「鬼滅の刃 全集中展」|人気の秘密は細部にわたる作り込みの美
前回は棚卸したアートに興味をもったきっかけでもお話しましたが、今でも漫画やイラスト鑑賞にもときたま足をはこんでいます。今回は、昨年から今年にかけて大人気となっている鬼滅の刃の展覧会「全集中展」にいける機会があったので、その模様について書いていこうと思います。
鬼滅の刃とは?
鬼滅の刃とは週刊少年ジャンプで連載していた漫画作品です。
舞台は、大正日本。炭を売る心優しき少年・竈門炭治郎(かまどたんじろう)の家族が鬼に襲われ皆殺しにされる、なんとも残酷な出来事から始まります。
唯一生き残ったが凶暴な鬼に変異した妹・禰豆子(ねずこ)を元に戻す為、また家族を殺した鬼を討つ為に旅に出る!
アニメ化をきっかけに人気が爆発し、映画化や舞台化もしています。特に映画化した「劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編」は、公開73日間で、『千と千尋の神隠し』の316.8億円を超え、歴代興収1位の記録を塗り替え、さらに記録を伸ばし続けています(Yahoo!ニュース)。
チケット完売からうかがえる人気
今回いってきた「鬼滅の刃 全集中展」は期間を分けて全国13地域で開催していて、私の行った東京会場は最後の会場でした。この展覧会を通して、「鬼滅の刃ってホントに人気なんだなぁ」と感じたポイントはこんな感じです。
- チケットは事前抽選での購入でしたが、抽選の時点ですべてのチケットが完売し、当日券販売はなくなった。
- チケット転売で高いものだと1枚20,000円近い金額で流通している。(ちなみに、正規価格は1,500円)
- 入場時も20分間隔でブロックを分けた入場体制をとっていて、混雑対策に厳しかった。
- 会場でのグッズ販売にも整理券が必要になっていたこと。(展覧会入場者じゃないと入れない仕組みをとっていました。)
東京は特に人が集まりやすいとは思いますが、徹底した感染対策が必要というあたりから、鬼滅の刃の人気度をうかがうことができます。
鬼滅の刃「全集中展」へ
会場内はいくつか写真撮影NG区域がありましたが、今回は撮影できたポイントをピックアップしてご紹介していきます。
1. エントランス〜藤襲山
エントランスには「鬼とはどんな存在なのか」「鬼殺隊とはどんな存在なのか」を説明する文章が大きく書かれていました。
- 鬼:日の光を浴びると焼けて灰になる代わりに、自己再生、特殊能力を持つ
- 鬼殺隊:呼吸を用いて身体能力を上げて、日輪刀という特殊な刀で鬼を狩る
この2つの勢力の対決がメインのお話ですが、双方にストーリーがあり、一概に「鬼が悪い!」ともいえないところが、作品の面白さだなぁと思います。
鬼を狩るための武器、日輪刀。
新選組の「誠」ように、背中に「滅」と描かれています。鬼を滅することに忠義を尽くすことを誓う証みたいです。
藤襲山(ふじかさねやま)の藤の花が飾られたエリア。藤襲山は主人公の炭治郎が鬼殺隊へ入隊するために訪れた場所です。
このエリアは暗めで、色味までははっきりと見えませんでした。その分、幻想的な雰囲気を楽しめる場所でした。
2. 鬼殺隊本部
続いては鬼殺隊に所属するメンバーを紹介するエリアです。
この兄妹、澄んだ水のような性格の良さで、特に炭治郎は人生2週目なんじゃないかってくらいの大人っぷりです。イラスト一つ一つが細かく描かれていて、制作者のこだわりを体感できます。
日の光を浴びると燃えて灰になってしまう鬼の禰豆子が、日中に入っていた箱。
思ったよりも小さいなと思いつつ、この箱を15歳の炭治郎少年が背負いながら旅をしていると想像すると、強靭だなとも感じます。
眠ったり気絶したりすると本来の強さを発揮する、酔拳のような変わった剣士(そのため、画像の写真も目をつむっている)。物語の中では一番年相応に等身大で、ちゃんと怖がりながらも前進していく人物です。
雷模様の出ている刀。こんな感じに刀を仕立てる鍛冶屋がすごいなと思いながら観ていました。
獣に育てられた以外は、ちゃんとした人間です。猪突猛進が歩いているような性格で、感情優先で動く姿は動物としての感性を刺激してくれるような存在だなと思います。
のこぎりのような刀。もとは鍛冶屋が研いでくれた刀を、石で打ちつけてこの形にしています。ある意味ですごい技術。
鬼殺隊の中でも精鋭メンバーである「柱」のひとりです。水の表現が独特で、この水を見るだけでも「鬼滅の刃だっ!」となるあたり、トレードマークがある作品は認識しやすく、老若男女問わず受け入れやすい作品になると感じます。
青く光る刀身。別名「色変わりの刀」とも呼ばれ、持ち主によって刃の色が変わり、色毎に特性や持ち主の適正が分かるそうです。青は「水」を現しています。
冨岡義勇と同じく、「柱」のひとりです。鬼を倒せる毒を作った、ちょっとすごい剣士です。
相手を切ることに特化していない、変わった刀。毒を入れ込むことに特化しているために、こんな形をしています。
3. 特別訓練
展覧会内にQRコードがあり、スマホを使って鬼殺隊の訓練を受けることができます。展覧会で観るだけだと飽きてしまう子どもにとっては、こういう要素もあると面白いですね。
自分の日輪刀の色が何なのかが見れるものや。
ストーリーの中で実際にある訓練をミニゲームで遊べるものもありました。
このミニゲームを一つでも成功すると、出口で「訓練修了書」がもらえます。
こういうのって、もらえると記念になって嬉しいですよね。
4. 鬼の間
アニメの中で登場した鬼が勢ぞろいしているエリア。
セリフと共に紹介されていました。怖い。
鬼は元々人間だったことから、一概に悪い存在ともいえないところが、物語を考えさせるものにしています。
5. 那田蜘蛛山の戦い
那田蜘蛛山(なたぐもやま)の戦いでは、鬼の中でも幹部にあたる十二鬼月の下弦の伍とそのメンバーとの闘いの模様を展示していました。
ここは基本撮影NGで、フォトスポットくらいが撮影可となっていました。
やはりこの水の表現が特徴的ですね。こういう表現をトレードマークにまで昇華する漫画家はすごいなと思います。
6. キメツ学園
ここは本編とは関係ないギャグ的なエリア。
学校風景が懐かしく、机ってちっちゃいなと思います。
現代にいたらこんな感じ。漫画キャラはやはりキャラが濃いなと感じます。
7. 無限列車予告
昨年からロングランで上映している映画のワンセットが置かれていました。
列車内の席。弁当の食べ終わりの山。映画の中のキーパーソンがひとりで食べたものです。
お弁当をすべて食べた張本人。見た目通りとても熱い人物で、「老いることも死ぬことも 人間という儚い生き物の美しさだ」と、男らしい言葉も残している、良きリーダーです。
鬼の幹部の中でも3番目に強い人物。映画の中ではただただ強い存在ですが、この人の過去を知ると「だから強さを求め続けていたのか」と納得できてしまうところもある、憎み切れない人物です。
映画のポスター。一枚の持つ迫力が大きいです。
煉獄杏寿郎と猗窩座の一戦。映画の見どころのひとつです。炎の太い線が力強さを出していました。
このほかにもスタッフによる書下ろし色紙展示やアニメーション原画も展示されていて、日本のアニメクオリティを支えている技を体感できる展示でした。
まとめ:写真でも伝わってくる細部への作り込み
鬼滅の刃は漫画では完結していますが、今後アニメで続編の公開が予定されているそうです。今回の全集中展はアニメ+映画の振り返りという感じの展示で、今後のアニメ化がますます楽しみになる内容だったのではないかなと思います。
気になる方は漫画で先取りしてみるのも良いかもしれません。
ちなみに、アマゾンプライム会員であればアニメを観ることもできます。
漫画ではストーリーの深みを、アニメは細部まで時間を使っていることが分かる作り込みの美を感じることができると思います。
展示写真を観て、「絵がきれいだなぁ」とか「ストーリーが気になるなぁ」というひとはちらっと見てみてください。
展示会情報
展覧会名 | TVアニメ鬼滅の刃「全集中展」 |
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会場 | 松屋銀座8階イベントスクエア |
会期 | 2021年3月23日(火)~ 4月5日(月) |
開廊時間 | 10:30~19:30(最終入場は19:00まで) |
サイト | https://kimetsu.com/zenshuchuten/ |
観覧料 | 一般1,500円(1,300円)、高校生900円(800円)、中学生700円(600円)、小学生500円(400円) ※東京会場はチケット完売のようです。 |