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四宮スズカ・雛・ヨシダユイノ「≃直会」|鑑賞体験で繋がる三者三様のアート

よしてる
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三者三様の作風が展示空間に並んだとき、別々の良さを楽しむのはもちろん、鑑賞者の思考によってひとつの意味を見出すこともできます。

今回はそんな鑑賞体験ができた、千代田区西神田にある「GALLERY2511」にて開催した四宮スズカさん、雛さん、ヨシダユイノさんによる展覧会「≃直会(イコールなおらい)」の模様をご紹介します。

要点だけ知りたい人へ

まずは要点をピックアップ!

要点
  • 「≃直会」は芸術大学在学中の四宮スズカさん、雛さん、ヨシダユイノさんによる展覧会で、作品と作品の関連性を考察しながら、展示空間を楽しめるような展示空間となっていました。
  • 四宮スズカさんは、この世界の成り立ちや構造性、人間における認知や行動の在り方、人と人の関係性を考察し発見した事象(概念)を作品として表現しています。
  • 雛さんは、モチーフとするモノ自体に迫りたいという考えから、そのための手段としてモチーフを別のモノとして捉えたり、他のモノに置き換えるといった手法を用いた表現をしています。
  • ヨシダユイノさんは、時間をテーマにした作品を制作したり、自然と調和した作品を制作したいという考えから自然にあるものを素材として用いて制作するなど、表現の幅を広げながら作品制作をしています。
  • 本記事では展示作品から6作品をピックアップしてご紹介します。

それでは、要点の内容を詳しく見ていきましょう!

「≃直会」とは?

≃直会は「イコールなおらい」と読みます。

“≃”は「ほぼ等しい、おおよそ等しい、近似的に等しい」などを表す記号で、数学においては近似式や近似値などに使われます。

“直会(なおらい)”は「神さまへのお供え物をした後、みんなで分け合って食べること」という意味があります。

展示作品を供え物の饌(せん:お供えした飲食物)として捉えた場合、鑑賞者が三者三様の作品を観ながら味わうことで、作品と作品の関連性を考察しながら、展示空間を楽しめるようにしているのかもしれません。

展示作品を鑑賞

展示会場には四宮スズカさん、雛さん、ヨシダユイノさんそれぞれの作品が展示していました。それぞれの作品を観ていきましょう。

四宮スズカ

左から順に
《←lo ok→ phase.1》
2021、四宮スズカ、Acrylic Mixed media on canvas、F12(606 × 500mm)
《←lo ok→ phase.2》
2022、四宮スズカ、Acrylic Mixed media on canvas、F12(606 × 500mm)
《←lo ok→ phase.3》
2022、四宮スズカ、Acrylic on canvas、F12(606 × 500mm)

左から右へとストーリーが繋がっているように見えた作品。

作品を観てまず感じたのは、建設物の風化し砂漠となっていく様子を描いているように見える点です。女性の肖像が型取られた建築物が、時間経過とともに土と化していく様子から、自然現象の大きさや文明による挑戦を感じます。

そこから、四宮スズカさんからも作品についてお話を伺った後に感じたのは、描かれたモチーフが“時間の経過とともに異なる役割を果たすこともある”ということです。例えば、江戸時代の人がスマートフォンを渡されても「電話をする道具」と認識できないように、時代背景や生活様式の違いによって、目の前にあるモノが持つ意味も変化します。

三連の作品に描かれているモチーフも、女性のモチーフが型取られたおしゃれな建築から、何かの偶像的な存在として、意味合いを変えていく様子が描かれているようにも見えてきます。

緻密に描かれた作品の世界観に引き込まれる作品でした。

四宮スズカ とは?

四宮スズカ(しのみや すずか)さんは2001年香川県生まれ、多摩美術大学油画科に在籍しながら作品制作をしています。

この世界の成り立ちや構造性、人間における認知や行動の在り方、人と人の関係性を考察し発見した事象(概念)を作品として表現しています。

雛、oilpainting ,陶片

いろんなモチーフが描かれた、明るい印象の作品。

右側に描かれたモチーフには穏やかな如来像のような顔が描かれています。モチーフの形から、枝分かれして人型に見えた大根のようにも見えてきます。

雛さんの作品には、“そのものとして存在しているものが別のものに見えた様子を捉えた作品”が登場するそうで、作品にもあるものが別のものに見えた様子が描かれているのかもしれません。

また、作品の左下には陶片が貼り付けられています。陶器としての機能を失ったモノを作品の一部として扱うことで、陶片に別の意味を与えているのかもしれません。

キャンバス作品に陶片という立体を重ねることで、モチーフとして描いているものへの探求を深めているような作品でした。

雛 とは?

雛(ひいな)さんは多摩美術大学油画科に在籍しながら作品制作をしています。

主に油絵を制作し、モデルとするものの素材を置き換えて制作した立体作品なども制作されています。

作品はモチーフとするモノ自体に迫りたいという考えから、そのための手段としてモチーフを別のモノとして捉えたり、他のモノに置き換えるといった手法を用いて表現しているそうです。

ヨシダユイノ

《soil / island(部分)》
2022、ヨシダユイノ、Acrylic on canvas、F6(318 × 410mm)

白い背景に島が描かれている作品。

島には地層の断面が描かれていて、その奥の方はカラフルな彩りで描かれています。島には地層という時間の刻み方があるように、“自然には時間を刻む傾向がある”という捉え方を提示しているようです。

また、奥のカラフルな部分は地層としては違和感のある組み合わせになっています。想像ですが、そこにはこの島で生きる人の多様性が表されているのかなと感じます。そう考えると、島とヒトの“時間の堆積”が表現された作品なのかなと考えながら鑑賞していました。

手前にはポツンと人影のようなものが描かれているようです。島に比べたら小さな存在ですが、そんな小さな人でも、島に自分が生きた時間をカラフルな彩りの一色として記憶を刻んでいくことが表現されているようでした。

ヨシダユイノ とは?

ヨシダユイノ さんは東京造形大学絵画専攻領域に在籍しながら作品制作をしています。

時間をテーマにした作品を制作したり、自然と調和した作品を制作したいという考えから自然にあるものを素材として用いて制作するなど、表現の幅を広げながら作品制作をしています。

作家と観る作品解説動画も

今回の展示の模様は、作家本人による「Creative Thinking」と題した対談動画にもまとめられています。作品の解説や、どのようなことを考えて作品を制作しているのかなど、芸術大学で学びながら制作・展示をしている3人のリアルな一面を垣間見ることができます。

今回ご紹介した作品以外の作品も観ることができるので、併せて観てみてください。

雛×四宮スズカ


後編はこちら

ヨシダ ユイノ×四宮スズカ


後編はこちら

まとめ

四宮スズカさん、雛さん、ヨシダユイノさんによる展覧会「≃直会」を鑑賞してきました。大学在学中に自分達の力で展覧会を開催しているそうで、そういった意味でも刺激を受ける展覧会でした。

三者三様の作風で、異なる表現の作品を並列に置き鑑賞することで、例えば

  • 四宮スズカさんとヨシダユイノさんの作品が“時間の経過”という観点で繋がりを持って見えたり
  • 雛さんと四宮スズカさんの作品が“物質の捉え方の変化”という観点で繋がりを持って見えたり

しているように感じました。作品が並ぶだけでは特別な繋がりはないのかもしれませんが、そこに鑑賞者がいることで作品に繋がりが生まれ、作品の新たな見方にも繋がる体験ができました。

《とうめいにんげん》
2022、ヨシダユイノ、発泡スチロール

また、雛さんの作品の素材にも使われていた陶片は会場の所々にも置かれていました。一見するとただの廃棄物に見えますが、陶片は元々陶器だったように、作品同士も鑑賞者の思考によってひとつの意味を見出したり、別々の良さを感じることができることを暗示しているようでした。

そういう意味で、「≃直会」というタイトルも腑に落ちる展覧会でした。

展示会情報

展覧会名≃直会(イコールなおらい)
会場GALLERY2511(Instagram:@gallery2511
東京都千代田区西神田2丁目5−11 出版輸送ビル 3F
会期2022年8月22日(月)~8月28日(日) [終了]
開廊時間12:00~20:00
※最終日は12:00~17:00
サイトhttps://gallery.2511.jp/exh/220823/
観覧料無料
作家情報四宮スズカさん|Instagram:@suzukashinomiya
雛さん|Instagram:@piyorina357
ヨシダユイノさん|Instagram:@yoshida_yuino

※サムネイル画像は撮影画像を元にCanvaで編集したものを使用しています。

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ABOUT ME
よしてる
1993年生まれの会社員。東京を拠点に展覧会を巡りながら「アートの割り切れない楽しさ」をブログで探究してます。2021年から無理のない範囲でアート購入もスタート、コレクション数は25点ほど(2023年11月時点)。
アート数奇は月間1.2万PV(2023年10月時点)。
好きな動物はうずら。
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