三島喜美代 常設展「 KIMIYO MISHIMA Installation」|溢れるモノ・情報の産物に没入するアートスポット
新聞紙や缶ゴミなどの廃棄物に”割れる危うさ”を加えられたアート作品を、年間通じて楽しめるアートスポットがあることをご存知でしょうか?
今回は「ART FACTORY 城南島」にて展示している三島喜美代さん作品の常設展「 KIMIYO MISHIMA Installation」の模様をご紹介します。
要点だけ知りたい人へ
まずは要点をピックアップ!
- 「ART FACTORY 城南島」では倉庫建物を再利用した館内に、三島喜美代さんの大小さまざまな作品を常設で展示。
- 三島喜美代さんは1932年、大阪府生まれの美術家。
- 代表作は印刷物を陶で作った「割れる廃棄物」。
- 廃棄物を割れやすい焼き物の陶器に置き換えることで、「溢れる情報への危機感や情報化社会の現代性」や「脆さ、不安感、危機感」を表現しているといわれています。
本記事では展示作品のうち、9作品をご紹介します。それでは、要点の内容を詳しく見ていきましょう!
三島喜美代とは?
三島喜美代(みしま きみよ)さんは1932年、大阪府生まれの美術家です。2022年で90歳となった今も現役で活躍されていて、地元と岐阜県土岐市を拠点に制作をしています。
画家であった女学校の担任の先生や、父親に油絵の道具を譲ってもらったことがきっかけとなり、高校卒業後に絵画の道を志します。
画家の三島茂司さん(後の喜美代さんの夫)に影響を受けて、作品は具象画→抽象画→コラージュ作品へと発展していきました。
代表作は「割れる廃棄物」の陶器作品
三島喜美代さんの代表作は陶で作った「割れる廃棄物」で、1971年に初めて制作したそうです。
新聞や雑誌などの印刷物は読み終えたら無用のゴミとなることに着目した作品で、廃棄物を割れやすい焼き物の陶器に置き換えることで、「溢れる情報への危機感や情報化社会の現代性」や「脆さ、不安感、危機感」を表現しているといわれています。
ちなみに、作品が生まれた経緯は、アトリエの床に丸まった状態で転がっていた新聞紙を見て、「立体は小さくとも存在感があって面白い!」と思ったことなのだとか。
展示作品を鑑賞
屋外にある作品
三島さんの作品展示は会場に入る前から始まります。
Work S-10
入口目の前に置かれた作品です。ドラム缶の廃棄物や、新聞紙が印刷されたものがひしゃげながら積み上げられています。
てっぺんをよく見ると木が生えているのが分かります。まるで作品が植木鉢のような役割も果たしているようです。
Work 14-TM
《Work S-10》の反対側にも作品が置かれています。一見するとただの岩か、溶岩っぽくも見えるこちらも、実は三島さんの作品です。
ゴミを燃やしたときに出るスラグ(ゴミ処理後の灰)や陶、鉄などをFRP(樹脂)で固めて作られているみたいです。
ゴミを分別・リサイクルして残ったものを焼却処分して残った、何者にもなれなかったゴミを、自然に帰しているような作品だなと感じます。社会が生み出す膨大な製品の反対側を見ているようで、感慨深いです。
Box Lemon-80
ショーウィンドウには三島さんの代表作が展示されています。段ボール箱、コカコーラの空き缶、丸めた新聞紙の見た目をした陶の作品。
版画の技法でパッケージをプリントしていて、そこに手彩色を行うことで制作しています。
館内にある作品
館内には大型作品を中心に作品が展示されています。
Wreek of Time 90
屋外にあった《Work 14-TM》と同じく、FRPで固めてつくられた作品が16個並んでいます。作品には火山灰の他に、1990年代のゴミを燃やしてでたスラグ(ゴミ処理後の灰)も混ぜているそうです。
ブロックの上には陶でできた新聞紙が置かれていて、遠目では本物の新聞紙に見えますが、近くで観るとヒビが入ったものもあり、陶で作られていることが良く分かります。
大量生産・大量消費が生み出す姿と、その危うさが現れているようです。
Box Charcoal-N13
ビンを新聞紙で包んだものが、段ボールに収められた作品も。
堆積し続ける膨大なゴミに着目し、環境問題や現代社会が抱える不安や恐怖を、三島は「乾いたユーモア」で包み、表現しています。
ー作品解説より引用
増え続けるゴミを処分してもスラグは出てしまうし、その処理にもお金がかかります。それをゴミで覆い隠して、見たくない部分は見えないようにしているようです。
覆い隠しているものも新聞紙やダンボールといったゴミなので、むしろゴミを増やしているところに、「乾いたユーモア」を感じます。
Newspaper08
ポリエステル製の新聞紙で覆われた箱の中は迷路になっていて、日々触れている情報量に迷い込むような空間も作品として展示されています。
迷路は陶製の新聞紙の束を積み上げて出来ていて、電球のみの照明で薄暗く、不安感を煽るものになっています。
インターネットの普及により、1990年代から2000年にかけて情報の流通スピードが加速し、今では紙媒体で情報を入手する機会も減ってきました。そんな中で「情報を物理的に捉えると、このくらいの量になるんだよ」と訴えているようです。
作品に使われた新聞は1970年〜2000年頃までに三島さんが旅行した訪問先から持ち帰ったものなのだそうで、約30年間の情報の膨大さも感じるものになっていました。
Work 92-N
迷路の中にもあった新聞紙の束や雑誌を積み上げた作品。重厚感を感じる一方で、2階通路から見下ろすと中身は空洞になっていることが分かります。
そんなところから、情報精査し、中身の無いものを見分けることの重要性が表現されているようでもありました。
Work 2000-memory of 20th Century
1900年から2000年の過去100年間の新聞記事を選び、古い煉瓦に転写した作品です。煉瓦は作品制作で陶を焼き上げるときに敷くものを再利用していて、全部で約1万600個並べられています。
作品制作で使ってきた煉瓦を三島喜美代さんの歩んできた歴史として捉え、作品に昇華しています。
煉瓦の表面には国内新聞の記事、裏面には海外新聞の記事が転写されています。記事は文字までしっかりと読むことができます。
Work 14-S
展示の奥には、すのこに骨組みがつけられ、その上にダンボールが屋根のように乗せられています。
この作品には瀬戸内海東部にある豊島にかつて不法投棄された廃棄物のスラグが使われています。豊島は「アートの島」として知られている場所ですが、そこにあったゴミをリサイクルし作品化されていて、環境問題に対してのメッセージを感じ取ることができます。
ダンボールに貼られたガムテープまでもが再現されていて、見応えがあります。
城南島で三島喜美代さんの作品を楽しもう!
ARTFACTORY城南島は三島喜美代さんの大小さまざまな作品を一堂に楽しめるスポットです。展示も常設となっているので会期を気にする必要がなく、無料で作品鑑賞を楽しむことができます。
リサイクルされることなく何者にもなれなかったゴミが、三島喜美代さんのユーモアをもってアートへと昇華された作品を観に行ってみてはいかがでしょうか。
展示会情報
展覧会名 | 常設展 KIMIYO MISHIMA Installation |
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会場 | ART FACTORY 城南島 1Fおよび屋外各所 東京都大田区城南島2-4-10 |
会期 | 常設 ※観覧は日時指定の予約制。予約はこちらから。 |
開廊時間 | 12:00~17:00 |
サイト | https://www.artfactory-j.com/ |
観覧料 | 無料 |
作家情報 | 三島喜美代さん|HP:https://mishimakimiyo.com/ |