスペース
東京都渋谷区宇田川町3-7
会期2021年10月22日(金) ~2021年1月14日(金)
第1会期:2021年10月22日(金)〜2021年11月18日(木)
第2会期:2021年11月19日(金)〜12月16日(木)
第3会期:2021年12月17日(金)〜1月14日(金)
開廊時間11:00〜20:00
※ 新型コロナウイルスの影響により、変更となる場合があります。詳しくはhotel koe tokyoの公式Instagramをご確認ください。
サイトhttps://artsticker.app/share/events/783
観覧料無料
作家情報第1会期:2021年10月22日(金)〜2021年11月18日(木)
第1話 梅沢和木さん|Instagram:@umelabo
第2話 瀬戸優さん|Instagram:@yu_seto1222
第3話 須永有さん|Instagram:@aru_sunaga
第4話 國分莉佐子さん|twitter:@petrichor__xx第2会期:2021年11月19日(金)〜12月16日(木)
第5話 小津航さん|Instagram:@ozzzz0429
第6話 倉敷安耶さん|Instagram:@ayakurashiki
第7話 平田尚也さん|Instagram:@_naoya___h__/
第8話 藤川さきさん|Instagram:@fjkw第3会期:2021年12月17日(金)〜1月14日(金)
第9話 岸裕真さん|Instagram:@obake_ai
第10話 川田龍さん|Instagram:@ryokawada_0817
第11話 島田萌さん|Instagram:@moe.shimada.23
第12話 松浦美桜香さん|Instagram:@______nnnn5※展示時期・展示順につきましては、都合により⼀部変更になる可能性があります。

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ブルーピリオド × ArtSticker(ArtSticker)
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1993年生まれの会社員。東京を拠点に展覧会を巡りながら「アートの割り切れない楽しさ」をブログで探究してます。2021年から無理のない範囲でアート購入もスタート、コレクション数は25点ほど(2023年11月時点)。
アート数奇は月間1.2万PV(2023年10月時点)。
好きな動物はうずら。
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