山口歴「LISTEN TO THE SOLITUDE」vol.2|枠を超えた先の景色を楽しむアート
今回は銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUMにて開催した山口 歴さんの個展「LISTEN TO THE SOLITUDE」の模様をご紹介します。
この記事を読むとこんなことが分かります。
- 山口歴(やまぐち めぐる)さんの新たな試みに触れることができる。
- 銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM「LISTEN TO THE SOLITUDE」で展示中の作品を知れる。
- 作品がさまざまに展開していく過程をみれる。
今回の記事はOIL by 美術手帖にて同時開催した個展「LISTEN TO THE SOLITUDE」vol.1の続きとなります。では作品を観ていきましょう!
山口歴とは?
山口歴(やまぐち めぐる)さんは東京都渋谷生まれのアーティストです。2007年に渡米し、ニューヨークのブルックリンを拠点に活動されています。
高校時代に渋谷のストリートカルチャーに親しみ、現在は数々の企業やブランドとのコラボも積極的にしています。
- 「OAKLEY(オークリー)」ココロ・コレクション、2021年モデルのライフスタイル型アイウェアとアパレル
- 「UNIQLO(ユニクロ)」2021年コレクション
- 「HUF(ハフ)」2020年アパレルカプセルコレクション
山口歴さん自身昔から好きなストリートカルチャーとのコラボレーションから、作品のことを知ったという人もいるかもしれません。
ちなみに、世界的にも現代アートとのコラボレーションは行なわれていて、最近では奈良美智さん自身初となるファッションブランド(ステラ マッカートニー)とのコラボも話題となりました。
「LISTEN TO THE SOLITUDE」個展のテーマ
今回の個展「LISTEN TO THE SOLITUDE」のテーマは、”孤独の声に⽿をすますことで、⾃⾝の⼼が届けてくれた⼼象⾵景、そして⾃⾝や⾃然、地球や宇宙に流れるエネルギー”です。
今回は2会場での同時開催となっていて、メイン会場となる銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUMでは山口歴さん初の試みに触れることができます。
- 立体作品
- 過去最大級のサイズの作品
- マルチカラーに挑戦した平面作品
- 2⼈の写真家との新たなコラボレーション作品
銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUMの広々とした空間を最大限活用した、大型サイズの作品がメインで展示されていました。
「LISTEN TO THE SOLITUDE」展覧会の作品を鑑賞
それでは、銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM会場の模様をご紹介していきます。
PROMINENCE(プロミネンス)シリーズ:平面から立体へ
PROMINENCE NO. 1
「PROMINENCE(プロミネンス)」とは太陽表層に雲のようなガス体が表れる現象です。勢いよく吹き出す深紅色の炎状に見えるため、紅炎(こうえん)と呼ばれることもあります。
勢いよく噴き出すそのエネルギー、迫力やスケールを作品として表現しています。
ブラシストローク(筆跡)で表現してきた《OUT OF BOUNDS》シリーズはキャンバスの枠から飛び出した自由自在なサイズ表現をしてきましたが、平面作品という意味では、枠から飛び出す余地が残っていました。
高精度な3Dプリンターを用いることで、ブラシストロークが平面を飛び越え立体となったという意味では、またひとつ枠を超えて進化した作品といえます。
ブラシストロークと太陽の現象「プロミネンス」の親和性もあって、作品の放つエネルギー感が直接的に伝わってきました。
また、手のひらサイズのエディション作品も展示していました。こちらは抽選販売もしていました。
MÖBIUS(メビウス)シリーズ:過去最大サイズの作品
《MÖBIUS》シリーズ
MÖBIUS(メビウス)シリーズは今回初鑑賞となりました。
メビウスと聞いて一番最初に思い出すのが、メビウスの輪です。メビウスの輪とは、帯状の長方形の片方の端を180°ひねって、他方の端に貼り合わせた形状の図形のことです。
半ひねりが1回入っている構造からは循環・再生をイメージできるため、デザインとしてもリサイクルマークなどに利用されています。
今回は2つのシリーズが展示してあり、両者とも弧を描くようにブラシストロークが施されていました。ブルーやブラック、ホワイトのブラシストロークを組み合わせをよく観てみると、一線一線にねじれが意識されているように感じます。
メビウスの輪のようなねじれを入れているようで、作品に込められたエネルギー感が絶えることなく循環しているように見えました。
OUT OF BOUNDSシリーズ:マルチカラーに挑戦した平面作品
《OUT OF BOUNDS》シリーズ
これまではブルーやブラック、ホワイトといった配色が、《OUT OF BOUNDS》シリーズの代表的な色彩でしたが、今回は赤や緑、蛍光色といった、挑発的な色彩の作品も展示していました。
特に、赤やオレンジなどの色彩が炎のようにも見えることで、これまでのブルーの色彩が高温な炎のように見えてきます。
作品を横からみると樹脂でコーティングが施されていて、独自の質感に仕上がっているのが分かります。
ENERGY FLOWシリーズ:写真家とのコラボレーション作品
展示の外周には2人の写真家、瀬尾宏幸(せお ひろゆき)さん、伊丹豪(いたみ ごう)さんとのコラボレーション作品が展示していました。
《ENERGY FLOW》シリーズ
アメリカ在住の瀬尾宏幸さんは、アリゾナ州セドナで不思議な形をした樹木を撮影しています。
セドナでは「ボルテックス」と呼ばれる渦巻き状に旋回するエネルギーが大地から発せられているともいわれていて、その影響を受けてか樹木も不思議な形状となり、米国内でも有数のパワースポットとされています。
独自のねじれた形状をした樹木の写真をメタルプリントし、そこに山口歴さんのブラシストロークが加わった作品となっていました。
メタルという無機的な人工物の上に、樹木という有機的なモチーフが表現されることで、両極的な要素を相反させながら取り合わせられないか、という試みがなされています。
伊丹豪さんの作品は、都会的で無機質なモチーフを捉えた作品となっていました。そこにブラシストロークが重なることで、有機的なものと無機的なものの対話が繰り広げられるようでした。
まとめ:枠を超えた先の景色を楽しむ
「LISTEN TO THE SOLITUDE」のメイン会場、銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUMの展示を観ていきました。大型作品を多く展示し、また、立体作品への新たな挑戦も鑑賞できる、見応え十分の内容でした。
アートの世界で長く利用されている筆、そのブラシストロークのみで力強く、カッコいいを追及し続けている作品を観て、こだわり尽くしているからこそ響く作品となることを体感しました。
枠を超えた先の景色にたどり着くものには、感覚的ですが、作り手が作品と向き合た分のエネルギー感が反映されているような気がします。
この先にも期待をもちたくなる、そんなところに魅力の本質が隠れているのかもしれません。
展示会情報
展覧会名 | LISTEN TO THE SOLITUDE |
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会場 | 銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM 東京都中央区銀座6丁目10−1 SIX6階 |
会期 | 2021年8月30日(月)〜2021年9月14日(火) ※やむを得ない事情により会期変更の可能性もあります。 |
開廊時間 | 10:30~20:00 ※新型コロナウイルスの影響により、開廊時間が変更となる場合があります。詳細は銀座 蔦屋書店WEBサイトでご確認ください |
サイト | https://meguruyamaguchi.bijutsutecho.com/ |
観覧料 | 無料 |
作家情報 | 山口歴さん|Instagram:@meguruyamaguchi |