ギャラリー
PR

中村萌「inside us」|自分自身の主であれるかに目を向けられるアート

よしてる
記事内に商品プロモーションを含む場合があります

今回は京橋にあるギャラリー椿にて開催した中村萌さんの個展「inside us」の模様をご紹介します。

この記事を読むとこんなことが分かります。

  • 中村萌さんとその作品について知れる
  • 個展「inside us」に込められた意味を知れる
  • 自身の内面と多角的に向き合える展示に触れられる

特徴的な表情をした、どこか可愛らしい作品と、個展に込められた意味を読み解いてみました。それでは、観ていきましょう!

中村萌とは?

中村萌(なかむら もえ)さんは東京都生まれのアーティストです。

在学中は洋画専攻でしたが、絵に煮詰まっていた頃に受けた立体制作の授業をきっかけに、彫刻作品の制作もするようになり、現在は共同アトリエで作品制作を続けています。

2014年に開催した「Taipei Toy Festival」で発表した限定フィギュアを発端に国内外で注目を集め、2019年の個展「remember you」では事前予約で作品が完売したそうです。

また、2012年からはギャラリー椿(東京)にて隔年で個展を開催されていて、今回の個展が4回目の開催となります。

純粋無垢な表情をした子どもの彫刻作品

中村萌さんの作品には、際立った喜怒哀楽をもたない、独特な表情をした子どものモチーフが登場します。高校生の頃にはこのモチーフを描いていたそうで、どこか作家の面影を残しているようにも見えます。

素材には主に楠(くすのき)を用いていて、「木目のねじれの強さが表情に個性を持たせる」のだそうです。

喜怒哀楽のない、だけど物腰柔らかな独特な表情からは、鑑賞者の持つ感情に合わせて見せ方を変えていくようです。そういった意味で、あらゆる感情を持った人へも共感を生み、心地よい感情を生むのかもしれません

個展「inside us」のコンセプト

「inside us」とは直訳すると「私たちの内面」といった意味になります。

そこには、目に見えない不安と閉塞感が漂い続ける今、ひとりひとりの抱える拭いきれない孤独のようなものに寄り添うことができたらという願いが込められています。

ひとりでいる時間が増えた今、作品を通して自分の内面との対話する時間をくれます。

個展「inside us」を鑑賞

それでは、展示作品の一部を観ていきましょう!

行く道照らす輝きは、自分の中に

inside me その1

《inside me》
2021、中村萌、楠,油彩、170 × 117 × 96cm

展示会場中央に置かれた、展示作品中で一番大きな作品です。穏やかな表情は展示空間を優しさで包んでいました。

顔の上で渦巻く髪の毛のようなモチーフは先端に近づくにつれ金色に輝いています。

まるで、ぐるぐると答えのない問題を考えることもあれど、考えることに時間をかけるから自分にとって納得できる答えが導けると、語りかけているようでした。

inside me その2

《inside me》
2021、中村萌、楠,油彩、163 × 48cm

立体作品と同じモチーフが、平面作品としても展示していました。こちらの表情は目がほんのりと開いていたり、口元もホーっといった感じで開いています。

自分の胸元に髪の毛のようなものを入れているの姿が自身の中を探っているようで、その中はかすかに輝いているように見えます。北極星のように行く道照らす輝きは他人ではなく自分の中にあり、折に触れて会いに行くことが大切といっているようでした。

楠の香りも豊かに、森林浴しているような気持ちにもなりました。

視点を変えて見える景色

inside us-7

《inside us-7》
2021、中村萌、ブロンズ,油彩、38 × 16 × 15cm

一見丸太から彫り出したように見えますが、ブロンズでできた作品です。本展覧会のタイトルと同じ名前の作品でもあり、色違いで9人、丸太の上に立っていました。

《展示風景》

いろんな丸太の高さで、いろんな向きで、いろんな色である姿に、多様性という言葉を連想していました。

どんな状況や境遇からでも、今からちょっと視点を変えてみるだけで見えてくる景色も変わるんだよと、そんな言葉が聞こえてきそうでした。

彼方まで続く意志

whereabouts of star

入口付近のくぼみの空間に、小さな作品もちょこんと展示していました。

小人の乗っている箱には”whereabouts of star(星の行方)”と書かれているようです。その星とは、頭上に咲いている菱形のことを指しているのかなと思います。

輝く源は自分の中にあって、それが星のように輝くようになり、星の行きつく先で自分自身を頭上から照らすものになる、そんなワンシーンなのかなと感じました。

中庸が大切と感じた作品

Untitled

《Untitled》
2021、中村萌、キャンバス,油彩、162 × 130.3cm

立体作品の展示がメインですが、大型の作品も展示していました。

何かモヤモヤとしたことがあるような表情をした子は、頭から煙が出ているように見えます。その煙が、背景が見えなくなるほど溜まっているようです。

モヤモヤするほど何かに悩むことは、ときに周りの景色を霞ませてしまうこともあります。その状況は、閉塞感を感じる今の状況のようにも見えます。自分の中から生まれた煙に飲み込まれない程度、つまりは中庸が大切ということを表しているようでした。

六甲ミーツアート2020出展作品なども展示

今回の展示には新作はもちろん、六甲ミーツアート2020で展示していた作品や、これまでのフィギュア作品も展示していました。フィギュア作品も可愛らしかったです。

VRでオンライン鑑賞も

今回の展覧会はVR空間上で閲覧ができます

なかなか現地に足を運べない、改めて空間に浸りたい、そんな時に画面越しに観に行けるのはありがたいですね。

まとめ:自分自身の主であれるかどうかに目を向ける

中村萌さんの作品を観ていきました。

程よく考えること、そして、自分自身の道標を照らす光は自分の中から見つけられることが、個展全体を通して表現されていたのかなと感じました。

個人的には「自分自身の主であれるかどうか、心が自由であるかどうか」が、不確実な世の中を歩むうえで大事なのかなと感じました。優しい香り漂う展覧会でした。

展示会情報

展覧会名inside us
会場ギャラリー椿
東京都中央区京橋3丁目3−10 第一下村ビル 1F
会期2021年9月3日(金)~9月25日(土)
※日・月・祝 休廊
開廊時間12:00~18:00(時短営業中)
サイトhttp://www.gallery-tsubaki.net/2021/Moe_Nakamura/info.htm
観覧料無料
作家情報中村萌 さん|Instagram:@moenakamura_art

参考リンク

今回の展覧会は、2つのギャラリーでの同時開催となっています。ポーラ ミュージアム アネックスにて開催した個展については、こちらにまとめているので、合わせてご覧ください。

あわせて読みたい
中村萌「our whereabouts-私たちの行方-」|表情の魅力を探るようなアート
中村萌「our whereabouts-私たちの行方-」|表情の魅力を探るようなアート

他展示での中村萌さん作品はこちら

最新情報はInstagramをチェック!

ABOUT ME
よしてる
1993年生まれの会社員。東京を拠点に展覧会を巡りながら「アートの割り切れない楽しさ」をブログで探究してます。2021年から無理のない範囲でアート購入もスタート、コレクション数は25点ほど(2023年11月時点)。
アート数奇は月間1.2万PV(2023年10月時点)。
好きな動物はうずら。
記事URLをコピーしました