【図解 初めての絵画】親子で読みたい図鑑に込められたアートを楽しむ3つの工夫
知識の宝庫、図鑑。恐竜や植物、星座、乗りものなど、様々な図鑑がありますが、あまり見かけない「子ども向けのアート図鑑」が仲間入りしました。
今回はこちらの「図解 はじめての絵画(小学館の図鑑NEOアート)」を実際に読んだ感想を交え、面白いと感じたポイントをまとめていきます。
小学生から中学生を境に「美術好きが激減」
まず、一般的に子どもは美術をどれくらい好きなものなのかみてみましょう。
学研教育総合研究所による「小・中学校の日常生活・学習に関する調査(2020年)」によると、美術は13歳となる中学生を境に好きではなくなる割合が最も多い科目で、11.3%も減少してしまうといわれています。
グラフを見ても、美術は小学生で2位の人気があるにも関わらず、中学生になった途端に8位に急落しています。
子どもから大人まで「美術を楽しむ視点」に気づける図鑑
自分自身、学生時代を振り返ってみると、美大進学しない限り受験で使わない科目であることや、美術の楽しみ方や評価基準は授業で教わらず分かりづらかったことから、自然と触れなくなっていったように感じます。
子どもの頃に「美術を楽しむ視点」をひとつでも知れていたら、アートへの興味を持ったまま過ごせたかもしれません。
その美術の中でも、絵画を楽しむ視点を知れるのが「図解 はじめての絵画」です。
子ども向けの図鑑ですが、実にシンプルにアートの面白さを伝えてくれるので、大人にとっても発見の多い図鑑となっています。
絵画を楽しむための3つの工夫
「図解 はじめての絵画」は、日本と世界の名画が約360点掲載されています。その掲載方法には絵画を楽しむための工夫が凝らされています。
ここでは、図鑑を実際に読んでみて感じた、絵画を楽しむための3つの工夫をご紹介します。
1. 興味が湧くテーマをもとに絵画を知れる
特定の絵画について、なぜ有名で、どんなところがすごいのかといった、ひとつの絵画について複数の情報を教えてくれるものは多い一方で、図鑑では興味が湧くテーマをもとに絵画を紹介する方式が特徴的です。
興味が湧くテーマの例として「ヒーローはだれよりもかっこよく!」、「衣服の柄にこだわりあり!」、「モデルのいない絵」などがあり、絵画を見るためのポイントをいろいろな角度から紹介しています。
この部屋の主役はだれ?
例えば、こちらの絵画は「この部屋の主役はだれ?」というテーマで紹介されています。主役はだれだと思いますか?
合計11人が描かれている作品で、一見すると中央に描かれた少女が主役に見えますが、そこではありません。
答えはぜひ、図鑑でチェックしてみてください。
この絵、ちょっと変!?
また、こちらの絵画は「この絵、ちょっと変!?」というテーマで紹介されています。
硬いはずのものがぐにゃぐにゃに描かれた絵は現実ではあり得ないと感じますが、解説を通じて夢の中の風景を作り出していることに気づけるようになっています。
このように、どう見ていいのか迷子になりがちな絵画について、鑑賞するためのひとつの道筋をカラー図解付きで示してくれ、理解を助けてくれます。
2. 自分なりの発見をはぐくむ手がかりが見つかる
絵画の中には作家による様々な工夫が凝らされています。この工夫を知ることで、他の絵画やアートを観るときにも応用していけます。
鏡に映る、もうひとつの場面
例えば、こちらの絵画は「鏡に映る、もうひとつの場面」というテーマで紹介されています。
劇場にあるバーの女性店員を描いた作品ですが、その背後に描かれているのが「大きな鏡」であることに気づけると、女性がどんな景色を見ているのかが分かります。
言われたらなんてことはない、ちょっとした気づきですが、こうした「気づき」が積み重なることで、他の作品を見た時にも描かれている情報以上に発見できることが増えていきます。
また、作品紹介の中には別角度から描いた図解イラストも掲載されているので、描かれた場所をさらに詳しく知ることができます。
金色が表す特別感
また、色に注目したページをみると、例えば金色は
- 永遠に輝き続けることから、愛の永遠さを表す
- 輝きにより尊さを表し、神秘的で華やかな雰囲気を作り出す
- 宗教画であれば、暗い教会の中で輝くことで神聖さを出す
など、作品によって様々な解釈ができることを教えてくれます。
他にも長い歴史の中で生まれた絵画の約束事や、描くために必要な道具についても紹介されているので、絵画を見るだけでは気づけないことを知るきっかけになります。
3. 絵画を鑑賞する空間の工夫も知れる
絵画の見方を知ったなら、実際に作品を鑑賞して試してみたいと思う人もいると思います。
「図解 はじめての絵画」では美術館を例に、空間づくりの工夫から美術館の裏側までがまとめられています。
例えば、
- 展示する絵画の中心を同じ高さ(約150cm)に合わせていることが多い。
- 絵画に合わせて照明も入念に調整されている。
- 展覧会以外にも見えない部分で資料の収集・保管・調査研究、教育活動といった「公的な役割」を果たしている。
など、良い鑑賞体験に向けた工夫からそれ以外の美術館の楽しみ方まで知ることができます。
作品鑑賞する「目のはたらき・能力」にも注目
図鑑の終盤には絵画を鑑賞するために必ずみんなが使う「目のはたらき・能力」についても紹介されています。
その中で、じっくり観ることの重要性を感じたのは「目に映っていても見えないもの」という説明文でした。
人間の目の網膜には、色を感じる錐体細胞が約600万個、明るさを感じる桿体細胞が約1億2000万個ある一方で、目が感じたことを脳に伝える神経節細胞はわずか100万個程度しかありません。
単純に細胞数だけで比べた場合、目で見た情報の0.8%ほどしか脳に伝わっていないことになります。
だからこそ、観た情報を脳にしっかりと伝えるためには、図鑑の中で紹介されているようにどんなことが描かれていて、何を表そうとしているのかを意識して、考えながら観ることが大切であることに気づかされます。
まとめ
今回ご紹介した「図解 はじめての絵画」は子ども向けの図鑑ですが、絵画の見方というのは学生時代に教わってこなかった部分であるという点で、大人にとっても学びがあります。
図鑑を通して、小・中学生の好きな科目1位だった算数/数学のような「正解を見つける力」だけでなく、図工/美術のような「自分なりの答えをつくる力」も楽しみながら身につけてみてはいかがでしょうか。
参考書籍
※サムネイル画像はAmazonから引用し作成しています。