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平子雄一「GIFT」|自然と人間の関係性を問う(VR鑑賞も可能)

よしてる
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今回は天王洲にあるKOTARO NUKAGAにて開催した平子雄一さんの個展「GIFT」の模様をご紹介します。

平子雄一とは?

平子雄一(ひらこ ゆういち)さんは岡山生まれのアーティストです。

ペインティングを中心にドローイングや彫刻、インスタレーション、サウンドパフォーマンスなど、多岐にわたる表現方法を用いて、『現代社会における自然と人間との境界線を問う作品』を制作しています。

自然に恵まれた岡山で育った後、ロンドンに渡った際に、都会の人々が嗜好する自然が人工的に制御されたものであることに違和感を覚えたことがきっかけなのだとか。以来一貫して自然と人間の関係性をテーマに作品を制作しています。

展覧会名「GIFT」の意味

今回の展示「GIFT」というタイトルは、「絶え間なく変化を続ける自然環境にともない、人々の自然に対する価値観も変容していくことに着目し」て名付けたそうです。

そこには、人間に都合よく消費されていく自然(プレゼントの花や御神木など)について考えさせられるものがあります。

自然と人間の関係性を見返す鑑賞

それでは、実際の作品を鑑賞していきましょう。今回はいくつかある作品の中で、僕が気になった作品4つをピックアップしてご紹介します。

その他にも見応えのある作品ばかりなので、気になった方は天王洲まで足を運ぶか、VRで観てみてください。

1.人と自然の間で見え隠れする上下関係

《Gift 02》
2020、平子雄一、Acrylic on canvas、Each:259.0 × 194.0cm/Overall:259.0 × 582.0cm

展示の中でも大きな作品で、3枚の絵画をひとつに繋げた作品です。

両端には大きな花瓶が置かれていて、この間観たルドン、ロートレック展の《グラン・ブーケ(大きな花束)》を思い出しました。

蝶々が近づいてきそうな程に色鮮やかな花々は人間目線では立派で、美しい存在に映りますが、個人的には花瓶の下に横たわっている草たちが気になりました。

想像するに、花を剪定した際に出たものだと思いますが、人の判断で切られた草たちを花たちが見て悲しんでいるようにも見えてきました。
花屋さんに行ったときに、どういう気持ちで買おうか、、そんなことを考えていました。

中央の絵画に目を移すと、角をはやした木の頭をした人が積まれた本の上に座っています。

ギターやラジカセとった、人の趣味によってつくられたものは下部に、植木鉢は比較的上部に描かれているようです。

本は技術や進化に必要な知識の象徴かなと考えると、知識が本のように積み重なり高度になったとしても、自然は強く、同等であると語りかけているように感じました。

アーティストのテーマを知った上で観ると、人と自然の間に上下関係がないことが表現されているように感じます。これは、平子雄一さんの制作に対しての想いからもうかがえます。

平子雄一は作品の中で「自然や植物を人や構造物と同等のものとして扱っています。人間の生活圏では植物の力がコントロールされ、必要ないものは排除される存在(=弱者)ですが、それらを同じレベルのものとして扱い混在させることで、人と植物の境界、内と外との境界が曖昧な状況を創造して」いると言います。

GIFT|KOTARO NUKAGAより引用

見れば見るほど、都会に住む自分にとって自然との向き合い方を考えさせられる作品でした。

2.都会でも自然への優しさを持とうと思った作品

《Bark 48》
2020、平子雄一、Oil pastel on canvas、Framed:138.4 × 114.5cm/Image:122.2 × 101.3cm

木の顔をした人が、見慣れない果物を抱えている絵画、とても暖かい雰囲気があり展示スペースの雰囲気にもマッチしていていいなぁ、と感じました。

後光のように、背景も夕日を反射した海のように明るく、おとぎ話を聴いているような、そんな温かみのある場所です。

その果物に見えるものは大事に抱えられていて、きっとそんな姿からも優しさを感じたのだろうなと思います。自然から切り取った都会の植物へも、こんな優しさを持ってほしい、そんな言葉が聞こえてきそうです。

なぜ鹿の角のようなものが生えているのだろう、というのが他の作品にも共通して疑問でした。
アンテナ、葉の生えなかった枝、それとも別の何か、何の象徴なんだろうなと、ギャラリーで聴いてみたらよかったなぁとちょっとした後悔はしつつも、分かるときに分かろうと思います。

3.引き出しに大切にしまうように、植物を扱う

《Gift 01》
2020、平子雄一、Acrylic on canvas、259.0 × 194.5cm

中央付近にある灰色の巨木がマンガのコマ取りのようになっていて、3つの場面が描かれているように見えます。

まずは下部の愉快な部屋から観ていくと、猫ちゃんと木の顔をした人間が食事中の風景が描かれています。

構図で観ていると、引き出しと机の角度が歪んでいるように見えます。まるで、引き出しの中をあえて見せるかのような見た目で、そこには鉢や花瓶が置いてあり、大事に扱う対象であるというメッセージが潜んでいそうです。

次に、左上にあるお花のバケットには、暖色系の花々と、蔦状のヘビがいるのが特徴的です。
背景が焚火のような、淡い赤色のようにも見えます。

そして、右上は本が積まれた上に瓶が置いてあり、筆や花火が置かれています。ここだけ自然のモチーフが無いようで、この空間だけ少々違和感を感じました。

パッと見た目ははなやかそうな作品の中をよく見ると不思議さも垣間見える、そこに魅力を感じる作品でした。

4.かわいさの中にある主張を感じた作品

《Seeding 01》
2020、平子雄一、Mixed media、100.0 × 80.5 cm/Maximum 5cm thickness partially

真正面で観るとつかみにくいですが、横から見ると木の顔部分が盛り上がっている作品です。
この作品が飾ってある場所が、ギャラリーの中で第二会場みたいな個室にあって、暖色の照明空間になっていて、日向で絵画鑑賞しているような感覚になりました。

背景には多様な花々と何かが描かれていて、季節感すら判然としません。

これは想像ですが、もしかしたらその花の一番輝いている瞬間を描いているからなのかもしれません。一番きれいな瞬間を切り取る人間に「これらの景色だけが花の輝いている瞬間ではない」と語りかけているようです。

可愛らしい姿の内側にはしっかりとした主張を持っているように感じました。

おまけ:現地に行けない人はVRで鑑賞可能

今回の展覧会はなんと、VRでのオンライン鑑賞ができます

実際の画面はこんな感じです。感覚的に操作できて、作品の解像度も高いので本当に作品を観ている感覚になります。技術の発展ってすごいですね。

「東京に行くのはちょっと。。。」という方はぜひ、お試しください。

まとめ:自然をみる視点に変化が起きる

平子雄一さんの作品たちはひとつひとつが温もりをもちながらも、自然との付き合いかたを考えさせられる時間になりました。

みなさんにとっては、どんなふうに観えましたか?鑑賞方法も多様化しているので、これを機に観てみてはいかがでしょう。

展覧会情報

展覧会名平子雄一「GIFT」
会場KOTARO NUKAGA(TERRADA ART COMPLEX Ⅰ / 3F)
会期2021/01/23(土) – 2021/04/03(土)
開廊時間11:00~18:00 (火-土)
※日月祝休廊
※開廊時間、入場制限等につきましては随時変更の可能性あり。
サイトhttps://www.kotaronukaga.com/projects/gift/
観覧料無料
平子雄一さん情報twitter:@yuichihirako
Instagram:@yuichihirako

関連書籍

他展示での平子雄一さん作品はこちら

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ABOUT ME
よしてる
1993年生まれの会社員。東京を拠点に展覧会を巡りながら「アートの割り切れない楽しさ」をブログで探究してます。2021年から無理のない範囲でアート購入もスタート、コレクション数は25点ほど(2023年11月時点)。
アート数奇は月間1.2万PV(2023年10月時点)。
好きな動物はうずら。
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