瀬戸優「MOVEMENT」|今を共に生きる野生動物の”動”を感じるアート
今回は銀座シックスArtglorieux(アールグロリュー) GALLERY OF TOKYOにて開催した瀬戸 優さんの個展「MOVEMENT」の模様をご紹介します。
この記事を読むとこんなことが分かります。
- 瀬戸優さんと作品コンセプトを知れる。
- ネコ科の野生動物作品と出会える。
- 同時刻的に生きる野生動物の生命感に触れることができる。
これまでの等身大の野生動物から、全身像へと進化する過程を垣間見れる個展でした。それでは、生命感あふれる動物作品を観ていきましょう!
瀬戸優とは?
瀬戸優(せと ゆう)さんは神奈川県小田原市生まれの彫刻家です。自然科学を考察し、主に野生動物をモチーフとした彫刻作品を制作されています。
高校2年生の頃に、得意な数学での進学を考えていましたが、「このままで良いのか」と考え、好きな絵を描くことを仕事にすることを選択し、美術大学への進学を決めたそうです。
美術予備校の体験に行きはじめて彫刻と出会い、日本で彫刻というジャンルを学ぶ同年代がいることに衝撃を受けたそうです。
大学での基礎学習をしながら、自宅でできるデッサンを1日1枚Twitterに投稿していくうちに、「絵を買いたい」という声があがり、職業として模索をしながらメディアにも取り上げられるようになり、彫刻家としての道をスタートしています。
作品コンセプトは「彫刻表現における自然科学との融合生」
瀬戸優さんは「彫刻表現における自然科学との融合生」を テーマに、「テラコッタ(土器)による実物大の動物彫刻」 を作品にされています。自分と同時刻的に、地球のどこかに生きている動物を、等身大に、生き生きと表現しています。
日本で同世代の彫刻家がいたことを知らなかった、日本という住む地が同じでもそんな体験をするのだから、それが地球上すべてとなれば、もっと多くの未知が広がっているのはまず間違いありません。
もしかしたら、作家自身の体験が作品コンセプトに繋がったのかもしれません。
テラコッタ(土器)を用いた彫刻を制作
作品制作にはテラコッタという粘土を用いています。
粘土を素焼きした素材のこと。古代から用いられる素材で、彫刻素材として好んで使用される素材(土・木・石・金属)の中でももっとも柔らかい素材。加工がしやすい特徴があります。
作品を観るとよくわかりますが、彫刻作品の表面には凹凸があり、指紋やヘラの跡など、造形する上での痕跡が多く残されています。そこには、
- 作家の息遣いや素材との対話の痕跡がのこっているというリアルさ
- 動物の生々しい生命感をもった彫刻にする
という思いがあるようです。
作り込みすぎると彫刻が硬くなり、剥製のように見えてしまう瞬間があるようで、生命感が宿る柔らかさを見極めた表面処理をしています。
剥製は絶滅危惧種の造形を保存するという印象がありますが、瀬戸優さんの作品からは今この瞬間を共に生きている生命のリアルさを感じます。
個展「MOVEMENT」を鑑賞
今回の個展では、これまでの等身大の動物像を制作するコンセプトから全身像にこだわり制作した作品が展示されていました。等身大だとどうしても身体の一部を切り取った作品となっていたそうで、全身像になった作品からは動きが感じ取れます。
今回の作品モチーフはエネルギッシュなネコ科の動物たち約20点です。全身像の表現により動物の動きがみえてくる作品の一部を観ていきましょう!
movement-サーバル-
主にサハラ砂漠以南のアフリカ大陸に生息するネコ科の動物。特徴的な大きな耳と、細長い四肢がスマートでカッコいいです。
作品を遠目からみると本物のようなリアルさがあり、まるで大草原を凛々しく横断しているかのようです。
彩色のグラデーションもやさしい配色で、撫でるように何度も塗り込んでいるのかな、と感じます。
一方で、近くから作品をじっくり観てみるとテラコッタにうねるような凹凸があり、作家さんの今生きているリアルさも、同時に刻み込んでいるようです。
movement-オセロット-
主に南アメリカの熱帯雨林に生息するネコ科の動物。ネコ科のなかでは珍しく泳ぎがうまいのが特徴です。
黒い斑点模様の一部が水のように滴って見える箇所もあります。制作過程でも、焼成した粘土に薄めた絵の具を何度もかけ流すように彩色しているようで、自然なグラデーションを生み出しているようです。
作家の手のみではなく、水と重力ももちいて表現することで、今を生きている動物と作者のリアルタイムな対話の架け橋をしているようでした。
先程のサーバルとは異なり瞳孔が開いていて、こちらは夜の姿のようです。
drawing relief-トラ-
relief(レリーフ)とは、浮き彫り作品のことです。彫刻作品以外にも、絵画のような作品も何枚か展示されていました。
トラの身体にいくつも刻まれているように見える線が気になります。
毛並みを表現しているのか、歴戦の勲章なのか、集団の長のような風格を感じます。
movement 003 -ヒョウ-
手のひらに乗りそうなサイズ感の作品もありました。こちらは斑点模様はなく、表情含め抽象度が増した表現になっていました。
これまでの作家の実物大の動物彫刻とはまた異なる表現に感じる作品です。
他にも抽象度は増しているものの、くつろいだ姿勢やあくびをしている瞬間を作品にしているものもあり、野生の休日のような、かなり自由奔放な印象をうけました。
まとめ:今を生きる野生動物の躍動感や生命感を感じる
瀬戸優さんの「MOVEMENT」についてまとめました。
私自身初の瀬戸優さん作品鑑賞で、可愛らしくも野生動物ならではの凛々しさを感じました。
博物館で観るような剥製の動物とは違い、躍動感や生命感を感じることができ、実際には会えないけれど、今を一緒に生きている動物と時間を共有できた感覚になりました。
展示会情報
展覧会名 | 瀬戸優展「MOVEMENT」 |
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会場 | Artglorieux(アールグロリュー) GALLERY OF TOKYO 東京都中央区銀座6丁目10−10−1 GINZA SIX 5階 東京メトロ銀座線 銀座駅 徒歩3分 東京メトロ日比谷線、都営浅草線 東銀座駅 徒歩5分 |
会期 | 7月22日(木・祝)~7月28日(水) |
開廊時間 | 10:30~20:00 ※緊急事態宣言中の時間。最新情報は公式サイトをご確認ください。 |
サイト | https://artglorieux.jp/ |
観覧料 | 無料 |
作家情報 | 瀬戸優さん:Instagram|@yu_seto1222 瀬戸優さんの他作品も観てみる |
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