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大平龍一「Car Bone Dragon」|アートにコンセプトがあるとは限らない

よしてる
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アート作品には何かしらのコンセプトやテーマがあると思っていませんか。私自身、仮に明示されないにせよ作家の中にはコンセプトがあると思っていました。今回はそんな固定概念を見直す機会をくれた、大平龍一さんの展覧会「Car Bone Dragon」についてまとめています。

この記事を読むと、こんなことが分かります。

  • 大平龍一さんの展覧会「Car Bone Dragon-」の雰囲気を味わえる。
  • アートはテーマやコンセプトがるとも限らないということが分かる。
  • 作品を通して「自分がしたいという方向性で動いてみて楽しいことを続ければいい」ということが分かる。

それでは、観ていきましょう!

大平龍一とは?

大平龍一(おおひら りゅういち)さんは1982年生まれ、東京都出身のアーティストです。2011年に東京藝術大学大学院 美術研究科彫刻専攻にて博士号を取得されています。

これまでに、バーナーで燃やしカーボナイズ(炭化)させた木彫や、上下逆さまで自立する果物の彫刻、棒状の木彫とボウリングのボールを合わせた彫刻などを制作しています。

彫刻に様々な手法を加えた作品、インスタレーションを国内外のギャラリーやアートフェアで発表をしています。

生活の中で考え方が変化していくように、作品制作に一貫したテーマはこれっ!と決めているわけではないようです「日々の変化をありのまま愉しめばいいじゃん!」と作品を通して語りかけているようだなぁと感じます。

展示タイトル「Car Bone Dragon」とは

車、骨、ドラゴン。展示しているものの言葉をただ並べているようです。

今回の展覧会は、大平龍一さんが旧車ストリート・レーサー・ファクトリー「水野ワークスをゲストに迎えた作品を展示するものでした。

水野ワークスとは?

展覧会を通して水野ワークスを初めて知りましたが、街で見かける市販車とは一線を画す、旧車を「俺/私の車!」らしさ全開の改造車を製作している会社です。

近年、大平龍一さんの作品のモチーフとしてきた改造車。それと、改造車のカルチャーを旧車の改造で業界を牽引してきた水野ワーク。この二つが掛け合わさったインスタレーションを展開していました。

インスタレーションとは?

とても簡単に言うと、「設置」することを意味する言葉で、「作品の設置された空間そのものがアート」 という概念です。

展示作品を鑑賞

まるでスポーティーなキングギドラ

《Midnight Hecate Dragon RS》
2020、大平龍一、Burnt zelkova、Camphorwood、Hiba、Gold Plate、H240 × W250 × D100cm(a set of 3)

車からトランスフォーしたような三つの頭を持つドラゴンが、スタバの前にドドンッ!と設置されていました。周りには子分的に見える犬2匹が吠えています。

こちらの作品は2020年に、心斎橋PARCOのリニューアルオープンで開催された「JP POP UNDERGROUND curated by NANZUKA」で発表し話題となった作品だそうで、東京では今回が初の展示となりました。

この容姿、ゴジラシリーズに登場するキングギドラのようです。

胸元に大きく彫られた「RS」という文字。どこかの企業ロゴかと思い調べてみたところ、主にスポーティーな走りを意識したクルマに広く付けられる「Racing Sports」の略称がありましたが、実際には「Ryuichi Specials」が正しい解釈とのことです。

2021年3月9日追記

こちらは「Ryuichi Specials」の略でした。
90年代にメルセデスなどを過激に改造していたKoenig(ケーニッヒ)というドイツのメーカーがあり、そこの制作した車のグリルにKoenig Specialsのロゴが入っていて、今回はそこから着想を得たようでした。

ダブルミーニングでもいいかもしれないですね、とコメントいただきました。優しい。。!大平龍一さんありがとうございます!

シンプルに骨

《hone#6,7》
2021、大平龍一、Camphorwood、acryllic paint、hone#6:H118 × W40 × D25cm/hone#7:H87 × W23 × D19cm

粗削り感が際立っている骨。手前の《hone#7》は樹皮がはがれかけていて、パッと見ただけでは作品なのだろうかと思ってしまいます。キャプションを見ても、honeとしか書かれておらず、作者の意図を読むことが難しいです。

ここで、ひとつ問いが湧いてきました。「現代アート=意図/コンセプトがあるもの」という固定概念ができてしまっているのではないかというものです。

コンセプトのある作品(コンセプチュアルアート)の方が作品として理解がしやすく、ファンも付きやすいと思います。鑑賞者にとって作品を味わう糸口がありますしね。

一方で、そのコンセプト自体に作家が縛られてしまうジレンマも起きるのかもしれないと思いました。時代の変化と共に、作家/鑑賞者の環境は変化していくし、その時代に対して問いかけたいことや、自身の興味も変わってくるはずです。
変化の激しい時代において、コンセプトを決めるのは不変の見方をしていくこととも捉えることができて、良くも悪くも縛りが生まれるんだと感じました。

honeというシンプルな作品名から、コンセプトを求めすぎることなく「日々の変化をありのまま愉しみ表現する」ことも大事であると教わったようでした

《hone#2,3,4,5》
2021、大平龍一、Camphorwood、acryllic paint、hone#2:H44 × W15 × D12cm/hone#3:H27 × W13 × D9cm/hone#4:H22 × W11 × D8cm/hone#5:H51 × W25 × D8cm

ちなみに、色付きもありました。

まとめ:アートにコンセプトがあるとは限らない

平龍一さんの作品を通して、アート作品の鑑賞においてコンセプトを求めすぎることなく「日々の変化をありのまま愉しみ表現する」ことも大事ということに気づけました。

また、大平龍一さんは「根のように広がり、ありのままに制作する  現代美術家 大平龍一氏 インタビュー」の中で、「何に一番悩まれますか」という質問に対して、こう話しています。

自分の才能の無さに!(笑)なぜ自分はこんなつまらない作品しかできないのだろう、と日々悩みます。私は自分の過去作品にはあまりこだわりがなく、作るところが興味の頂点というか……。もちろんできた作品も大切ですが、やはり作り終わったものは、それまでのやりたいことであり……終わった時点ではその次の作りたいものアイデアが生まれているので、その新しいことで頭がいっぱいになります。それをどう作れるのかということをずっと考えてしまいます。

根のように広がり、ありのままに制作する  現代美術家 大平龍一氏 インタビューより引用

彫刻家として生きている人でも、才能の無さに悩むことがあるんだと不思議な親近感を得ました。

周りと比較すると、自分の欠点に目が行ってしまい自分の才能の無さに打ちひしがれることもしばしば。ただ、才能は他人があくまでも他人の評価であって自分がしたいという方向性で動いてみて楽しいことを続ければいいということを学べました。

良い鑑賞のひと時を過ごせました。

展覧会情報

展覧会名彫刻家 大平龍一 feat. 水野ワークス 「Car Bone Dragon」
会場銀座 蔦屋書店 スターバックス前平台(Instagram:@ginza_tsutayabooks/@ginza_tsutayabooks_art
東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX 6F
会期2021年2月2日(火)〜2月28日(日)
サイトhttps://store.tsite.jp/ginza/event/art/18477-1206040201.html
作家情報大平龍一さん|Instagram:@ryuichiooohira

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ABOUT ME
よしてる
1993年生まれの会社員。東京を拠点に展覧会を巡りながら「アートの割り切れない楽しさ」をブログで探究してます。2021年から無理のない範囲でアート購入もスタート、コレクション数は25点ほど(2023年11月時点)。
アート数奇は月間1.2万PV(2023年10月時点)。
好きな動物はうずら。
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