アートフェア
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「EASTEAST_TOKYO 2023」鑑賞レポート|文化交流を促進するアートフェア(11ギャラリー16作家をご紹介)

よしてる
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東京のアートシーンにはまだ見ぬ発見がたくさんあります。今回はそんな発見ができる場所となっていた、北の丸公園にある科学技術館にて開催された新たなアートフェア「EASTEAST_TOKYO 2023」の模様をご紹介します。

「EASTEAST_TOKYO 2023」とは

「EASTEAST_TOKYO 2023」とは、24のギャラリーと150以上のアーティストやコレクティブが集まるアートフェアです。2020年に誕生したアートフェア「EAST EAST_Tokyo」を大幅リニューアルしたフェアで、再始動の記念すべき1回目にあたります。

EASTEAST_TOKYO 2023では作品の展示だけでなく、映像や音楽、パフォーマンス、トークセッション、フードまで、現代美術だけに留まらない多様な文化交流につながるプログラムが用意され、コミュニティの垣根を超えて考えや価値観を共有できる、一種の“広場”のような空間に。

遊びや楽しさもうまく調和させながら、展示作品ともしっかりと向き合えるようになっていました。

EASTEAST_TOKYO 2023のCommunity Agreement

また、参加者、関係者へ向けた約束事を明文化した「Community Agreement」も用意されているのが特徴的でした。イベント自体が持続性を持ちながら、文化交流を促進できるような取り組みもなされています。

アート作品展示エリアを観る

センターホールから各展示エリアへアクセスしやすい作りに

EASTEAST_TOKYO 2023は北の丸公園にある科学技術館で開催。センターホールを中心に各展示ブースへアクセスしやすい構造となっていて、1時間程度で全体を巡れるようになっていました。

多彩なプログラムが集まるコンパクトなアートフェアの中でも、ここではアートに焦点を当てて、ギャラリーごとに作家とその作品をご紹介します。

PARCEL(加茂昂/森靖/小畑多丘)

PARCELは2019年6月、東京・日本橋馬喰町のDDD HOTELの一角に開廊したギャラリーです。元は立体駐車場だった特徴的な空間にて、現代美術を軸にカルチャーを横断するプログラムを形成しています。

PARCEL|Instagram:@parceltokyo

加茂昂(かも あきら)

花びらが舞い散る景色。その木々をよくみると、絵の具が盛られるように立体的に描かれていることに気づきます。

この作品は東日本大震災を受けて制作しているそうで、景色の中には「この先通り抜けができない」と描かれた注意書きの立て看板が。たったひとつの立て看板があるだけで、その先の道へは入れないようになっています。その様子から、木々をはじめとした生命は成長を続けていく一方で、人工物はあの日から時を止めたように佇み、社会から忘れ去られていく虚しさを感じます。

加茂昂とは

加茂昂(かも あきら)さんは1982年生まれ東京都出身のアーティストです。

東日本大震災(2011年3月11日)後、「絵画」と「生き延びる」ことを同義に捉え、心象と事象を織り交ぜながら「私」と「社会」が相対的に立ち現われるような絵画作品を制作されています。

加茂昂さん|ウェブサイト:https://akirakamo.net/

森靖(もり おさむ)

サンタクロースのような見た目かと思いきや、大きな手袋、大きなボタンのような二つの木目、ケンタウロスのような4本の脚と、カオスな見た目となっています。細部まで見たくなる彫刻作品です。

この作品はDのつく夢の国にいるキャラクターの特徴を取り入れているそうです。夢の国に登場するキラキラとした存在を凝縮した姿を見ているようで、夢の国から立ち去る時のもの寂しさや、現実の世界とのギャップを感じます。

森靖とは

森靖(もり おさむ)さんは1983年生まれ、愛知県出身のアーティストです。

通俗的なシンボルや神話から着想を得て、その姿を変容させ、躍動感に満ちた人物描写と細部まで彫り出した彫刻作品を制作されています。彫刻作品には生乾きの木材と鑿(のみ)を用いて、生の木材ならではのひび割れや剃りも取り入れた表現を取り入れています。近年は粘土を用いた塑像作品も制作されています。

森靖さん|Instagram:@osamu_mori_
他展示での森靖さん作品はこちら

小畑多丘(おばた たく)

2つのキャンバスを横に繋げていて、じっと見ていると左右で模様を対照的に描いているように感じてきます。

小畑多丘さんはブレイクダンスの経験を反映した作品を制作されています。ドローイング作品を近くで観るとまるでブレイクダンスのように、移動性に富んだ筆跡が目立ちます。筆跡の躍動感から、地面に飛び込みながらダンスをしている人の姿にも見えてくるようです。

ちなみに、作品タイトルにある「diptych(ディプティク)」とは、二つ折りの書字板や二連祭壇画など、繋がった2枚の平板を持つあらゆるものを指す言葉です。

小畑多丘とは

小畑多丘(おばた たく)さんは1980年生まれ埼玉県出身のアーティストです。

B-BOY(ブレイクダンサー)の木彫を軸に、ドローイングや版画など平面作品を制作されています。B-BOYとしても活動しており、その身体表現技術や躍動を彫刻でも精力的に表現し続け、人体と衣服の関係性や、B-BOYの彫刻を端緒に生まれる空間を追求しています。

小畑多丘さん|Instagram:@takuobata

HAITSU(山口幸士/オーガミノリ)

HAITSUは西荻窪のアパートの一室にある、住所非公開・予約制のビューイングスペースです。ディレクター・作家との対話をもとに各展示ごとにテーマを設け、展覧会が共同で作られ、少人数の予約制だからこその丁寧な鑑賞が可能となり、鑑賞者・ディレクター・作家のコミュニケーションが生まれる空間となっています。

HAITSU|Instagram:@haitsu.nishiogikubo

山口幸士(やまぐち こうじ)

曖昧な境界線の中に、青い布のシワのような景色が浮かび上がっているように見えます。

こうした曖昧な境界線は、スケートボードに乗りながら眺めた流れ⾏く景⾊の描写と、作家自身の視⼒が良くない背景から生まれる裸眼で見た⾵景が合わさって生まれているそうです。近くで観ると、紙や布が水を吸って生地表面を移動する繊維毛細管現象のようにも見えてきます。水のように溶け出した景色の輝きを観ているような感覚になりました。

山口幸士とは

山口幸士(やまぐち こうじ)さんは1993年生まれ、神奈川県出身のアーティストです。

街を遊び場とするスケートボードの柔軟な視点に強く影響を受け、日常の風景や身近にあるオブジェクトをモチーフにペインティング、ドローイング、コラージュなど様々な手法を用いて作品を発表しています。 2015年から3年間、ニューヨークでの活動を経て現在は東京を中心に活動しています。

山口幸士さん|Instagram:@kojiyamaguchi_orista

オーガミノリ

自然発生的な記号が描かれているように見える作品。どう捉えればいいか考えさせられながら、即興で描き上げていく快感が存在しているように感じます。

オーガミノリさんは漆作家として活動されていたこともあり、手間や時間のかかる漆とは対照的に、絵画へは創造性をライブ感のある表現となっているようにも観て取れます。そんなライブ感の中にある90°の白い線が理性的に描かれているように見えます。

オーガミノリとは

オーガミノリさんは1993年生まれ、東京都出身のアーティストです。

漆作家としてオブジェやヘアーピースなどの装飾物を手がけていたところから、環境と心境の変化から、2017年より絵画を制作されています。作家自身、即興という言葉を好み、漆という手前と時間、忍耐力、精密さを要する素材を扱ってきた反動のように、無作為に湧く線や面を目の前にある支持体に落とし込んでいます。

オーガミノリさん|Instagram:@mino_oga

GALLERY TARGET(KYNE/永井博)

GALLERY TARGETは原宿を拠点とし、国内外の現代美術作家の作品を中心にセレクト、展覧会を開催している画廊です。企画展や外部企画などを順次展開しています。

GALLERY TARGET|Instagram:@gallery_target

KYNE(キネ)

帽子を被った女性のポートレート作品。F150号サイズともなると迫力があり、KYNEさんの特徴的な女性像の存在感をより感じます。

シンプルな背景に女性を描く作風で知られているKYNEさんの作品、今回はファッションアイテムとして帽子を被っているのが特徴的だなと感じました。ふとした女性の動きの瞬間が絵画に落とし込まれていて、凛とした雰囲気を感じます。

2022年から新たに制作している静物画の新作も展示していました。今回は花瓶に生けた花が描かれていて、花瓶の透明感もシンプルながら綺麗に感じます。

背景の空間が多いこともあってか、中心にある花が際立っているようで、まるで茶室を彩る茶花のような雰囲気もあるようでした。

KYNEとは

KYNE(キネ)さんは1988年生まれ福岡県出身のアーティストです。

大学時代に日本画を学ぶ一方で、同時期にグラフィティ表現に出会い、それぞれの表現方法で作品を制作していました。また、1980年代の大衆文化、そして現代のミックスカルチャーからの影響も受けており、それらが作品にも反映されています。

“KYNE-girl”と呼ばれる女性のポートレート作品が有名で、モノトーンで描かれた凛とした表情の女性の作品を多く制作しています。

KYNEさん|Instagram:@route3boy
他展示でのKYNEさん作品はこちら

永井博(ながい ひろし)

トロピカルでクリアな風景作品で知られる永井博さんの作品。その中でもプールだけを描いたこちらの作品は珍しいなと思い、惹かれました。水面や芝生部分を近くで観ると繊細な点で描かれていることが分かります。

作品の周りはL型で額装されることで引き締まった印象となっていました。

永井博とは

永井博(ながい ひろし)さんは1947年生まれ、徳島県出身のイラストレーター、アーティストです。

グラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートした後、1978年よりフリーのイラストレーターとして活躍されています。

アメリカ滞在で感銘を受けた景色や町並みを作品に取り込み、現在のトロピカルでクリアな風景作品を中心に制作を続けています。永井博さんがレコードジャケットを手がけた大滝詠一さんの「A LONG VACATION」「NIAGARA SONG BOOK」などが有名で、ジャケットイラストや広告ビジュアルは今もなお語り継がれています。

永井博さん|Instagram:@hiroshipenguinjoe
他展示での永井博さん作品はこちら

ANOMALY(玉山拓郎)

ANOMALYは2018年、東京・東品川にオープンしたギャラリーです。時代の要請に向き合い、展覧会だけでなく、トークセッションやパフォーマンス、ジャンルの枠組みから逸脱する試みも行っています。

ANOMALY|Instagram:@anomaly_tokyo

玉山拓郎(たまやま たくろう)

展示ブース全体を使ったインスタレーション作品で、生活空間にある家具がぐにゃりと曲がったり、食べ物が壁にくっついていたりと、非現実的な空間が広がっています。

玉山拓郎さんはありふれたオブジェが互いに関係し合いながら生み出す物語に惹かれたことから制作しているそうです。日常的な道具が本来持つ役割を放棄し、人間と生活空間を共にし、共鳴しようと意思を持っているように見えます。

玉山拓郎

飲食スペースにも玉山拓郎さんの作品が。円柱の周囲に緑色のカラーライトが取り付けられ、空間の半分ほどを緑に染め上げていました。

カラーライトによる視覚の飽和と不安定化という要素もあるようで、そう考えるとこの配置にも意味があるのかなと感じます。ちょうど太陽の光が入る窓際に配置されていて、太陽を遮断し光を占拠することで、ある種クラブのような雰囲気も感じる光景になっていました。

玉山拓郎とは

玉山拓郎(たまやま たくろう)さんは1990年生まれ、岐阜県出身のアーティストです。

身近にあるイメージを参照し生み出された家具や日用品のようなオブジェクト、映像の色調、モノの律動、鮮やかな照明や音響を組み合わせることによって、緻密なコンポジションを持った空間を表現しています。

玉山拓郎さん|Instagram:@takurotamayama

GALLERY SOAP(ソー・ソウエン)

GALLERY SOAPは1997年、福岡県北九州市で国内外のアーティストを紹介することを目的としたオルタナティブスペースとしてスタートしたギャラリーです。設立以来、国内外のアーティストの展覧会に留まらずノイズ・実験音楽などの音楽イベント、映画やビデオプログラムの上映会、レクチャーシリーズなどを開催しています。

GALLERY SOAP|Instagram:@gallerysoap.jp

ソー・ソウエン(Soh Souen)

遠目で見ると人物のバストアップイメージが描かれていると分かる作品。近くで観ると正方形のドットが等間隔で並べられていています。

《tie》シリーズと呼ばれる作品で、作家が知人に頼んで入手した証明写真をピクセルに起こして引き伸ばし描かられています。隙間の部分は鑑賞者の目で統合されて、描かれているのが「人物」と分かる、その行動の過程までを作品化しているようでした。

今回のアートフェアでは卵を使ったライブパフォーマンスも観ることができました。

「生命の象徴である卵を身体のくぼみに挟み、落とさないように時を過ごすことで、わたしと世界の間にある隔たりや、暴力性について考察する」というもので、パフォーマンスを通して、協調しながら他者と関わり合っていくことについて考える時間がつくれ、今回のフェアが描く姿を象徴しているようでもありました。

ソー・ソウエンとは

ソー・ソウエン(Soh Souen)さんは1995年生まれ福岡県出身のアーティストです。

「わたし」や「身体」への興味をもとに絵画・インスタレーション・パフォーマンスなどを国内外にて発表しています。肖像写真からドットのみを抽出した絵画シリーズや自らの身体を縁取った絵画などを制作しており、近年では映像作品やパフォーマンスなど、表現の領域を広げています。

ソー・ソウエンさん|Instagram:@sohsouen

Gallery COMMON(ジャクリーン・サーデル)

2010年、クリエイティブ・エージェンシーen one tokyoによって設立したギャラリーです。ストリートカルチャーを背景に持つギャラリーで、ファッションとアート、ストリートとコマーシャル、サブカルチャーとメインストリームという逆説的でありながらも互いに共生的な二者間のギャップを埋め、人びとをつなぐ共通(“common”)の糸を見つけることを目指しています。

Gallery COMMON|Instagram:@gallerycommon

ジャクリーン・サーデル(Jacqueline Surdell)

ナイロンや綿、パラコード(パラシュートを吊るすための縄)といった、色々な縄を編み込んで制作されています。後方には翼のように広がるバレーボールネットも。制作される作品は編み込まれた彫刻作品のようでもあり、絵画的にも見えます。上部の中央にある黄色い円が顔を表していると仮定すると、そこからカラフルに身体が描かれているようにも見えてきます。

近づいて観ると支持体に縄がぐるぐると巻きついたものが重なり合ってできていることが分かります。また、その巻きついた縄の中には硬く結ばれた部分と、解けそうな部分があり、二項対立を描いているようにも感じる作品です。

ジャクリーン・サーデルとは

ジャクリーン・サーデル(Jacqueline Surdell)さんは1993年生まれ、アメリカ・シカゴ(イリノイ州)出身のアーティストです。

縄という素材を用いながら、細心の注意を要する工芸の緻密さと、現代絵画の自由奔放さの両方からアプローチし、制作をおこなっています。

彼女の作品は他の様々な二項対立、たとえば、堅硬さと崩れ易さ、「男性的」あるいは「女性的」とコード化される建築技術、身体と彫刻のあいだの存在論的な空間といったものをも連想させます。

ジャクリーン・サーデルさん|Instagram:@jacquelinesurdell

CON_(山中雪乃/Ahn Tae Won)

2022年4月、東京・日本橋馬喰町で開廊したギャラリーです。東京の都市文化を再考と実践するなかで、コンテンポラリーアートに限らず、音楽をはじめとする表現活動を有機的なムーブメントとして捉え直すことをビジョンとして掲げたプログラムを展開しています。

CON_|Instagram:@con_tokyo_

山中雪乃(やまなか ゆきの)

身体全体がツヤ感のある素材で覆われているような印象を受ける作品。用いている色もあり、女性を彫刻として捉え、絵画として描いているようにも見えてきます。

モチーフを多角的な視点で捉えることで、目の前にいる人という存在に迫っていっているようです。

山中雪乃とは

山中雪乃(やまなか ゆきの)さんは1999年生まれ、⻑野県出身のアーティストです。

制作過程で生じる物理〜情報空間での視点移動により、描かれたイメージがモチーフの持つ質感と離れた瞬間の、そのものが持つ本来の姿を想像させる絵画を制作しています。

山中雪乃さん|Instagram:@yukino_yamanaka

Ahn Tae Won

トラネコが2匹描かれ、その2匹が抱えるように花が描かれている作品。手の位置に若干の違和感があるものの、猫のかわいらしさを感じます。

他にも猫の画像ファイルを立体に貼り付けて、被写体のイメージを歪めたような作品も展示されていました。二次元と三次元で見え方が変わっていくところの奇妙さを感じる展示でした。

Ahn Tae Wonとは

Ahn Tae Wonさんは1993年生まれ、ソウルを拠点に活動するアーティストです。

インターネット上のミーム(面白い画像や動画が拡散されていくこと)が現実の世界に組み込まれたときに感じる、不自然だけど奇妙に満足できるハーモニーを作品に表現しています。

Ahn Tae Wonさん|Instagram:@ppuri_

LAID BUG(高田光)

LAID BUGとは、絵画、グラフィック、写真など、ヴィジュアルアートを中心にプログラムを形成しているギャラリーです。アート、音楽、ファッションなど多様なカルチャーを行き来しながら発信を行っています。

LAID BUG|Instagram:@laidbug_tyo

高田光(たかた ひかる)

自転車のチェーンロックがガードレールのようなものに取り付けられていて、一見すると街中で時たま見かける景色と似ているように感じます。キーチェーンには座標が書かれたタグがついています。

映像作品も観ると過程が見えてくる作品で、タグに書かれた座標に放置されたチェーンロックを自力で解除し、作品としているようです。本来の役目がまだ果たせるのに放置された、ある種記憶の名残のようにも見えてきます。

​作品の中には、パズル状の平面作品も展示していました。ピースの欠けている部分はチェーンロックがあった部分なのだそうです。

街の景色としてあったものを持ち出している様子が分かりやすく表現されている一方で、実際の場所で、同じ構図で見たとしても、キーチェーンがそこにいたことまではきっと分かりません。記憶の儚さについて再考を促すような作品でした。

高田光とは

高田光(たかた ひかる)さんは日頃から様々な方法論で継続的かつ不規則的に行う都市での介入行為を制作の根底に置き、それらに関係する記録や個人的な記憶、感情や思考を素材にして制作しているアーティストです。

これらの制作は作家にとって個に内在する空間と現象、外在する宇宙的な空間と現象との繋がりを認識し、その様を捉えるために日々継続される訓練のうちの一部分となっています。

高田光さん|Instagram:@hikarumono

MATTER(菊池虎十/本岡景太)

MATTERとは、2022年4月、前身となるアートギャラリー「ANAGRA」をリニューアルするかたちで東京・半蔵門の地下で開廊したギャラリーです。作品鑑賞のみならず、アーティストの人間的な部分まで理解してもらうべく、コミュニケーションにも重きを置いています。

MATTER|Instagram:@matter.tokyo

菊池虎十(きくち たけと)

立体的な額の中で布が引き延ばされ、空間を浮遊するように制作されています。布には満点の星空や流れ星、地平線と自然の景色、それらを観る人型に集まった星々が描かれています。

美しさがある一方で、災害により人間に牙を剥くこともある自然、その緊張感も布を張るという行為で表現されているようでもありました。

菊池虎十とは

菊池虎十(きくち たけと)さんは東京都出身のアーティストです。

「布の可変性」をテーマに、染色した布を空間に合わせて装飾する際に歪ませ、独自の形に変化させて作品制作をしています。

日本古来の染色技法を独自に解釈し、染め上げることで生地が染色されていることの面白さ、布という素材の新たな可能性を追究しています。

菊池虎十さん|Instagram:@seiseidana

本岡景太(もとおか けいた)

可愛らしいフグの造形をした作品。フグの光沢が作品にも見て取れる一方で、どこか歪んだ一面も持ち合わしているのが魅惑的です。

作品は酢酸ビニール系の溶剤による「歪曲張り子」という独自の技法で制作されているそうです。素材を重ね合わせて固めているような印象で、崩れそうだけどその姿を維持している様子は生命の傷つきやすさや、それがあるから美しくもあることに気づかせてくれるようです。

本岡景太とは

本岡景太(もとおか けいた)さんは東京藝術大学美術研究科彫刻専攻修士課程在学中のアーティストです。

紙と酢酸ビニル系樹脂を使ったオリジナルの技法、「歪曲張り子」による彫刻を制作されています。

本岡景太さん|Instagram:@motonini3768
他展示での本岡景太さん作品はこちら

BEAMS CULTUART(宮原嵩広)

BEAMS CULTUART(ビームス カルチャート)は、ビームスが展開するアート関連のレーベルや、カルチャー発信の取り組みなどを束ね、グローバルに推進するプロジェクトです。

BEAMS CULTUART|Instagram:@beams_cultuart

宮原嵩広(みやはら たかひろ)

《Your name here.》
2020、宮原嵩広、ハーフミラー,アンティークフレーム、790 × 655 × 35 mm

アンティークミラーの中心に「Your name here.」の文字が切り抜かれている作品。

作品は宙吊りとなっていて、会場にいる鑑賞者を見渡すように回転していました。

マットブラック塗料を用いた作品も展示していました。こちらも鏡が用いられていて、黒く濡れたものを覗き込むと、そのものの正体が分かるようになっています。

情報の少ないものを見てそれを知覚や行動で補おうとする、そうやって日常生活ができていることに気づく作品でした。

宮原嵩広とは

宮原嵩広(みやはら たかひろ)さんは1982年生まれ、埼玉県出身のアーティストです。特殊メイクの技法を習得後、東京藝術大学美術学部彫刻科にて、もの派やミニマルアートを学び学士、修士号を取得されています。

物質の純粋性をテーマに立体やインスタレーション作品を発表しています。

宮原嵩広さん|Instagram:@takahiro_miyahara_art_works

NANZUKA(NANZUKA LUCKY DRAW)

NANZUKAはデザイン、イラスト、ストリートカルチャー、ファッション、ミュージックなど、アートの周辺分野における創造性をアカデミックに扱う実験的な企画ギャラリーとして活動しています。

NANZUKA UNDERGROUND|Instagram:@nanzukaunderground

NANZUKAでは作品展示ではなく、所属アーティストの関連商品が当たるクジ屋「Nanzuka LUCKY DRAW」という面白い試みをしていました。3千円と3万円のクジで分かれていて、3万円クジの1等では50万円相当の商品も用意されていました。

ポケモンとのコラボ作品で知られるダニエル・アーシャムさんや可愛らしい雲の作品はフレンズウィズユーさん、大きな目をしたキャラクターが特徴的なハビア・カジェハさん、人体と機械の美を感じる空山基さんの関連商品が並んでいました。

子どもにとっても楽しみやすい雰囲気で、アートに触れるきっかけとしても素敵な企画でした。

コンパクトな展示会場ながら、ひとつひとつの作品を見ていくとボリュームがあり、新たな作品との出会いがあるところもアートフェアの魅力ですね。

これまでのアートフェアにはない取り組みも

「EASTEAST_TOKYO 2023」では作品展示以外にも、文化交流を促す取り組みがなされていました。例えば、談笑できるスペースがあったり、音楽や映像によるパフォーマンスが催されたり、会場内に飲食スペースがあったり、夜はクラブのようなイベントが盛り込まれていたりしています。

まとめ

「EASTEAST_TOKYO 2023」の模様をご紹介していきました。

アーティストと来場者の自然な交流を促す仕掛けがあることで、アートはもちろん、多種多様な文化にもフランクに触れられるような場で、週末に気軽に遊びにいく場としても楽しめる内容となっていました。

今後も持続的に開催され、アートへの入口となっていくフェアだと感じました。今回の開催模様を雑誌として刊行する計画もあるようなので、今後の活動にも注目です。

展示会情報

展覧会名EASTEAST_TOKYO 2023
会期2023年2月17日(金) 〜 19日(日)
※プレビュー:2月16日(木)、17日(金) 14:00まで
開催時間2月17日(金) 14:00 – 19:00
2月18日(土) 12:00 – 19:00
2月19日(日) 12:00 – 17:00
※最終入場は閉場の1時間前まで
定休日なし
サイトhttps://easteast.org/2023/
Instagram:@easteast_
観覧料[1日券] 一般 2,000円/23歳以下 1,000円
[3日通し券] 一般 5,000円/23歳以下 2,500円
ArtStickerにて販売
作家情報【馬喰町】PARCEL|Instagram:@parceltokyo
┗加茂昂さん|ウェブサイト:https://akirakamo.net/
┗森靖さん|Instagram:@osamu_mori_
┗小畑多丘さん|Instagram:@takuobata
【西荻窪】HAITSU|Instagram:@haitsu.nishiogikubo
┗山口幸士さん|Instagram:@kojiyamaguchi_orista
┗オーガミノリさん|Instagram:@mino_oga
【原宿】GALLERY TARGET|Instagram:@gallery_target
┗KYNEさん|Instagram:@route3boy
┗永井博さん|Instagram:@hiroshipenguinjoe
【天王洲】ANOMALY|Instagram:@anomaly_tokyo
┗玉山拓郎さん|Instagram:@takurotamayama
【小倉】GALLERY SOAP|Instagram:@gallerysoap.jp
┗ソー・ソウエンさん|Instagram:@sohsouen
【表参道】Gallery COMMON|Instagram:@gallerycommon
┗ジャクリーン・サーデルさん|Instagram:@jacquelinesurdell
【馬喰町】CON_|Instagram:@con_tokyo_
┗山中雪乃さん|Instagram:@yukino_yamanaka
┗Ahn Tae Wonさん|Instagram:@ppuri_
【代官山】LAID BUG|Instagram:@laidbug_tyo
┗高田光さん|Instagram:@hikarumono
【半蔵門】MATTER|Instagram:@matter.tokyo
┗菊池虎十さん|Instagram:@seiseidana
┗本岡景太さん|Instagram:@motonini3768
BEAMS CULTUART|Instagram:@beams_cultuart
┗宮原嵩広さん|Instagram:@takahiro_miyahara_art_works
NANZUKA UNDERGROUND|Instagram:@nanzukaunderground
会場科学技術館(Instagram:@sciencemuseum.jp
東京都千代田区北の丸公園2番1号

最新情報はInstagramをチェック!

ABOUT ME
よしてる
1993年生まれの会社員。東京を拠点に展覧会を巡りながら「アートの割り切れない楽しさ」をブログで探究してます。2021年から無理のない範囲でアート購入もスタート、コレクション数は25点ほど(2023年11月時点)。
アート数奇は月間1.2万PV(2023年10月時点)。
好きな動物はうずら。
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