山口歴「LISTEN TO THE SOLITUDE」vol.1|枠組みを超えた筆跡を描いたアート
今回は渋谷パルコにあるOIL by 美術手帖にて開催した山口歴さんの個展「LISTEN TO THE SOLITUDE」の模様をご紹介します。
この記事を読むとこんなことが分かります。
- 山口歴(やまぐち めぐる)さんについて知ることができる。
- OIL by 美術手帖「LISTEN TO THE SOLITUDE」で展示中の作品を知れる。
- オークションの参考データも参照できる。
代表作をはじめ、山口歴さんの作品を観ていきましょう!
山口歴とは?
山口歴(やまぐち めぐる)さんは東京都渋谷生まれのアーティストです。2007年に渡米し、ニューヨークのブルックリンを拠点に活動されています。
高校時代にオンタイムで渋谷エリアのストリートカルチャーに影響を受け、絵を描くことが小さい頃から好きだったこともあり、高校3年の時に画家になるため東京芸術大学を目指すことを決めます。進学に向けて予備校に通いますが、なかなか合格することができず、クラシックな絵を4年間しっかりと学びはしたものの、結果としてには東京芸術大学に進学することはできませんでした。
それでも絵をやめるとかはできず、どうしようかと考えた結果ニューヨークに渡米します。その目的は、当時からNY拠点に活動していた松山智一さんのアシスタントになるためでした。松山智一さんのもとで5年間アシスタントとして経験を積み、その後独立して5年ほど活動し、次第に世間に認知される機会が増えていきます。学生時代を含めると下積みを15年ほど重ねての今、ということになります。
枠からはみ出した《OUT OF BOUNDS》シリーズ
山口歴さんの作品の中でも有名なのが、ブラシストローク(筆跡)をテーマとした「OUT OF BOUNDS」シリーズです。
筆を用いた表現はルネサンス時代から国境を越え人々を魅了し続けているもので、それをキャンバス/四角という既成の枠組みから飛び出して表現しています。「固定概念、ルール、国境、境界線の越境、絵画の拡張」をコンセプトとした作品群です。
山口歴さんにとってブレイクスルーするきっかけとなった作品で、山口歴さん自身美大進学が叶わず、枠の外で生きてきた中で、自分の生き様を表現するにはどうしたらいいかという中で生まれた作品なのだそうです
この表現に至る過程には、
- 予備校時代の4年間の油絵や静物画といったクラシックな絵画からの学び
- 松山智一さんのアシスタントとして「”なぜ”のロジカルな思考を通した徹底的な色選び」
の経験あり、基礎や知識の土台があった上で、自分のテーマを進化させています。
固定概念にとらわれず、けれど軸はブレることのないように、貪欲にカッコイイものをつくり続ける姿勢が表れているように感じます。
「LISTEN TO THE SOLITUDE」個展のテーマ
今回の個展「LISTEN TO THE SOLITUDE」のテーマは、”孤独の声に⽿をすますことで、⾃⾝の⼼が届けてくれた⼼象⾵景、そして⾃⾝や⾃然、地球や宇宙に流れるエネルギー”です。
OIL by 美術手帖では、山口歴さんのシグネチャーとなる作品を展示していました。
ちなみに、今回の個展は銀座 蔦屋書店との同時開催で、メイン会場となる銀座 蔦屋書店では過去最⼤級となる新作2点、マルチカラーに挑戦した平⾯作品、さらに初めての⽴体作品、2⼈の写真家との新たなコラボレーション作品など、新たな試みに触れることができます。
「LISTEN TO THE SOLITUDE」展覧会の作品を鑑賞
今回は渋⾕PARCO 2階にて開催したOIL by 美術⼿帖ギャラリーの模様をご紹介していきます。
OUT OF BOUNDS NO.126:代表的な落ち着いた色彩の作品
OUT OF BOUNDS NO.126
ブルーやブラック、ホワイトといった、山口歴さん独自の代表的な落ち着いた色彩を用いている作品。
ブラシストローク自体がキャンバスの大きさに直結しているため、筆の勢いや力強さを感じる飛沫からエネルギー感が伝わってきます。
筆を用いて絵を描く行為が今も受け継がれているのが「普遍的なカッコよさ」があったからだとするならば、その普遍性を切り取り、カッコよさを表現されているように見えます。
OUT OF BOUNDS NO.130:パンデミック以降に生まれた挑発的な色彩の作品
OUT OF BOUNDS NO.130
ブルーやブラック、ホワイトといった落ち着いた色彩の作品とは異なり、赤や緑、蛍光色といった、挑発的な色彩の作品も展示していました。この色彩の作品は最近できたもので、その背景には世界的な感染症拡大が影響しています。
山口歴さん自身、コロナ禍になりニューヨークで2ヵ月間のロックダウンをしていた時期に鬱憤や怒りが溜まっていったそうです。そんな中でいつもの青や黒といった色ではなく、もっと強い色の作品が見たくなり、それを作品化しています。
いままでよりも強い印象の色を独自の洗練された色彩感覚で表現されていて、コロナ禍で感じた感情が作品に反映されたこの時代ならではの作品に感じます。
OUT OF BOUNDS NO.124:これまでと今を掛け合わせたような作品
OUT OF BOUNDS NO.124
作品をみていると、ブラシストロークの内側が青や黒のこれまでの彩色、外側が赤や蛍光色といった今を反映した彩色が用いられているように見えます。
- 内側にあるこれまでの彩色からは、軸はブラすことのないように、初心を忘れないように
- 外側にある今を反映した彩色からは、固定概念や枠の外に出た、自分ならではの道をすすんでいこうという気持ち
が表れているのだろうか、と考えながら鑑賞していました。
「OUT OF BOUNDS」の作品群
今回の展示作品は全部で7点で、先にご紹介した作品以外にも、さまざまな色彩の作品を展示していました。
OUT OF BOUNDS NO.127
OUT OF BOUNDS NO.129
横から見ると、意外と厚さがあることに気づきます。
OUT OF BOUNDS NO.128
絵具の飛び散り方が非常にリアルです。
おまけ:オークションにおける評価
最後に、国内外で知名度を上げている山口歴さん、セカンダリーマーケットではどのような評価となっているのかをみてみましょう。
2021年7月3日(土)~4日(日)にSBIオークションにて開催された「LIVE STREAM AUCTION」という国内オークションで、山口歴さんの作品がいくつか出品していました。
その中のひとつ《OUT OF BOUNDS NO. 74》(2018年,UVトップコート,アクリル,エポキシ樹脂,合板、70.0 × 68.0 × 3.0 cm)は、予想落札額1,300,000円~1,800,000円に対して、落札価格5,520,000円という結果となっていました。
オークションという公共性の高い場での評価でも注目度が高いことが伺えます。
なお、アートは金額的な価値だけで評価できるものではないと思うので、作品として楽しむ視点を忘れずにみていただきたいデータでした。オークションについてはこちらも参考にしてみてください。
まとめ:カッコよさを追及し続けるアート
ブラシストローク(筆跡)自体をアートにした作品、いかがでしたでしょうか。固定概念という枠を超える作品のコンセプトもそうですが、作品の躍動感や色彩からくるエネルギー感を得て「カッコいい!」と感じる個展でした。
山口歴さんがアートと向き合ってきた過程を知って観ると、より体感できるのではないかなと思ます。
また、2021年8⽉30⽇(⽉)〜2021年9⽉14⽇(⽕)で銀座 蔦屋書店内 GINZA ATRIUMにて個展が同時開催しています。こちらもぜひチェックしてみてください。
展示会情報
展覧会名 | LISTEN TO THE SOLITUDE |
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会場 | OIL by 美術手帖 東京都渋谷区宇田川町15−1 渋谷パルコ 2F |
会期 | 2021年8月27日(金)~9月6日(月) 会期中無休 |
開廊時間 | 11:00〜20:00 |
サイト | https://oil-gallery.bijutsutecho.com/exhibition/listen-to-the-solitude/ |
観覧料 | 無料 |
作家情報 | 山口歴さん|Instagram:@meguruyamaguchi |