【作品解説】宇宙の罐詰(赤瀬川原平)|宇宙を缶詰に閉じ込めたアート
もし「明日までに宇宙を持ってきて」と言われたら、あなたならどうしますか?
今回は一休さんにアイデアを聞きたくなるようなことを発想で実現した、赤瀬川原平(あかせがわ げんぺい)さんの作品《宇宙の罐詰》をご紹介します。
作品:宇宙の罐詰
アーティスト「赤瀬川原平」ってどんな人?
赤瀬川原平(あかせがわ げんぺい)さんは1934年から2014年に活躍した、神奈川県出身の前衛美術家です。
美術家以外にもパフォーマー、小説家など多岐に渡る活動をしています。そこに共通するのは、「日常の物事を徹底して観察して、そこに潜む矛盾やおかしみをあらわにする」ことです。
その中でも、赤瀬川さんと言えば超芸術トマソンのイメージが強いです。
他にも、千円札を作品化(模型千円札)したことが問題となり、通貨及証券模造取締法違反の疑いをかけられ起訴されたことでも有名です。
参考:https://gyre-omotesando.com/artandgallery/2021-a-space-odyssey/
奔放不羈に鑑賞してみる
まずは作品を予備知識なしで観てみましょう。
スーパーに行けば手に取れる(ただし値段は高いですが)たらばがにの缶詰です。自分では買ったことないですが、貰うと非常に嬉しい奴です。
この缶詰のラベルを内側に張り付けただけの、とってもシンプルな作品です。作ろうと思えば小学生の自由研究としても作れそうなものですね。
この作品がなぜ、そこまで有名になったのでしょうか。
ラベルを内側に貼るだけで、なぜ作品になるのか
一番に疑問に思うのがこの部分でしょう。缶詰がアート作品となりうる理由には、見た目や物自体の価値以外の、赤瀬川さんがこの作品に込めたコンセプトがあるからです。
そのコンセプトは、思考の転換のおかしみです。缶詰のラベルを内側に貼りふたを閉じると、内側と外側が逆転します。すると、ずわいがにの居場所が缶詰の外側になり、外部の空間すべて=宇宙が缶の内部に梱包されることになります。
コンセプトが、一つの缶詰に意味づけをして、作品となっています。これが、アートの掴みどころがなくも面白いところですね。
アーティストのことも知って観る
コンセプトを知った上で、赤瀬川さんが実際に語った言葉も見てみましょう。
「私は蟹罐を買ってきました。そして罐切りで開けて中の蟹を食べました。蟹は私の体内に収まります。でその蟹罐をキレイに洗いました。それからレッテルを剥がし、もう一度キチンと糊をつけて、その罐の内部に貼り直します。で開けたところをもう一度戻して隙間をハンダで密封します。その瞬間!この宇宙は蟹罐になってしまう。この私たちのいる宇宙が全部その蟹罐の内側になるのです」
引用|https://gyre-omotesando.com/artandgallery/2021-a-space-odyssey/
( 東京ミキサー計画―ハイレッド・センター直接行動の記録 /赤瀬川原平 より)
もし、小学生の自由研究でこんな言葉を語り出したら、それは相当な観察力の持ち主かもしれません。
まとめ
これで、誰かに「宇宙を持ってきて」と言われたときにも解決できる発想を手に入れることができました。
他にも、世界にはいろんなコンセプトの現代アートがあります。今回のように簡単な解説だけでも、アートの面白さに気づけたのではないでしょうか。
「現代アートってよく分からないけど、意味がわかると面白いんだな」と少しでも思っていただけたなら嬉しいです。そんな体験を、イラストと簡潔な解説で「アート=やわらかい」にしてくれる、現代アート入門書「めくるめく現代アート」もおすすめです。合わせてチェックしてみてくださいね。
今回は展覧会の情報まではお伝えできなかったので、次回は展覧会についてもご紹介していきます。
ギャラリー情報
展覧会名 | 2021年宇宙の旅 モノリス _ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ |
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会場 | GYRE GALLERY(Instagram:@gyre_omotesando) 東京都渋谷区神宮前 5-10-1 GYRE 3F |
会期 | 2021年2月19日(金)〜4月25日(日) |
開廊時間 | 11:00 – 20:00 |
サイト | https://gyre-omotesando.com/artandgallery/2021-a-space-odyssey/ |
観覧料 | 無料 |
作家情報 | 赤瀬川原平さん| Twitter:@akasegawagenpei 他作品はこちらでもご紹介しています |