美術館・博物館

「KAWS TOKYO FIRST」|KAWS(カウズ)の魅力を因数分解する

こんにちは!よしてる(@uzuraism_)です。

今回は六本木にある「森アーツセンターギャラリー」にて開催したKAWS(カウズ)さんの大型個展「KAWS TOKYO FIRST」の模様をご紹介します。

この記事を読むとこんなことが分かります。

・KAWSがなぜ有名なのかが分かる
・作品の持つ特徴とその意味が分かる
・「KAWS TOKYO FIRST」の展示作品について分かる

今回の個展は、ポップカルチャーの巨匠KAWSの国内初の大型展覧会となりました。

KAWSとはどんなアーティストかから本展の展示作品まで、幅広くご紹介していきます。

KAWS(カウズ)とは


KAWSとは1974年生まれ、アメリカ・ニュージャージー出身のアーティストです。

本名はブライアン・ドネリー(Brian Donnelly)さんといいます。

ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動しており、絵画、壁画、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、ストリートアート、巨大彫刻など多岐にわたる作品はアートとデザインの世界を軽やかに駆け回り、アートファンのみならず数多くの人々を魅了し続け、この20年で確固たるキャリアを確立してきました。

グラフィティーの一種、タギングから生まれたサイン「KAWS」

《UNTITLED(ORANGE FENCE)》
2002、Acrylic on canvas over panel

1970年代から80年代当時、公共の場所に落書きをするグラフィティーが流行っていたころ、10代だった当時はスケートボードに夢中で、スケーターのカルチャーと密接にかかわりのあるグラフィティーと出会います

グラフィティーとは?
スプレーやフェルトペンなどを使い、公共の壁などにイラストや文字の落書きを描くことです。

グラフィティーにはいくつか種類があり、そのうちのひとつに自分のサインを描く「タギング」というものがあり、学生だった1990年代初めから「KAWS」という名前でタギングを始めます。

ちなみに、KAWSという言葉に特に意味はなく、文字の並びと音に響きが好きで決めたのだそうです。

「KAWS」というサインを描くことが自身の存在のアピールであり、他のストリート仲間とのコミュニケーション手段でした。

その後、ニューヨークの美術大学を卒業して3年間はアニメーターとして働き、ディズニー映画の101匹ワンちゃんの背景セル画などを担当し技術を磨きました

1990年代中期には、街中の電話ボックスやバス停の広告に独自のオリジナルキャラクターを描き足し広告の意味を改変する「サブバータイジング(Subvertising)」というスタイルのストリートアートで有名になります。

このサブバータイジングで知名度をあげ、アメリカ、ロンドン、パリ、日本などで注目され、ファッションと作品との親和性も同時に発信することも相まって、一躍有名になりました。

作品の特徴:目の箇所に×印をほどこした色彩豊かなキャラクター


《UNTITLED(COMPANION CLOSE UP)GREY》
2013、Acrylic on canvas

KAWSはポップカルチャーのアニメーション作品からインスピレーションを受け、とりわけ、目の箇所に×印を施した色彩豊かなキャラクター作品の数々はKAWSの代名詞となっています

巨大彫刻や、線や色彩を強調したペインティングなど、KAWSによってハイブリッド化されたキャラクターたちは、KAWSが探求しつづける「人間の本質」を体現しています。

さまざまな既存のキャラクターを意図的に取り込んみ、××の目に書き換える手法は「アプロプリエーション」といわれるものです。

KAWSがアプロプリエーションによる表現を選んだのには、日本への来日経験が影響しているのだそうです。

1997年、初めて日本に訪れた際は日本語が分からず、コミュニケーションに大変苦戦したのだそうです。

そんな中、よく知る有名なキャラクターの商品が街に並んでいるのをみて、言葉や文化の垣根を超えたパワフルな共有感を体感しました。

「アートはコミュニケーションだ」と考えているKAWSが、誰もが知るキャラクターを共通言語として表現するのは、世界中の人がアートに親しみを持って対話できるようにするためなのかもしれません。

手に取りやすい作品も多く手掛けている理由

KAWSは絵画や彫刻作品だけでなく、ファッションブランドやフィギュアといった、比較的手に取りやすい形でもアート作品を展開しています。

そこには、KAWSのこんな想いがあるそうです。

絵画や彫刻は気軽に買えないかもしれないけれど、Tシャツやフィギュアだったら手に入るかもしれない。それもまた作品だし、世界中のたくさんの人に作品と対話してほしい。

その人にあった形のアートを選択できるようにして、アートを自由に楽しめる機会をつくっているようです

そこには、グラフィティ・アートの先駆者、キース・へリングがいった、「1億円のアートを世界の少数のコレクターに売るのではなく、1ドルのアートを1億人に流通させたい」という言葉を継承しているようにも感じます。

ペインティング作品の制作過程

KAWSは大小数多くの作品を制作していて、例えばペインティングの制作工程はアシスタントとともに進めています。

■ペインティング制作工程の一例

  1. KAWS自身が手書きでドローイングする
  2. スキャンしてパソコンに取り込む
  3. 画面上でコラージュし、構成を検討する
  4. 色を決め、プリンタで出力した線画にそれぞれの色の絵の具を付けた綿棒の先で点でポイントし、絵の具のナンバリングをメモした指示書のようなものをつくる
  5. アシスタントが指示書のようなものをみて、一緒に作品を完成させる

作品の高い生産性があるからKAWSの作品が世界に発信でき、認知されていることが分かります。

展覧会名「KAWS TOKYO FIRST」について

展覧会名「KAWS TOKYO FIRST」は2001年に渋谷パルコで開催された日本初個展とあえて同じタイトルにしています。

そこには、「原点回帰」という想いが込められています。

今回の展覧会は、制作初期の作品から最新作までの絵画や彫像、プロダクトなど20年に渡り制作した150点を超える作品を展示しており、そのユニークな芸術制作の軌跡や美術史的意義をたどることができます。

個展「KAWS TOKYO FIRST」の作品を鑑賞

KAWSについて知ったところで、展示作品を観ていきましょう!

大型彫刻「コンパニオン(COMPANION)」がお出迎え

《UNTITLED (COMPANION CLOSE UP)GRAY》
2013、Acrylic on canvas
会場に入ると、KAWSのシンボル的なキャラクターである「コンパニオン(COMPANION)」がお出迎えしてくれます。

コンパニオンとは「仲間」という意味で、1999年、日本のストリートファッションブランド「バウンティーハンター」からのオファーで来日した際の出会いから生まれたのだそうです。

KAWS自身「コンパニオンは家族の一員のような存在」というほど重要なモチーフです。

こちらの人体模型のような作品は、「オリジナルフェイク」というKAWS自身が立ち上げたアパレルブランドのオープン記念に制作した、40cmフィギュアがもととなっているようです。

この作品を見ていると、

  • 生と死
  • 彫刻作品とおもちゃとの狭間
  • 「オリジナル」と「フェイク」という相反するふたつの意味を持つブランド名「オリジナルフェイク」を象徴する作品

と、さまざまな解釈ができる作品です。

KAWSスタジオシーンを再現

更に奥に進むと、ブルックリンにあるアトリエの一室を再現したスペースにたどり着きます。

このスペースだけで、なんと50個もの作品が展示されています。

個人的には《HOLIDAY SPACE》という、宇宙服を着用したコンパニオンが探索気球を使って41.5kmの成層圏に突入し、宇宙空間を2時間漂い地球に帰還した作品が観れたのが良かったです。

また、壁にはKAWS自身が保有するプライベートコレクションも展示していて、

・1960年代後半から70年代にかけてシカゴで活躍したジム・ナット
・初期のポップアートに参加していたピーター・ソール

など、さまざまなアーティストの作品も展示していました。

広告を改変する「サブバータイジング作品」

左から《UNTITLED(MOSCHINO)》、《UNTITLED(DKNY)》、《UNTITLED(CALVIN KLEIN)》、《UNTITLED(US)》
1997、Acrylic on existing advertising poster

アパレル広告の顔をコンパニオンに改変した、サブバータイジング作品というスタイルのストリートアートも鑑賞できました。

不思議なのが、広告にKAWSのイラストが溶け込んでいるように見えることです。

パーツごとに単色で発色良く描かれていて、かつ筆跡が見当たらない作風が、まるで「そういう広告」のように見せているのかもしれません。

《UNTITLED(DIESEL)》
1998、Acrylic on existing advertising poster,mounted on wood panel
「なぜ広告に書き足すスタイルを選んだんだろう?」という疑問に対して、KAWSはこんなコメントをしています。

町中に溢れている広告に人は目も止めることなく通り過ぎていく。だけど、いつもと変わったことがあったら気になるでしょ?次に同じ広告を別の雑誌なんかで見つけたときに、みんな僕のことを思い出すんだ。

作品を発信する場所として、KAWSにとって広告は最も適したキャンバスだったのかもしれません。

有名なキャラクターの目を××にした「アプロプリエーション作品」

《IN THE WOODS》
2002、Acrylic on canvas over panel in 3 parts

《UNTITLED(KIMPSONS)》
2004、Acrylic on canvas

コメディーアニメやディズニーに出てくるキャラクターなど、見たことのあるキャラクターを用いたアプロプリエーション作品が多く展示されていました。

例えば、ザ・シンプソンズに登場するキャラクターの面影はしっかりと感じられる一方で、頭がドクロになっていたり、××の目に書き換えたりして、KAWS独自の色もくわえられています。
(シンプソンズ:SIMPSONSの頭文字をKにして、キンプソンズ:KIMPSONSと、名前も微妙に違います)

誰もが知るキャラクターを共通言語として、親しみからアートに触れる機会をつくっているように見えます。

《CHUM(KCC3)》
2014、Acrylic on canvas over panel

タイヤメーカーのマスコットキャラクター「ビバンダム」から着想を得た、KAWSの「チャム(CHUM)」というキャラクターです。

チャムとは和訳すると「仲良し、親友」という意味になります。

通路の突き当りの壁に掛けられているためか、こちらに向かってきているように展示していました。

ピーナッツのキャラクター「スヌーピー」と「ウッドストック」も、独特の線の揺れも再現していながら、目は××になっています。

目の書き換えだけでもKAWSと紐づけられてしまう知名度の高さを感じます

おもちゃの箱ように梱包された「絵画作品」

《UNTITLED(KIMPSONS),PACKAGE PAINTING SERIES》
2001、Acrylic on canvas in blister package with printed card,Canvas
フィギュアやおもちゃが入っている箱のように、キャンバスがプラスティックの箱に包まれた作品。

フィギュア作品も多く制作しているKAWSだからこそ、おもちゃの箱に作品があるのもしっくりくる感じがあります。

キャンバスに描かれた絵画作品は額装をしたりと、しっかりとしたものに収めるイメージがありますが、KAWSは資産や文化の垣根を取り外してアートを発信している側面もあるため、プラスチックもれっきとした額装に入るのかもしれません。

子どもの頃に感じたフィギュアの箱を開けるときのワクワク感を、アートでも感じてほしいと考えているのかもしれません

過去と今がひとつなぎであることを感じる作品「FIVE SUSPECTS」

5枚のカラフルな作品は、ピーナッツのキャラクター「スヌーピー」をかたどっているようですが、その中身には違うキャラクターも描かれているようです。

《FIVE SUSPECTS(#ONE)》
2016、Acrylic on canvas
《FIVE SUSPECTS(#TWO)》
2016、Acrylic on canvas

《FIVE SUSPECTS(#THREE)》
2016、Acrylic on canvas
《FIVE SUSPECTS(#FOUR)》
2016、Acrylic on canvas
《FIVE SUSPECTS(#FIVE)》
2016、Acrylic on canvas

KAWSの作品は、どんな作品も全部以前作った作品と一続きに繋がっているのだそうです。

20年分の作品を展示している個展だからこそ、その道筋も垣間見れる良さがあるなと感じます。

ちなみに、筆の跡が全くといっていいほどないのですが、これはキャンバスにプリントされているわけではなく、アクリル絵の具で描かれているという部分も注目です。

場所と規模にとらわれない「AR彫刻作品」の展示

《COMPANION(EXPANDED)》

会場内では、ARを通して大型彫刻作品を楽しめる空間もありました。

通常の大型彫刻作品では、設置する場所の環境を加味した数多くの準備の上ではじめて完成します。

一方のARは、場所と規模の可能性が無限です。

KAWSにとってARによる展示方法は、鑑賞者が経験できることのクオリティの高さを感じる手法なのだそうです。

こうした試みも軽やかに取り入れるところにも魅力があるのかもしれません。

あらゆるものが抱える苦悩を表現した作品「NEW TURN」

《NEW TURN》
2020、Acrylic on canvas

マンガのように、ワンシーンずつ展開していく作品。

最初はタイヤメーカーのマスコットキャラクターから着想を得た、KAWSの「チャム」が登場します。
チャムの中からセサミストリートのエルモの目が××となっているキャラクタが飛び出してきます。

そこからさらにKAWSの「コンパニオン」が登場。
さらに、青い毛並みをこさえた「BFF(ビーエフエフ)」も登場。
最後にはそれらすべてが銃で撃たれたような描写が描かれます。
一見暴力的なイメージを感じるところですが、KAWS曰く、暴力を表現しているのではなく、疲れ切って打ちのめされたあらゆるものが抱える苦悩を表現しているのだそうです。

「カウズ ボブ(KAWS BOB)」のパーツにクローズアップした作品

《CAUGHT IN THE CURRENT》
2013、Acrylic on canvas in 18 parts

トンドといわれる形式で描かれた作品です。

トンドとは?
トンドとは、円形のキャンバスに描かれた絵画で、「円形の」を意味するイタリア語が語源といわれています。15世紀から16世紀のイタリア・フィレンツェを中心にルネサンス時代によくつくられた伝統的な絵画形式で、主に聖書の物語が描かれました。

18枚それぞれには、スポンジボブを引用したキャラクター「カウズ ボブ(KAWS BOB)」の目玉や口元などの身体の各パーツをクローズアップして描かれています。

一つの部分や特徴をクローズアップすることで、観ている人たちはそのイメージからどんな感情を引き出すことができるか考え始める。それは、闇の中をよろめいて、さまよいながら絵の近くで自分の道を見つけるような体験だ。

作品によってアートはどこに注目すればいいのか分からず、なんとなく見て通り過ぎてしまうことがあります。

見るべきポイントを絞るところまでを作品化することで、鑑賞者は観ることに集中して自分の中に生まれる感情を楽しめるようにしているように見えます

各展示室に置かれた「大型彫刻作品」

《COMPANION(RESTING PLACE)》
2013、Aluminum,paint
入口で出迎えてくれたコンパニオンはじめ、その後も各展示室で大型の彫刻作品が展示していました。

人体模型のような作品は黒い表面とカラフルな内臓が対照的で目を引きます。

このパワフルな色使いは老舗のアクリル絵具ブランドを用いていて、中には特注の色もあり、原色で塗ることで発色が良くなるのだそうです。

この手法は、アニメーターとして働いていた時に学んだ手法なのだそうです。

《GONE》
2018、Bronze,paint
コンパニオンに抱えられるBFFの彫刻作品。

疲れ果てたように見えるBFFを抱えるコンパニオンの表情が、どこか心優しい印象があります。

《FAMILY》
2021、Bronze,paint
コンパニオン、チャム、BFFと、これまでに登場してきたKAWSの代用的なモチーフが、家族写真のように並んでいました。

20年分の作品を観てきた最後の展示作品が家族のような作品というのも、身近にある幸せから広げていこうと訴えかけているように感じました。

「KAWS:PLAYTIME」で記念撮影も

Make a Friend for BFF
(BFFのためにともだちを描こう)

BFF and Friends
(BFFとおともだち)

展示会場を出ると、体験型の記念撮影スペースがありました。

動画のなかでBFFと一体化したり、BFFのために絵を描いて、友達とシェアもできるようになっていました。

まとめ|KAWS作品の魅力を因数分解できる個展

《WATCHING》
2018、Bronze,paint

国内における最大規模となるKAWS作品を鑑賞していきました。

ひとりのアーティストの歴史を知ると、KAWSの作品が人気になる理由が見えてきます。

私自身が鑑賞して感じた魅力を因数分解してみたところ、

  • 有名キャラクターの引用や広告に書き足すといった世界的に認知が広がるような取り組み
  • KAWSとすぐに紐づくモチーフを育ててきたこと
  • パワフルな色彩へのこだわり

が世界中の人を引き付ける理由なのかなと思いました。

KAWSとは何者なのか、自身のコメントを最後に引用します。

ぼくは自分が何者なのか、枠にはめた定義づけはしないようにしている。たえずオープンマインドで、柔軟性をもってそのとき興味があることをやっていくのが自分には一番合っていると思っています。何を作るにしても、朝起きるのが楽しみになるような、自分がやっていて幸せに感じられるようなものをつくっていきたいです。

展示会情報

展覧会名KAWS TOKYO FIRST
会場森アーツセンターギャラリー
東京都港区六本木6丁目10−1 六本木ヒルズ森タワー 52階
会期2021年7月16日(金)~10月11日(月)
開廊時間10:00~20:00
(入館は閉館の30分前まで)
休館日:8月5日(木)
※開館時間変更日:7月19日(月)は17:00まで
サイトhttps://www.kaws-tokyo-first.jp/
観覧料<平日>
一般 ¥2,500
大・高校生 ¥2,000
中・小学生 ¥900
<土日祝>
一般 ¥2,800
大・高校生 ¥2,300
中・小学生 ¥1,200
作家情報KAWSさん|Instagram:@kaws
KAWS TOKYO FIRST|Instagram:@kaws_tokyo_first

関連書籍

  • KAWS TOKYO FIRST – 2021/7/30

本展の画集です。ボリューミーな展示と同じく厚みがあり読み応えがあります。

  • カウズ・ハンドブック – 2021/9/15

誰でも楽しめるKAWS入門書!本展でも登場したグラフィティ、絵画、プロダクトデザイン、巨大彫刻など、さまざまな表現領域を軽々と越境するKAWSは何を表そうとしているのかを紐解いた書籍です。

ABOUT ME
よしてる
東京でアート巡りををしながら「アートの割り切れない楽しさ」を探究している理系男子です。会社員をしながら、週末アートウォッチをしています。 2021年から無理のない範囲でアート作品の購入も始めました。 好きな動物はうずら。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA