【ZINE紹介】Bateau-Lavoir 現代アートの語り場|コレクター発信の書籍からアートへの興味を深める
作家やコレクターはどんな想いを持ってアートと向き合っているのでしょうか。
そこにはアートに興味をもったきっかけがあるはずで、その興味を知ることで、今まで知り得なかった「アートの面白みを広げる」きっかけにできるかもしれません。
今回はそんなきっかけにもつながる、現代アートコレクターの播磨勇弥さんが自主制作されている書籍、ZINE「Bateau-Lavoir 現代アートの語り場」をご紹介します。
Vol.1、Vol.2の内容を踏まえた感想レポートを3つの観点に厳選してまとめていくので、気になった方は実際にチェックしてみてください!
ZINE「Bateau-Lavoir 現代アートの語り場」とは?
ZINE「Bateau-Lavoir 現代アートの語り場」とは、現代アートコレクターである播磨勇弥さんが制作されている、コレクター発信の自主制作書籍です。
播磨勇弥さんは関西のアート情報・アーティストインタビュー・オークション予想などを発信するアート情報サイト「週末の。アート」を運営し、アートコレクター展 Collectors’ Collective vol.4 Osaka」(2021、TEZUKAYAMA GALLERY、大阪・南堀江)にも参加されている方です。
こうした様々なアートプロジェクトを進行している方の視点も交えた「現代アートに関わる様々な立場の人の声」が集まった書籍となっていて、読み進めていくうちにアートの面白みに触れていけるような内容となっています。
ちなみに、書籍タイトルにもある「Bateau-Lavoir(バトー・ラヴォワール)」とは、フランスのパリ・モンマルトルにあった集合アトリエ兼住宅のことです。
20世紀初頭に活躍したパブロ・ピカソさんはじめ多くの著名な芸術家がアトリエを構えつつ、文学者、俳優、画商らが活動の拠点としていた場所です。
ここでパブロ・ピカソさんの代表作《アビニヨンの娘たち》(1907)が描かれ、キュビスムが誕生した場所としても知られています。
「Bateau-Lavoir 現代アートの語り場」感想レポート
「Bateau-Lavoir 現代アートの語り場」を読んで良かった・勉強になったところを3つに厳選して、感想レポートをまとめていきます。
①様々な人の視点から現代アートの面白みが言語化されている
本誌には作家やコレクター、ギャラリーディレクターなど、現代アートに関わる様々な立場の人から見たアートの面白みが紹介されています。
その文章はまるで顔見知りに話すような物腰柔らかな口調で、まさに誌面上で追体験するアートの語り場、バトー・ラヴォワールのようです。
例えば、田村琢郎さんと播磨勇弥さんの対談にあった、「いかにリミッターを外せるか」という内容の話が印象に残りました。
自分の在り方は大切にしつつも、できる/できないの判断は自分勝手に決めたリミッターなのかもしれないと、気づきをもらえました。
このような気づきも、現代アートの面白みを物腰柔らかに言語化しているから、自然と言葉が身体に入ってくるのかもしれません。
そんな体験の場が企画ごとに含まれていて、アートがさらに好きになりました。
②こだわりの製本に凝縮されたアート作品と企画の掲載
A4サイズの冊子には企画内容に応じたアート作品がページいっぱいに掲載されていて、こだわりを感じる製本となっています。
例えば、名和晃平さんや田村琢郎さん、一林保久道さん、その他にも多彩なコレクション作品が紹介されていて、知る人が見れば「この作品も載ってる!」と、心躍る作品を見ることができます。
また、企画については
- 作家×コレクター対談
- アートの現場
- 忘れられないアート
- ART COLLECTOR INTERVIEW
- My Art Collection
といった内容で構成されています。
特に印象的だったのが、「忘れられないアート」に出ていた名和晃平さんのインスタレーション作品《Tornscape》についての話です。
自分自身、本誌で紹介されている京都の二条城での展示は観にいけず、東京・日暮里にあるSCAI THE BATHHOUSEで鑑賞しましたが、インスタレーション作品の力はもちろん、展示する場所との関係性について考えるきっかけになりました。
アートへの興味が広がる企画ばかりで、特にアートをこれから知っていきたい・コレクションを始めていきたい人にとっては、多様なコレクションのスタイルを知ることができると思います。
これは自分の体験談ですが、アートコレクションに興味を持った時に、アートコレクションの魅力や疑問を誰かに聞ける環境がなく、どこから情報を取っていいのかもわかりませんでした。
こうした冊子を通じて現代アートの作家やコレクターがどんな人なのか、どういうことを考えているのかに触れることで、現代アートを理解していく機会を作っていけます。
また、アート作品は掲載までに作家やコレクターへの許諾が必要と想像できますが、そのハードルを超えて多彩な作品を冊子で観れるようにしている点も素敵です。
③アート初心者に優しい用語集
各冊子にはコレクターや作家だけではなく、これからアートを楽しみたい人にも分かりやすいように、「用語集」もついています。
現代アートに触れていくとわかりますが、普段の生活では聞かないような言葉と遭遇することが多々あり、アートの理解に進む前につまずくこともあります。
こうしたつまずきが無いように道筋を整備してくれているのも良心的です。
まとめ
今回はZINE「Bateau-Lavoir 現代アートの語り場」をご紹介しました。
アート系メディアが発信するものとはまた違った、自主制作だからこそ表現できる制約のない自由さや、温かみのある文章でした。
Vol.1とVol.2を読んで感じたのは、アートは立場関係なくコミュニケーションができるとより深く楽しめるのでは、ということでした。
まるで茶道の茶室みたいに、普通だったら会えない人とでもアートを通じて身分関係なく繋がり、好きなことで語り合える場のようだなと感じる一冊でした。
現代アートに携わる様々な立場の人が見ている景色を誌面を通して共有してくれているからこそ、自分自身だけでは見れなかった景色を広げられた、という感覚がありました。
「Bateau-Lavoir 現代アートの語り場」を通じて、あなたなりの現代アートの面白さを発見してみてはいかがでしょうか。
また、「週末の。アート」にはZINE制作に関する想いがまとめられていますので、そちらもぜひご覧ください。
関連リンク
- 現代アートコレクター 播磨勇弥さんについてはこちら