金巻芳俊「空蝉センシビリティ-第 I 期-」|ストーリーやコンセプトを知りアートを観る
今回は中央区・入船にある「FUMA Contemporary Tokyo/文京アート」にて開催した金巻芳俊さんの個展「空蝉センシビリティ-第 I 期-」の模様をご紹介します。
本記事ではアーティスト自身の背景や作品コンセプトを知った上で楽しむことに焦点を当てていきます。
金巻芳俊とは?
金巻芳俊(かねまき よしとし)さんは千葉県出身のアーティストです。
2012年、損保ジャパン美術財団選抜奨励展にて新作秀作賞を受賞し、その期に前後して作品の評価は高まって行きます。
現在は日本はもとより、台湾、中国、香港、アメリカ、カナダ、フランス、ドイツ、英国など、世界中のコレクターからオファーが届き、購入待ちはなんと10年にも及ぶそうです。
作品コンセプトの核は“アンビバレンス”
金巻芳俊さんの作品のコンセプトの核には「アンビバレンス」というものがあります。
友達に見せている自分と、家に帰ったときの自分の間に見せ方の差があるように、本来の自分ではないけれど対外的に適応するために作った自分が必要となることがあります。
そんな自己矛盾を生みながらも、それが組み合わさった総和が一人の人間です。
作品制作が進むなかで、一人の人間に内在する「心の多様性」として拡大解釈していき、より多くの人達に「本当のあなたはこうなのでは?」という問いかけをする作品になっていったそうです。
「空蝉センシビリティ-第 I 期-」展示作品を鑑賞
彫刻作品の構想画を観る
私自身、金巻芳俊さんの作品は彫刻のみしか観たことがなく、今回構想画を観れたのはとても新鮮でした。
身体や表情が重なり合った彫刻の裏で、まずは二次元で表現してみる過程が土台にあることを知れました。
花嫁さんの構想画は特に、結婚というライフイベントに至るまでに多様な感情が生まれる瞬間であり、その「心の多様性」がよく表れているようでした。
万華鏡を覗いたような構想画が彫刻になる
構想画の中でも、彫刻作品になることが一番想像できなかったのがこちら。
「彫刻だけでこんな複雑なものが作れるのか?」それを構築してしまうアーティストの技術や発想がすごいと感じざる負えません。
二次元と三次元にする彫刻家の頭の中を覗いてみたくなりました。
見せたい以上に魅せている姿
プリズムの2作品を観て、複数の表情を持つ作品とはまた違い観る角度によって変容する女性の在り方が表現されているようでした。
仮に自分の意図した見え方ではないとしても、相手からしてみたら万華鏡を覗いたように、誇張されて美しく見えているかもしれないと感じます。
結果的に、見せたい姿以上に鑑賞者には良く映っているのかもしれません。
特に年頃の女性を描いているところからも、喜怒哀楽たくさんの感情を抱えながらも美しく生きているのだなと感じました。
第 II 期に展示される彫刻の構想画も
第 I 期には、第 II 期で彫刻作品として展示されるものの構想画が展示されていました。
身体全体をずらしながらコピーし重ねたような作品。
この二次元作品が三次元になったものを観れるということで、制作過程を垣間見るような仕掛けもありました。
いったいどんな形で、どんな色で、どう重なっているのか、全貌は第 II 期レポートをチェック。
金巻芳俊の作品との出会いはアートフェア東京
私が金巻芳俊さんの彫刻作品と初対面したのは、アートフェア東京でした。
表情の連続した彫刻を初めて見たときはちょっとびっくりしましたが、そのインパクトの強さ故に記憶に残りました。それ以来、今回の個展は久しぶりの鑑賞となりました。
まとめ:作家のことを少しでも知って観る面白さ
今回は金巻芳俊さんの個展「空蝉センシビリティ-第 I 期-」についてまとめました。
アーティスト自身のストーリーやコンセプトを知るのはひと手間ではあると思います。
そのひと手間をかけてみて、ほんのちょっとでも知った上で作品を観ると、なんとなく観るアート鑑賞から「発見のあるワクワクする鑑賞体験」になるきっかけになります。
そこから、自分にとっての好きなアート作品にも出逢えるかもしれません。
展覧会情報
展覧会名 | 空蝉センシビリティ-第 I 期- |
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会場 | FUMA Contemporary Tokyo/文京アート 東京都中央区入船1-3-9長崎ビル9F |
会期 | Ⅰ: 2月6日(土)- 2月17日(水)版画・ドローイング作品 Ⅱ: 2月20日(土)- 3月6日(土)木彫作品 |
開廊時間 | 12:00〜19:00 ※月曜・日曜・祝祭日休館 |
観覧料 | 無料 |
作家情報 | 金巻芳俊さん|Instagram:@kanemaki_yoshitoshi |
サイト | http://www.bunkyo-art.co.jp/ |