現代アートとは何か|分かりにくい理由から歴史、代表作家、作品の楽しみ方までをご紹介
「絵の上手さ=アート」というものさしでは測れなくなっている現代アート。
理解しがたい作品を見たとき、どう受け止めたらいいのか迷ってしまいます。
私自身、現代アートがよく分からないところから「アートはとにかく自分の目でたくさん観るのが大事」と聞いて、2021年から週末にギャラリーを巡るようになり、130以上の鑑賞レポートをまとめてきました。
そうしてきて分かった現代アートとは、感性だけでも楽しめるけれど単純明快なものでもなく、時代性や背景知識、作品を見る観点を知ると味わい深く、長く楽しめる、ということです。
今回はそんな観点も交えながら、現代アートとは何かという問いから、分かりにくい理由、歴史的背景、代表的な国内外作家、体系的なアートの楽しみ方のヒントまでをご紹介。
現代アートは深めようと思えば果てない旅になってしまうので、私自身がこれまで観てきて感じた想いを凝縮して、ここではカジュアルにアートを楽しみたい方向けにまとめていきます。
現代アートとは何か
現代アートを一言で言い表すのは難しいですが、ざっくりと言うのであれば「時代精神や美術動向を反映し、作家固有の概念を打ち出している作品」のことです。
社会的な問題、政治、アイデンティティ、技術がもたらす影響、アートの役割など、幅広いテーマを扱うことから社会を照らす鏡・指針と呼ばれることもあります。
作品の見た目だけでなく、そこに含まれる概念やテーマと、作品を観る側(その人の影響力も含め)の読み解き・解釈の掛け合わせで作品の良さが変化する、流動的な一面も。
作家の数だけ作品が映し出す概念も異なるので、多様な表現が存在します。
それに加えて、鑑賞者側が作品をどう解釈するかによって作品の意味合いが変化するのも、現代アートの特徴といえます。
現代アートが分かりにくい理由
現代アートの中には、
これのどこがアート?
と言いたくなるようなものが多くあります。
どうして現代アートはこうも分かりにくいのか、その理由は主に4つあります。
①鑑賞者に向けた問いかけがあるから
1つめは、作品には鑑賞者に対して問いかけが含まれているためです。
現代アートには作家固有の概念、表現方法、文化的・社会的背景知識などのヒントが(気づけるかは別にして)用意されています。
これらのヒントをもとに導き出した解釈は、日常とは違った視点から物事を考えるきっかけを与えてくれます。
一方で、何がここで問われているのかを考えさせる要素があるため、そこに正解はなく、人によっては答えのない分かりにくさが苦手意識を生んでいるのでしょう。
②見た目の美しさだけでは評価できないから
2つめは、表面的な美しさだけで作品の良さを判断するのが難しいから。
現代アートは表面的な見た目だけでなく、作品の背後にあるコンセプトやコンテクスト(文脈)、作家の意図なども含めて観ることが必要となる場合があります。
そうして、美のカテゴリーに収まらない作品も現代アートでは受け入れられるようになり、美しさ以外の要素も含めた総合的な評価がされるようになっています。
③背景知識が必要な時もあるから
3つめは、作品を理解するために背景知識が必要となる場合がある点です。
多くの現代アート作家は、作品と美術史の関係を考えながら、社会的、政治的、または文化的な背景を反映しています。
これにより、作品の形や色だけでなく、その「コンテクストや背後にあるストーリー」を理解することが求められます。
④作家の先見性に追いつけないから
4つめは、作家が探求している概念が先見性をもつもので、大多数の人にとっては常識の範囲外で理解不能であるためです。
現代アートは作家本人が意図しているかどうかはあるにせよ、社会がこれからどう成長し、変わっていくかの先見性を持ちならが作品制作をしている人もいます。
一般的な価値観のものさしでは測れない概念を作品を通して見ているから、理解するまでに時間がかかってしまい、分からないまま終わるケースも生まれやすくなっています。
このように、技術的な上手さだけで作品の良さを判断できない背景には、現代アートができるまでの歴史が関係しています。
現代アートができるまでの歴史的背景
現代アートの分かりにくさが生まれた歴史的背景を簡潔にご紹介します。
第二次世界大戦以降が現代アート
一般的に20世紀中盤以降、狭義には第二次世界大戦(1945年)以降が現代アートと呼ばれています。
流れを簡単に解説すると、以下のようなイメージ。
近代美術:伝統的な写実的さから、実験的な表現を探求
戦争の影響で、アートの中心地がパリからアメリカに
戦後、多くの作家が従来のアートの概念や形式からの解放を求めた
技術が飛躍的に進化、写真技術も発達し写実的に描くならカメラでよくなった
戦争のトラウマやその後の冷戦時代の緊張感を背景に、感情や無意識を直接的に表現したり、作家の個性を出そうとしたり、常識を破壊しようとしたりしながら模索が続き、モノを作るよりもコンセプトを作ることを重視
近代美術から現代美術(現代アート)へ
近代美術と現代アートの違い
歴史的背景から現代アートの成り立ちを知るには、ひとつ前にあった動向である「近代美術」と比較すると分かりやすくなります。
それぞれの一般的な特徴を表でまとめれると、以下のようになります。
近代美術 | 現代アート | |
時期 | 19世紀後半から20世紀前半 | 20世紀中盤以降 |
主要な動向・スタイル | 印象派、表現主義、キュビズム、フォーヴィズムなど | ミニマル・アート、コンセプチュアルアート、ランド・アート、ポップアートなど |
主な目的 | 視覚的な表現、技術やスタイルの探求 | アイディアや概念の探求、社会・文化的な問題提起 |
表現手法 | 主に絵画や彫刻 | 幅広いメディア(写真、ビデオ、インスタレーション、パフォーマンス、デジタルアートなど) |
アートの役割 | 純粋な美的表現、技術の革新 | 問いかけ、概念の提示、社会を映す、批評、議論の刺激 |
評価基準 | 技術的完成度、革新性、個人的表現など | 概念的深み、同時代性、社会的関与、マーケット評価など |
伝統的な写実性から表現の可能性を探求する近代美術にあったアートの概念を拡張し、現代アートでは作品に込めたコンセプトが重要視されるようになりました。
現代アートの父「マルセル・デュシャン」がスタート地点
より具体的な現代アートのスタート地点として知っておきたい人物が、現代アートの父とも呼ばれているマルセル・デュシャンさん(Marcel Duchamp、1887 – 1968、フランス)です。
マルセル・デュシャンさんがスタート地点と呼ばれる理由を一言でいうと、近代美術までにあったアートの概念を変えた張本人だから。
そのきっかけとなった作品が、小便器にサインを書いて台座に置いただけの《噴水(泉)》(1917)です。
この作品の登場がきっかけで巻き起こった変化としてチェックしておきたいのは3つです。
- アートの概念の再定義
- 「絵画表現の追求(ピカソ)」→「描かない絵画表現(晩年のマティス)」という当時の美術動向を踏まえて「絵画以外でできること」の新たな概念を打ち出した。
- アートの体系への挑戦
- 権威が認めたらアートという考え方に対し、「自分がアートだと決めればすべてがアートである」という見る側の知的な解釈でアートになる考えを示した。
- アーティストの役割の変革
- 作品を作るよりもコンセプトを作る重要性を示し、後の美術動向へ影響を与えた。
- 美術とされていないものを美術の領域に持ち込む発想も革新的で、現代アートの間口を広げる基礎的な考え方になった。
《噴水(泉)》はかなりの時間をかけて、世間にアートとして認められていきました。
そこには、未来の常識となる考え方を生み出す作家の慧眼があると同時に、理解に時間がかかる現代アートは「理解できない、わからないもの」というイメージを作ったともいえます。
知っておきたい現代アートの芸術運動4つ
アートの概念を変える形でスタートした現代アートは、時間の流れと共にさまざまな芸術運動(アートムーブメント)を生みながら発展していきます。
中でも特徴的な芸術運動を4つご紹介します。
抽象表現主義(1940年代 – 1950年代初頭)
抽象表現主義は、自分の内面にある直感や感情が強く押し出して描かれた芸術運動です。
第二次世界大戦後、国際的に影響力を持ったアメリカ初の芸術運動であり、アートの中心地がパリからニューヨークへ移り変わった転換点でもあります。
そんな抽象表現主義は大きく、アクションペインティングとカラーフィールドペインティングの2つに分類されます。
アクションペインティングで有名なのがジャクソン・ポロックさん(Jackson Pollock、1912 – 1956、アメリカ)で、絵の具を滴らせるドリッピングや流し込むポーリングという身体的なアクションを絵画制作のプロセスに持ち込んだ作品で知られています。
カラーフィールドペインティングの代表格はマーク・ロスコさん(Mark Rothko、1903 – 1970、アメリカ)で、かつてない色彩の微妙な明度表現による静謐、精神性の高い作品で知られています。
ミニマル・アート(1960年代)
ミニマル・アートとは、シンプルで冗長な装飾や表現を排除した基本的な形や色に焦点を当てる芸術運動です。
色彩の探究がやり尽くされた流れを受けて、極力色を使わず、作家性を削ぎ落とした作品は、工業製品的で感情が入っていない印象で、コンセプトを知ることで意味がわかり、鑑賞者が能動的にその意味を考えることで、ようやく作品の良さがわかる構造となっていることが多いです。
代表的な作家はドナルド・ジャッドさん(Donald Judd、1928 – 1994、アメリカ)で、金属などの工業的な素材を使った形態的にシンプルで抽象的な立体を制作し、作品とそれを取り巻く環境の関係性を極限まで探求したことで知られています。
コンセプチュアルアート(1960年代 – 1970年代)
コンセプチュアルアートとは、絵画や彫刻などの物理的な形よりも構想や概念を芸術とみなした芸術運動です。
ミニマル・アートにもあったコンセプトを突き詰めた作品は、技術的な要素が必ずしも必要ではなくなり、アート作品を作れる人が増えたという意味で、芸術の可能性が広がったともいえます。
代表的な作家はジョセフ・コスースさん(Joseph Kosuth、1945 – 、アメリカ)で、椅子の実物、イメージ、言語的定義の間にある人間の認知・認識に関わるプロセスや仕組みを浮かび上がらせた《1つおよび3つの椅子》(1965)が有名です。
ポップアート(1950年代 – 1960年代)
ポップアートは、映画や広告など、大衆文化の産物を主題や素材として用いた芸術運動です。
戦後アメリカの経済成長による消費社会の登場を背景に、社会情勢を反映し、社会批判的に再構築・再提示した作品が特徴的です。
代表的な作家はアンディ・ウォーホルさん(Andy Warhol、1928 – 1987、アメリカ)で、再生産を自由にできる時代性を想像させるシルクスクリーンという技法を使い、マリリン・モンローさんなどの強度の高いイメージを使いつつ、本来の意味を失った記号となることを目指した作品で知られています。
ロイ・リキテンスタインさん(Roy Lichtenstein、1923 – 1997、アメリカ)も有名で、漫画の1コマを拡大した作品を制作し、当時低俗な文化だった漫画をハイカルチャーな美術の世界に持ち込んだことが新しく、晩年に評価されました。
現代アートで知っておきたい日本で活躍する作家6人
4つの芸術運動(抽象表現主義、ミニマル・アート、コンセプチュアルアート、ポップアート)はいずれもアメリカを中心に発展したものでしたが、日本で活躍する作家の中にも世界的に評価を得ている作家がいます。
そこで、現代アートを知る上で押さえておきたい、日本で活躍する作家6名もチェックしてみましょう。
草間彌生
草間彌生(くさま やよい)さんは1929年生まれ、長野県出身の作家です。
水玉模様の反復作品が国内外で広く知られていますが、元々は1960年代アメリカの現代アートシーンで支持され、ミニマル・アートやポップアートの先駆けといわれています。
その作品の魅力は、ポップアートの代表的な作家・アンディ・ウォーホルさんに対して直接影響を与えたほど。
水玉模様などの独特で一貫した記号的な言語と、精神的な苦悩を表現に昇華させた作品は、多くの人に共感を呼び起こし、女性作家としての先駆的な役割を果たしています。
近年は世界中で行われているルイ・ヴィトンとのコラボでも話題になりました。
草間彌生さん|Instagram:@kusama_archive
村上隆
村上隆(むらかみ たかし)さんは1962年生まれ、東京都出身の作家です。
カラフルなお花のモチーフは村上隆さんの代名詞といえるほど広く知られています。
村上隆さんは1994年にロックフェラー財団からの支援でアメリカ・ニューヨーク滞在経験を経て、他の追従を許さない程の徹底的なアート市場分析を作品制作に活かしながら地位を築いていきました。
江戸の大衆文化から日本のアニメ・漫画までにみられる「すべてが超二次元的」なオタク文化が日本の芸術であるという概念を示したスーパーフラット(Superflat)を提唱し、それまで美術史上で説明されてこなかった日本の芸術を紹介し、ポップアートに変わる新しい概念を想起させたことで、アメリカ中心のアート・シーンに日本固有の言説を確立しました。
TikTokなどの最新動向を積極的に取り入れているのも村上隆さんの特徴で、クスッと笑えるテイストながらアートの現場を知れる内容は、現代アートの一端を知る入口としておすすめです。
@kaikaikiki_diary
村上隆さん|Instagram:@takashipom
奈良美智
奈良美智(なら よしとも)さんは1959年生まれ、青森県出身の作家です。
デフォルメされた、時に静寂、時に感情豊かな鋭い目つきをした少女には、奈良美智さん独自の世界観が映し出されています。
1988年にドイツへ渡ってから帰国するまでの約12年間で日本やヨーロッパでの個展の機会が増え、次第に注目が集まるように。
音楽、幼少期の記憶、時事問題などに影響を受け、それらを自伝的なものとしてだけでなく、より広い文化的感性にまたがる独特の描写がありながら、直感的な可愛らしさが幅広い世代に支持されています。
作品制作以外にも音楽イベントへの参加やクリエーターとの協働、近年は子どもたち30人を集めて1カ月間交換日記などを交わすワークショップをするなど、小さなコミュニティから変化を促す取り組みをされているのも、奈良美智さんならではの特徴的です。
2023年11月24日に開業する東京・麻布台ヒルズの中央広場に恒久設置される、高さ7m超えの彫刻作品《東京の森の子》にも注目です。
奈良美智さん|Instagram:@michinara3
李禹煥(リ・ウファン)
李禹煥(リ・ウファン)さんは1936年生まれ、韓国出身の作家で、1956年に来日し、1968年頃に本格的な作家活動と評論活動を始めます。
例えば岩とガラスのような、自然や人工の素材を組み合わせ提示する作品が代表的で、もの相互の関係性から新たなエネルギーが生まれる様子が映し出しています。
日本の高度経済成長期に見られる大量生産・大量消費、近代への批判が国際的に高まるなか、生産を否定し、ものや素材そのものを提示する「もの派」と呼ばれる美術動向が生まれ、そのなかで李禹煥さんは中心的な存在とされています。
都内では東京・有明の東京ビッグサイト内でパブリックアートを鑑賞できます。
宮島達男
宮島達男(みやじま たつお)さんは1957年生まれ、東京都出身の作家です。
「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」というコンセプトに基づいた、デジタルカウンターによる作品で知られています。
宮島達男さんは1988年のベネチア・ビエンナーレの若手作家部門「アペルト88」に出品した《時の海》で、国際的な注目を集めました。
「0(ゼロ)」のみ暗転するのは死を意味し、生と死が繰り返されることが表現されていて、時間という普遍的な概念を扱いつつも仏教的思想やテクノロジーという要素を融合させています。
杉本博司
杉本博司(すぎもと ひろし)さんは1948年生まれ、東京都出身の作家です。
長時間露光を使用したシリーズや、自然や風景、時間の経過をテーマとした作品にはコンセプチュアルアートの影響が現れていて、写真の可能性を拡げる表現技法として評価されています。
1970年に渡米し、1976年に「写真はいつでも真実を写す」という固定概念を覆す《ジオラマ》シリーズをニューヨーク近代美術館に収蔵され、次第に注目を集めるようになりました。
目には映らない「時間」や人間の起源を辿る「物語」をコンセプトに、厳密な思考と哲学に基づき作品を制作しているのが特徴的です。
作家以外にも建築家・演出家など活躍の場が広いのも特徴で、東京・六本木にあるピラミデビルにあるギャラリーの内装を手掛けたり、2017年に完成した江之浦測候所は人生の集大成として10年の構想と建築に10年の歳月を投じた複合文化施設で、杉本博司さんの世界観を堪能できる場所となっています。
杉本博司さん|Instagram:@hiroshisugimotoart
現代アートを体系的に楽しむ5つの方法
現代アートができた歴史的な背景や、作家が築いてきた作品に込められた意味を知ると、言葉だけでは伝えきれない魅力が見えてきます。
ここでは更に、累計130以上の鑑賞レポートをまとめてきた独自の観点から、現代アートの体系的な楽しみ方をご紹介します。
1.【前提】現代アートに万人受けする作品はない
まず知っておくと良いのが、「いかに有名な作品でも現代アートに万人受けする作品はない」ということ。
その理由のひとつに、現代アートは鑑賞者に向けた問いかけがある作品が多く、観る側が出す答えの違いが好みを分ける場合があるからです。
なので、おすすめは多様な作家の作品に出会って、自分の好みとリンクする作品を見つけること。
好みではなかった場合はその場で判断せずに、一旦保留してみましょう。
初めて観た時は好みじゃなかったとしても、色々な作品を観た後に改めて観ると、別視点で作品の魅力に気づけることもあります。
そんな前提を踏まえて、4つの現代アートの楽しみ方をご紹介します。
2.【観る】とにかくたくさんの現代アートに浸ってみよう
まず、アートはとにかく自分の目でたくさん観るのが大事です。
私自身アートを見続けてきて分かってきたのは、「直に観るから分かる情報がある」こと。
今ではスマホで検索するだけで簡単に世界中のアートを見れますが、例えばデジタル画像で細かい色味まで再現するのはプロでも難しいといわれています。
他にも、絵画であれば作品自体の大きさ、筆致、香り、展示空間など、その時、その場でしか味わえない情報があります。
アート数奇では展覧会レポートも参照できるアートマップを用意しているので、地図を参考に現地のギャラリーに足を運んでみてください。
そして、なるべくたくさんのギャラリーにアートを観に行ってみましょう。
作家によって扱っているテーマやコンセプト、素材、表現技法はかなり違います。
いろんなアートを観ると、作品を通じて様々な価値観を知るきっかけにもなり、次第に自分の好みが見えてきます。
もちろん、好みは時間の経過によって変わっていくので、そんな変化も含めてアート鑑賞を気軽に楽しんでみてください。
3.【知る】会話や読書、動画を通じて観る解像度を上げよう
たくさんのアートを観ていくと、「どうしてこの素材や色を使ったんだろう」とか、「この作品はどんな想いで制作したのだろう」といった疑問が湧いてきます。
そんな時は、ギャラリーのスタッフや在廊していたら作家に聞いてみるのがおすすめ。
最初は恥ずかしかったり緊張したりしますが、優しく教えてくれる方が多いですし、会話を通して気づけるポイントもたくさんあります。
もし会話はちょっと苦手という方は、展覧会の紹介文(ステートメントとも呼ばれます)を読むことでも鑑賞のヒントになるので、ぜひ読んでみてください。
他にも、書籍を通じて知識を深めると、ギャラリースタッフや作家との会話の中で共通言語が増えるので、内容がより入ってきやすくなります。
例えば、私が最近読んでなるほどと思ったのが秋田麻早子さんの「絵を見る技術 名画の構造を読み解く(2019)」です。
西洋美術を中心とした内容ですが、絵画の視線誘導の話を中心にわかりやすく図説されていて、普段いかに「見ているけれど観察していないか」が分かります。
他にも、最近はYouTubeで山田五郎さんのオトナの教養講座や美術解説するぞーさん、現代アートを基礎から学べるチャンネルなどで分かりやすく発信していますし、オンライン動画学習ツール「Udemy」によるアート講座もあり、アートに関する知識を得る場所が増えています。
こうしたものを通じてアートの知識を得ていくと、作品を観る解像度が格段に上がります。
作品から受け取れる情報も増えて楽しくなっていきますよ。
4.【買う】身銭をきる経験も現代アートを楽しむ醍醐味
アート作品を直接観に行く数が多くなると、人によっては気になる作品と巡り合えることがあります。
そんな時は、お財布と相談はしつつ、思い切って作品を購入するチャンスかもしれません。
私自身は学生時代から気になっていた作品を社会人になってから購入する機会があり、それなりの身銭をきってアートコレクションをした経験があります。
初めてコレクションをして分かったことは、作家の想いがこもった作品を時間をかけて味わえ、自身と作品の間で起こる化学反応を楽しめること。
初めてアートを手にしたときは不思議な感覚になりますが、時間経過と共に観る時間も増えて新たな発見ができたり、作家やコレクターとの交流、活躍の応援など、コレクションからつながるロマンも楽しめます。
5.【飾る】アートが自分を映す鏡になり生活に豊かさをもたらす
アート作品をコレクションしたら、ぜひ生活空間に飾ってみましょう。
小さな作品だとしても存在感があり、空間の雰囲気を変えてくれます。
コレクションは自身を映す鏡にもなり、分かっているようで分からない自分自身を理解し、より良く熟達し、生活を豊かにするきっかけを作ってくれます。
そして、作家の慧眼を通した新たな価値観の発見から、物事の捉え方を拡張・深化できるのも、作品と向き合う時間を作れるコレクションだからできること。
現代アートは飾ることで初めてわかる魅力が大いにありますが、もしコレクションのハードルが高ければアートをレンタルして飾る体験ができる「Casie」というサービスも使ってみて、アートのある暮らしを体感してみてください。
まとめ:現代アートをじっくり時間をかけて味わおう
現代アートは感性だけでも楽しめますが、時代性や背景知識、作品を見る観点を知ると味わい深く、長く楽しめます。
一度にすべてを理解しようとするのではなく、時間をかけてゆっくり楽しむことが、現代アートを楽しむ秘訣。
まずはいろんなギャラリーでたくさんのアートを楽しんでみて、そこから気になった要素があれば調べてみて、ちょっとずつ知識もつけてみてください。
そして、自分にとって気になる作品と出会い、コレクションの一歩を踏み出せたなら、現代アートの見方も変わってきます。
現代アートだからできる、自分自身を豊かにしていく体験を味わってみてはいかがでしょうか。