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TIDE「BLOOM」|モノクロームに潜むノスタルジアな世界観と技巧を描いたアート

よしてる
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今回は原宿 神宮前にあるThe Massにて開催したTIDEさんの個展「BLOOM」の模様をご紹介します。

ねこをモチーフにしたモノクローム作品を知る人はもちろん、TIDEさんを初めて知る方にとっても作品の世界観を楽しめるおすすめの展覧会です。

TIDE(タイド)とは?

TIDE(タイド)さんは1984年生まれ、静岡県出身のアーティストです。

20代前半に滞在していたオーストラリアでゲゲゲの鬼太郎で有名な漫画家・歴史家の水木しげるさんの作品に出会い、独学で絵を描き始めます。

2009 年に東京に戻りアーティストとしての活動を本格的にスタート、鉛筆や水彩絵の具、アクリル絵の具などの技法を模索しながら、一貫してモノクロームの世界を描き続けています

ロンドン、ニューヨークでもグループ展の発表を行うなど海外でも活躍されていて、今回の個展は2020年に「IDETATSUHIRO(イデ・タツヒロ)」から名義を「TIDE(タイド)」に変えてから2回目の展覧会になります。

参考:名義変更の理由について

今後海外に軸足を置いて活動していきたいという想いから、名義変更に至ったそうです。作家のサインを書く際に、TATSUHIRO IDEを略して“TIDE”と書いていたことから海外ではTIDEとして認知されていたこと。そして、「IDETATSUHIRO」と区切りなく書いていたために海外では間違った区切りで呼ばれることがあり、誤解をなくすために、2020年から名義を変更し活動をしているそうです。

また、TIDEさんは2020年10月3日にSBIアートオークションにて開催された「Modern and Contemporary Art / LIVE STREAM AUCTION」で話題になったことが記憶に新しいです。

出品されたF100号(130.3 × 162.4cm)の作品《TWO OF US》(2019年)が予想落札価格100〜150万円に対して数多くの入札が集まった結果、4400万円の落札(取引手数料15パーセントを加えて5060万円)となり、若手アーティストとしては珍しい高騰に注目が集まりました。

子供時代の原風景やノスタルジアを混在した世界観

TIDEさんは「1930年代から1950年代の古いハリウッド映画やアニメーション」に大きく影響を受けているそうで、昔のアニメーションのように

  • 背景は「リアルな3次元」
  • キャラクターは「フラットな2次元」

の構成で、ひとつのキャンバス上で2 次元と3 次元のモチーフを組み合わせた作品を制作しています。

作品のテーマには「子供時代の原風景やノスタルジア(※)」といった、普遍的なテーマを混在させて、独自の絵画世界を確立しています。

特にTIDEさんといえば、2019年から制作している「CAT」シリーズに描かれる可愛らしいねこのモチーフが浮かぶ方も多いのでは。このねこは最初ぬいぐるみのねこから描き始まり、次第にフラットなねことなっていき今のモチーフに至っています

※ノスタルジアとは、故郷を遠く離れた所にいて、さびしさに苦しみ、故郷を恋しがることです。

個展タイトル「BLOOM」の意味

本展のタイトル「BLOOM」は直訳すると「(特に観賞用の)花、開花期、花盛り」という意味があり、TIDEさんの作品に登場する花のイメージを意味すると同時に、アーティストとしてのTIDEさんのアイデンティティを表すメタファー(隠喩)でもあるそうです。

一つの絵画上に現れる多様な表現技法や構図は複雑さとディテールに満ちたものへと進化していて、その絵画技術は短期間で大きく躍進しています。

そんなTIDEさんが今後さらなる芸術的挑戦を通して進化していくようにとの想いも込められたタイトルになっています。

個展「BLOOM」の作品を鑑賞

展示会場であるThe Massは3つの部屋に分かれていて、部屋ごとに異なる展示構成となっていました。今回は各部屋ごとに作品をピックアップしてご紹介していきます。

Room01:「CAT」シリーズ

OVERLAP

《OVERLAP》
2021、TIDE、Acrylic on Canvas、1620 × 1303 × 60mm

1つめの会場に入って、まず最初に目に入るのが《OVERLAP》という作品です。

前景には花をベットのようにして深く座っているねこが頬杖をついて、こちらを見つめています。花の後ろにあるつぼみの形と、茎のとげが表現されているところから、おそらくバラではないかと予想できます。

ねこの足の部分をよく見ると花びらの重なり部分が透けているように表現されていて、ねこが花の中にいると認識できるようになっています。

後景にはアクリルとスプレーを用いた立体的な景色が描き込まれていて、柔らかな生地を感じるグラデーションは扇子を広げたような見た目になっています。

左上にはドリッピング(絵の具を垂らすことで作品を制作する技法)にも見える描き込みが見えたりと、この一枚の中にこれまでキャンバス上でしてきた実験の積み重ねが反映されているようでした。

花のつぼみが後ろにあり、さらに上へ伸び見切れてたもうひとつのつぼみ(であろう)から、「これから開花する次のステージがあり、その上まだ見えぬつぼみも見据え挑戦し進化する」という感情が表現されているように感じました。

COMPO

左から
《COMPO:R》
2021TIDE、Acrylic on Canvas、Canvas:1620 × 1303 × 60mm、Shaped Canvas: 700 × 620 × 60mm
《COMPO:C》
2021、TIDE、Acrylic on Canvas、Canvas:1620 × 1,303 × 60mm、Shaped Canvas:700 × 485 × 60mm
《COMPO:L》
2021、TIDE、Acrylic on Canvas、Canvas:1620 × 1303 × 60mm、Shaped Canvas:700 × 510 × 60mm

次の作品は、Room01で大きく目立っていた3つの大作です。

ねこがキャンバスから飛び出しているようになっていて、二次元と三次元の相互作用を追求した表現となっています。

面白いなと感じたのは、ねこがシェイプドキャンバスとなってキャンバスからでてきている一方で、ねこ自体はフラットな表現のまま変わらないということです。

そのため、後景にあわせてねこがベッドの上にいるように見える位置を探る人や、「ねこがいなくなった空間はどうなってるんだろう」と気になり後ろをのぞき込む人がいたりして、鑑賞する人の目線を動かしてしまう仕掛けにもなっているように感じました

そして、気になるねこの後ろは、「鈎爪(かぎづめ)」と思われるものが1つ添えられていました。

これまでの絵画表現を継承しつつ、シェイプドキャンバスをある種彫刻のように展示する、新たな試みを感じる作品でした。

METEOR

《METEOR》
2021、TIDE、Acrylic on Canvas、2273 × 1818 × 60mm

こちらの作品は《COMPO》シリーズの反対側の通路つきあたりにある作品です。

《METEOR》とは直訳すると「流星、隕石」という意味で、後景に見える光の筋がそれかなと想像できます。

光の筋がガラス越しに見ているかのように途切れて描かれているため、おそらく中央にある十字は窓枠なのかもしれません

モノクロの世界にあらゆる表現を描き込んでいてずっと観ていたくなる一方で「どうしてカラーで描かないんだろう?」と、疑問に思う人もいるかもしれません。

作家曰く、カラーの作品制作は考えていないようで、「シルエットをキレイに表すことがとても好きなので、カラーにすることでそれがぼやけてしまい、インパクトが薄れてしまう(TOKION)」ため、モノクロで表現を続けているようです。

Room02:「Life is Flat」シリーズ

2つめの会場には立体作品を含む作品が展示していました。

Life is Flatシリーズ

左から
《FREESIA》
2021、TIDE、Acrylic on Canvas、1167 × 910 × 60mm
《SNOWDROP》
2021、TIDE、Acrylic on Canvas、1167 × 910 × 60mm
《CASABLANCA》
2021、TIDE、Acrylic on Canvas、1167 × 910 × 60mm

今回の新作シリーズ「Life is Flat」の作品群です。

「Life is Flat」は静物画の様式を再解釈したものだそうで、生き物である花はフラットに、そうではない花瓶は立体的に描き分けています

静物画は西洋絵画のひとつの表現方法のひとつで、動かないものを主体にして描くものですが、「Life is Flat」ではTIDEさんの絵画表現により典型的な模倣という表現方法をくつがえしています。

また、花瓶はハルクやE.T.などの有名キャラクターの形をしていて、繊細な花のイメージと怪獣やエイリアンのモチーフが並置されている奇妙さや、どこか懐かしさを感じる不思議さがあります。

VIOLA

《VIOLA》
2021、TIDE、Acrylic on Canvas、1620 × 1303 × 60mm

PANSY

《PANSY》
2021、TIDE、Acrylic on Canvas、1620 × 1303 × 60mm

黒ねこの手・白い花と白ねこの手・黒い花が対比されるように描かれた作品も印象的でした。

ねこも花も生き物なのでフラットに描かれていて、画面いっぱいにフラットな空間が広がり、ごく一部の背景には立体感のある後景もみて取れます。

特にフワフワに描かれた白い手の方がつい足を止めてしまう、印象的な作品でした。

CLAW

《CLAW》
2021、TIDE、FRP、1500 × 1000 × 250mm

また、会場の中央を陣取るように置かれた立体作品も展示していました。

作品タイトルの《CLAW》は直訳すると「鉤爪(かぎづめ)」という意味になります。

かぎづめの先端はツヤがありつつ、根元の方はマットな見た目になっていて鋭利さ(といいつつも尖ってはないので物腰柔らかめ)が観て取れます。

このかぎづめの見た目から、Room01の《COMPO》シリーズのねこの裏側にあったものがかぎづめなのかなと関連づけていました。

Room03:シルクスクリーンや大理石を用いた作品

最後となる3つめの会場はRoom01で見た《COMPO》シリーズのシルクスクリーン作品と、大理石でできたねこ、爪痕が描かれた作品を展示していました。

こちらでTIDEさんの関連グッズも購入できるようになっていました。

trilogy

《trilogy》
2021、TIDE、Neo-Silk Print、Set of 3800 x 600mm(each)

このサイズでも十分に存在感があり、家で気軽に飾り楽しみたい人にとっては、このサイズだと丁度良いかもしれません。

nap

《nap》
2021、TIDE、White Marble、116 × 250 × 31mm
《nap》
2021、TIDE、Black Marble、116 × 250 × 31mm

大理石の彫刻作品にもフラットな印象を残していて、一貫した世界観が表現されていました。

また、これまでのモノクロームの世界観と大理石の質感もマッチしている印象があります。

まとめ:シンプルなモノクロームに潜む幾重の技巧

TIDEさんの名義変更後2回目となる個展「BLOOM」をご紹介しました。

2020年のオークションでの高騰が話題になりましたが、そこからさらに進化しているように感じ、BLOOM後の作品発表も楽しみになる展覧会でした。

作品に登場するねこのキャラクターも可愛らしいので、(作品に触れないように気をつけながら)お子さんと一緒に鑑賞に行くのも面白いかもしれません。

展示会情報

展覧会名BLOOM
会場The Mass
東京都渋谷区神宮前5-11-1

※初見だとRoom01の入口が分かりにくいですが、階段を降りた木彫の自動扉が入口です
会期2021年11月27日(土)~12月26日(日)
※閉館日:月曜日・火曜日
開廊時間12:00~19:00
サイトhttp://themass.jp/1/2021/
観覧料無料
作家情報TIDE さん|Instagram:@tide_1984

関連リンク

他展示でのTIDEさん作品はこちら

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ABOUT ME
よしてる
1993年生まれの会社員。東京を拠点に展覧会を巡りながら「アートの割り切れない楽しさ」をブログで探究してます。2021年から無理のない範囲でアート購入もスタート、コレクション数は25点ほど(2023年11月時点)。
アート数奇は月間1.2万PV(2023年10月時点)。
好きな動物はうずら。
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