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赤松晃年「Good morning.I’ll do my best as well.」|“カワイイ”女の子を描いたアート

マンガや雑誌、アニメ、ゲームなどにみられる、日本らしさを感じる“カワイイ(kawaii)”女の子を現代アートとして描いた作品を観てきました。今回は京都の祇園にある「大雅堂」にて開催した、赤松晃年さんの個展「Good morning.I’ll do my best as well.」の模様をご紹介します。

要点だけ知りたい人へ

まずは要点をピックアップ!

要点
  • 赤松晃年(あかまつ あきとし)さんは1977年生まれ、北海道出身のアーティストです。
  • 赤松晃年さんはカワイイ女の子をモチーフとした作品を制作されていて、以前はMr.さんのアシスタントとして約6年ほど勤務されていました。
  • 展覧会に向けて、村上隆さんが制作した紹介文が掲載され話題となりました。
  • 本記事では展覧会の作品の中から点の13作品をピックアップしご紹介します。

それでは、要点の内容を詳しく見ていきましょう!

赤松晃年とは?


赤松晃年(あかまつ あきとし)さんは1977年生まれ、北海道出身のアーティストです。2004年に創形美術学校研究科を卒業された後、2007年から村上隆さんが代表を務めるカイカイキキ所属アーティスト、Mr.さんが独立してスタジオを持った際のアシスタントとして約6年ほど勤務されていました。

主な展覧会に

「そこは小さな夢の国」(2004、ギャラリーeシエスタ、東京)
「赤松晃年展」(2005、ギャラリー銀座芸術研究所、東京)
「THE☆AKAMATSU」(2011、Hidari Zingaro、東京)
「赤松は少し先の事を考えましたールシッド・ドリームー」(2013、青井画廊、大阪)

があります。また、2004年、2010年には東京ビックサイトにて開催されたGEISAIへも出展しています。

“カワイイ”女の子を描いた作品

《Spray painting No.4》
2022、赤松晃年、キャンバス,アクリル,綿布、653 × 530mm(15F)

赤松晃年さんはカワイイ女の子をモチーフとした作品を制作されています。以前の作品には「盛る」や「デコる」といったギャル文化を取り入れていたり、近年はギャルゲームの要素を取り入れているそうです。日本ならではのオタクカルチャーも根底に感じますが、作品は現実の女の子のカワイイ、カッコいい姿をアートで表現しているそうです。

背景の景色が描かれているものは、赤松晃年さんが見た近所の景色を組み合わせているそうで、ゲームのように理想の女の子との仮想恋愛をより身近なものに感じれるようにしているそうです。

また、女の子の輪郭線が白く縁取られているものが多く、そこには視覚的に世界が変わったことを伝える記号のような一面にも感じ取れます。現実世界と仮想世界を重ね合わせることで、女の子を現実により近い距離感で、一緒にいる雰囲気を感じられるようにしているのかもしれません。

村上隆さんによる展覧会に寄せたコメントにも注目

展覧会に向けたコメントには、村上隆さんが制作した紹介文が掲載されています。

その文章量は400字詰め原稿用紙で数えると11枚分ものボリュームで、フライヤーでも1ページ分を占めていました。文章は村上隆さんだからこそ書ける内容となっていて、ユーモアをたっぷり含めながらも、分かりやすく赤松晃年さんの半生を紹介していました。

今回の個展は赤松晃年さんにとって9年ぶりの個展となります。その間にどんな物語があったのかも執筆されています。

全文は大雅堂の展覧会ページでチェックできるので、作品と合わせてチェックしてみてください。

展示作品を鑑賞

展覧会に展示されていた作品の中からピックアップしてご紹介します!

女の子と風景が描かれた作品

ムーンライト-感謝、願いを君に-

《ムーンライト-感謝、願いを君に-》
2022、赤松晃年、キャンバス,アクリル,綿布、1620 × 1292mm(100F)

本展の中で最も大きなサイズの作品です。背景には秘密の場所のような雰囲気を感じる草原が広がり、そこを大きな月が照らしています。野に咲くたんぽぽが辺りに舞い、その綿毛が月に照らされ神秘的な雰囲気を演出しているようで、ゲームにおける神秘的なワンシーンのような趣を感じます。

スカートを踊らせているところから、ツインテールの金髪の女の子が振り返ってこちらを向いた瞬間を描いているように見えます。

背景が現実離れし過ぎない程度の日常生活で見る野花の風景であることから、カワイイ女の子も不思議と身近にいるように感じます。

最近では2.5次元という言葉やコスプレがテーマの漫画が少年漫画に掲載されるなど、アニメやゲームなどに代表される日本のサブカルチャーがさまざまな形で表現され、熱を帯びてきているように感じます。作品の中でもギャルゲームのワンシーンを現代美術という形で表現しているようでした。

夕景ーおもいでー

《夕景ーおもいでー》
2022、赤松晃年、化繊ロールキャンバス,アクリル,パネル、1030 × 730mm

夕焼けと一緒に河川敷の風景が描かれている作品。河川敷は何気ない日常のワンシーンとして、青春をテーマにしたアニメや漫画、ゲームなどの作中によく登場するイメージがあります。

この作品の夕暮れのワンシーンからも、そんな何気ない女の子との日常の思い出を描いているように感じました。

もし、青春時代に描けなかった理想が後悔として残っているとして、自身の記憶の中にある景色と作品の間にリンクするところがあるとしたら、描きたかった思い出のピースを作品に登場するカワイイ女の子が埋めてくれるかもしれないと、作品を鑑賞しながら思いました。

こっちにおいでよ

《こっちにおいでよ》
2010、赤松晃年、パネル,アクリル、652 × 530mm(15F)

2010年と少し前に描かれた作品。今回の展覧会のフライヤーで表紙を飾っていたのもこの作品でした。

先にご紹介した2つの作品とは異なり、女の子の輪郭線は景色や周りにいる動物たちと同様に黒で描かれています。そのためか、女の子は現実世界にいる存在として映るように感じます。輪郭線の違いで作品の女の子の見え方が変化するのは面白いなと感じました。

また、田園風景はとてものどかな雰囲気を醸し出していて、そんな景色の中でブーツを履いた女の子がこちらに呼びかけている姿にちょっとした違和感を感じました。

個人的には、地方創生を東京に住む女の子が呼びかけているように見え、現実の姿をユーモアを含めストーリー的に描かれているように感じた作品でもありました。周りに動物たちが集まっているところからも、そんなことを感じたのかもしれません。

夜桜、花見にコスプレで来た。

《夜桜、花見にコスプレで来た。》
2010、赤松晃年、額入り、790 × 540mm

こちらの作品も《こっちにおいでよ》と同様に2010年に描かれた作品。桜が舞う景色の中にムチを持った制服姿の女の子が描かれています。年代の異なる作品を観ていると、女の子の表情や雰囲気が近年の作品とは異なることに気がつきます。

特に目の描き方の違いから、そのような変化を感じるのかもしれません。

女の子と抽象的な背景が描かれた作品

Spray painting No.5

《Spray painting No.5》
2022、赤松晃年、キャンバス,アクリル,綿布、652 × 530mm(15F)

続いて、背景の異なるカワイイ女の子の作品を観ていきます。こちらの作品は展覧会会場に足を運んですぐ目の前に展示してあった作品です。

背景は銀色の上にスプレーやドロッピング(キャンバスに筆やスティックに付着させた絵の具を飛散させて描く手法のこと)が重ねられていて、そこに女の子が描かれています。先ほどのゲームのワンシーンのような雰囲気の作品とは異なり、シックでかっこいい印象となっていました。

一方で、バストアップ写真のような構図が恋愛シュミレーションゲームのようでもあり、髪を掻き上げるように腕をあげている様子が可愛らしい作品でした。

Good morning.I’ll do my best today as well

《Good morning.I’ll do my best today as well》
2022、赤松晃年、キャンバス,アクリル,綿布、652 × 530mm(15F)

本展のタイトルと同様の作品。直訳すると「おはようございます。今日も一日がんばります」という意味になります。

銀色の背景の中央には白い輪郭線で描かれた女の子がポーズをとっていて、その周りを彩るようにデフォルメされた女の子のキャラクターや人形のようなキャラクターが配置されています。ステッカーを画面上に貼ってデコる(装飾する)ようにも見えます。

まるで、女の子が身近なオシャレであり自己表現でもある行動を作品の中に反映しているようでした。

この作品には似たタイトルでもうひとつ、作品が展示されていました。

Good morning.I’ll do my best today as well [Gao〜]

《Good morning.I’ll do my best today as well [Gao〜]》
2022、赤松晃年、キャンバス,アクリル,綿布、652 × 530mm(15F)

こちらはタイトルに“Gao〜”とある通り、中央にいる女の子をはじめ、デフォルメされた女の子も爪を立てるようなポーズをしています。先ほどの作品のステッカーと配置が似ているようにも見えます。

キャラクターやステッカーの配置が同じでも、オシャレの感性や自己表現の違いによって印象がガラリと変わることを、作品の対比を通して表現しているように感じました。

雀蜂

《雀蜂》
2022、赤松晃年、キャンバス,アクリル,綿布、910 × 727mm(30F)

水色のスクーターに腰掛けた女の子が描かれた作品。

おそらく作品タイトルの由来ともなっているスクーターはVESPA(ベスパ)と呼ばれるもので、イタリアのオートバイメーカーであるピアッジオという企業が製造しているものです。ベスパとはイタリア語で“スズメバチ”を意味しているそうで、甲高いエンジン音が由来となっています。

スクーターに乗ってポーズを決める女性を見ていると、バイク雑誌の表紙を連想させます。機械とカワイイの組み合わせから“カッコよさ”も生まれるような印象があります。背景の銀色とピンク色の組み合わせも、女性のカッコよくもカワイイ姿を際立たせているようでした。

5月の空

《5月の空》
2022、赤松晃年、キャンバス,アクリル,綿布、910 × 727mm(30F)

横を向いた女の子が描かれた作品。こちらも可愛らしいながらも、抽象的な背景のもと描かれるとカッコよくも見えます。爽やかに晴れ渡った日の夜空のような暗色が、女の子の金髪を強調しているようです。

オタクという日本らしさを感じる文化が絵画と融合し、現代アートで表現されているようでした。

ドローイング作品

会場には紙に描いたドローイング作品も展示していました。ひとつの壁に女の子の「カワイイ」を集めているようでした。

drawing No.31

《drawing No.31》
2021〜2022、赤松晃年、紙,アクリル、250 × 175mm

drawing No.23

《drawing No.23》
2021〜2022、赤松晃年、紙,アクリル、250 × 175mm

drawing No.24

《drawing No.24》
2021〜2022、赤松晃年、紙,アクリル、250 × 175mm

よく見ていると、同じ構図の別パターンで描かれた女の子もいくつかありました。キャンバスに描かれた作品《Spray painting No.5》を描くための、いわば習作のような位置付けにも見受けられます。

作品制作の流れを垣間見ているようでした。

会期中は公開制作も実施

会期中は大雅堂の3階で100号(1620 × 1292mm)の絵の公開制作を実施していました。背景には京都滞在中に見た街の景色を描いているそうです。

公開制作は赤松晃年さんのInstagramアカウントにライブ配信のアーカイブが残っているので、そちらからチェックしてみてください。

まとめ

赤松晃年さんの展覧会を鑑賞していきました。

マンガやアニメ、ゲームなど、日本らしさを感じるオタクカルチャーを感じつつ、雑誌に登場するモデルやギャル文化の要素、現代の風景、抽象表現などを織り交ぜた“カワイイ(kawaii)”、そして”カッコいい”世界観がアートに落とし込まれているように感じました。

マンガやアニメで日本語を覚える外国人がいるほど、オタク文化は国際的な繋がりを生んでいます。作品にも同様の繋がりを生んでいくような印象がありました。

展示会情報

展覧会名eggo0084 赤松晃年 展 Good morning.I’ll do my best as well.
会場大雅堂(Instagram:@gallery_taigado
京都府京都市東山区祇園町北側301−2
会期2022年8月25日(木)~9月3日(土)[終了]
開廊時間10:00~18:00(会期中無休)
サイトhttps://www.g-taigado.com/exhibition/2022年/赤松晃年/
観覧料無料
作家情報赤松晃年(あかまつ あきとし)さん|Instagram:@akitoshiakamatsu
ABOUT ME
よしてる
東京でアート巡りををしながら「アートの割り切れない楽しさ」を探究している理系男子です。会社員をしながら、週末アートウォッチをしています。 2021年から無理のない範囲でアート作品の購入も始めました。 好きな動物はうずら。

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